ネイチャーポジティブとは?必要性や経済への影響、企業などの取り組み事例をご紹介

ライフスタイル
2024年11月7日

私たちの豊かな暮らしを守るためのキーポイントとなるネイチャーポジティブ。カーボンニュートラルなどに次いで世界的に注目されている考え方です。この記事では、ネイチャーポジティブの意味・必要性や経済効果、企業などの取り組み事例をわかりやすくご紹介します。

目次

ネイチャーポジティブの意味

ネイチャーポジティブ(自然再興)とは、「生物多様性の損失を止め、自然を回復に向かわせること」を意味します。

私たちの豊かな暮らしは生物多様性に支えられています。しかし、地球上の生物多様性は減少の一途をたどっているのが現状です。

この生物多様性の損失を食い止めるには、経済・社会・科学技術などあらゆる分野でこれまでの仕組みを改善する必要があります。

そうすることで自然を回復に向かわせ、人間も自然環境も豊かになっていく社会をつくり出すことがネイチャーポジティブの狙いです。

ネイチャーポジティブの名称と概念は、2021年6月に合意された「G7 2030年自然協約」で取り上げられたことをきっかけに、国際的な注目を集めるようになりました。

現在、ネイチャーポジティブはカーボンニュートラルやサーキュラーエコノミーに次ぐ世界の潮流となっています。

【関連記事】生物多様性について知ろう!重要性や問題点、保全のために私たちができることは?

ネイチャーポジティブはなぜ必要?

多様な海の生物

私たちの暮らしを支える生物多様性は、現在、かつてないほどのスピードで失われつつあります。

ここでは、生物多様性の損失が加速している現状やSDGsとの関連性を踏まえて、ネイチャーポジティブの実現が求められる背景を詳しく見ていきましょう。

かつてないほどに損失し続ける生物多様性

食卓を彩る大地の恵みや海・山の幸、自然とともに育んできた伝統文化など、私たちの豊かな暮らしは生物多様性の上に成り立っています。

しかし、人間による開発・乱獲や外来種の野生化、地球温暖化の影響などにより、生物多様性は急速に失われつつあります

国連が実施したミレニアム生態系評価(2001年~2005年)によると、生き物の絶滅速度は過去100年間で自然状態の約1,000倍以上にまで達しています。

このまま生物多様性が減少すれば、現在の豊かな暮らしを維持できなくなることは間違いありません。

さらに、生物多様性の損失は、世界経済にも大きな影響をおよぼす可能性があります。世界経済フォーラムの報告書では、世界のGDPの半分(約44兆ドル)以上は、自然の損失によって潜在的に脅かされていることが示されています。

豊かな暮らしを未来に引き継ぐためには、ネイチャーポジティブの実現が不可欠です。

SDGsの目標達成にも貢献

ネイチャーポジティブを実現することで、次のSDGs目標の達成にも大きく貢献できます。

  • 目標13「気候変動に具体的な対策を」

ネイチャーポジティブ推進の一環として森林を保全・創出することで、温室効果ガスであるCO₂の吸収量増加が期待できます。さらに、気候変動に伴う自然災害や異常気象の被害軽減にも役立ちます。

  • 目標14「海の豊かさを守ろう」・目標15「陸の豊かさも守ろう」

絶滅の危機に瀕しているサンゴ礁の保全や、多くの生き物のすみかとなる森林の再生など、ネイチャーポジティブの実現を目指すことは海・陸における生物多様性の保全に直結します。

SDGs目標の達成という観点からも、ネイチャーポジティブの実現が求められています。

ネイチャーポジティブがもたらす経済効果にも注目

生物多様性の減少に伴う経済損失リスクが懸念されている一方で、社会がネイチャーポジティブ経済へ移行することによる経済効果も試算されています。

世界経済フォーラムの報告書によると、ネイチャーポジティブ経済への投資・移行により、約10兆ドル規模のビジネス機会が創出される見込みです。

さらに、雇用面においても、2030年までに3億9,500万人もの新たな雇用が創出されると試算されています。

また、この報告書にもとづく推計によると、日本で生み出されるビジネス機会は2030年時点で約47兆円と予測されています。

ネイチャーポジティブの推進は、自然や生き物にプラスの影響をおよぼすだけでなく、経済的にも大きなメリットをもたらす取り組みです。

【海外】ネイチャーポジティブに関する取り組み事例

ここでは、海外におけるネイチャーポジティブの取り組み事例として次の3つをご紹介します。

  • 昆明・モントリオール生物多様性枠組
  • G7ネイチャーポジティブ経済アライアンス(G7ANPE)
  • TNFD(自然関連財務情報開示タスクフォース)

いずれもネイチャーポジティブの国際的な動向を知るうえで重要度の高い取り組みです。しっかりと押さえておきましょう。

昆明・モントリオール生物多様性枠組

2022年12月に開催された生物多様性条約第15回締約国会議(COP15)において、新しい世界目標として「昆明・モントリオール生物多様性枠組」が採択されました。

この枠組みは、2010年のCOP10で採択された愛知目標の後継となるものです。

2030年までにネイチャーポジティブの実現に向けた緊急の行動をとることを掲げたうえで、陸・海の30%以上を保全する「30by30」など23個の具体的な目標が設定されています

愛知目標の多くが未達成だった教訓を踏まえ、新枠組では進捗状況のモニタリングと評価の仕組みが大幅に強化されている点もポイントです。

G7ネイチャーポジティブ経済アライアンス(G7ANPE)

「G7 2030年自然協約」において、ネイチャーポジティブ実現の柱のひとつとして、自然への投資とネイチャーポジティブ経済の促進が掲げられました。

ネイチャーポジティブ経済の実現には、自然が主流となり多様な価値観を取り入れる経済社会への移行が必要です。

こうした背景から、2023年4月のG7札幌会合で、ネイチャーポジティブ経済に関する知識共有および情報ネットワーク構築の場として「G7ネイチャーポジティブ経済アライアンス」(G7ANPE)が設立されました。

G7ANPEでは、ネイチャーポジティブに貢献する技術やビジネスモデルなどの事例を共有し、国内外に情報を発信しています

TNFD(自然関連財務情報開示タスクフォース)

TNFD(自然関連財務情報開示タスクフォース)は、企業が生物多様性や自然に与える影響を評価し、情報を開示する枠組みを構築する取り組みです。

企業の経済活動が生物多様性とどのように関係しているかを「見える化」し、ネイチャーポジティブに貢献する資金の流れをつくり出すことを目指しています。

世界で320社の企業が、2024年または2025年の会計年度に早期の情報開示を表明しています。そのうち、世界最多の80社を日本企業が占めており、国内企業のネイチャーポジティブへの関心の高さがうかがえます。

【日本】ネイチャーポジティブに関する政府の取り組み事例

ネイチャーポジティブを巡る日本政府の取り組みには次の4つが挙げられます。

  • 生物多様性国家戦略2023-2030
  • ネイチャーポジティブ経済移行戦略
  • 生物多様性民間参画ガイドライン
  • 2030生物多様性枠組実現日本会議(J-GBF)

こうした政府の取り組みは、企業や自治体などにおける取り組みの基盤となるものです。

国内のネイチャーポジティブの動向を理解するためにも、しっかり把握しておきましょう。

生物多様性国家戦略2023-2030

「生物多様性国家戦略2023-2030」は、日本の生物多様性に関する基本計画です。

新たな世界目標である昆明・モントリオール生物多様性枠組の内容を踏まえて、2023年3月に閣議決定されました。

2030年までにネイチャーポジティブを実現させることを掲げたうえで、国内で取り組むべき課題に対応する5つの基本戦略と、それぞれの戦略ごとの個別目標が示されています

日本のネイチャーポジティブに向けた取り組みを推進するためのロードマップとして、重要な役割を果たしています。

ネイチャーポジティブ経済移行戦略

生物多様性国家戦略2023-2030における5つの基本戦略のうち、「基本戦略3」として「ネイチャーポジティブ経済の実現」が掲げられました。

この基本戦略3の重点施策に位置付けられているのが、ネイチャーポジティブ経済移行戦略です。

ネイチャーポジティブへの取り組みが企業にとっての新たな成長機会となることを示し、実践を促すことを目的としています

企業がネイチャーポジティブ経営を進めるうえでの具体的なプロセスを示した「生物多様性民間参画ガイドライン」(後述)と、生物多様性国家戦略2023-2030をつなぐ役割を担っています。

生物多様性民間参画ガイドライン

ネイチャーポジティブ経営の実現に向けた情報を取りまとめた事業者向けガイドラインです。

環境省が公表するこのガイドラインでは、生物多様性についての概念から国内外の動向、ビジネスと生物多様性との関係性など、基本的な情報・考え方をわかりやすく解説しています。

加えて、企業における推進体制の構築や実施計画の策定など、ネイチャーポジティブ経営を実現するための具体的なプロセスも示しています。

企業はこのガイドラインを参考にしながら、生物多様性保全への貢献度を高めていくことが期待されます。

2030生物多様性枠組実現日本会議(J-GBF)

「2030生物多様性枠組実現日本会議(J-GBF)」は、国内におけるネイチャーポジティブの取り組み推進を目的として、2021年11月に設立された組織です。

生物多様性を守り、自然の恵みを持続的に利用していくためには、企業・自治体・国民などさまざまな主体がネイチャーポジティブ実現のための取り組みに参画する必要があります。

J-GBFでは、これらの多様な主体の参画と連携を促進するために、生物多様性の保全に関するフォーラムやイベントなどを開催しています

さらに、「ネイチャーポジティブ宣言」の発出を呼びかけており、これまでに多くの企業や自治体などが宣言を表明しています。

【日本】ネイチャーポジティブに関する企業・自治体の取り組み事例

ネイチャーポジティブの推進に積極的に取り組む国内企業や自治体の事例をご紹介します。

【企業の取り組み事例】

  • ANAホールディングス株式会社:「チーム美らサンゴ」で沖縄のサンゴを守る
  • 大成建設株式会社:ネイチャーポジティブに貢献する工業団地開発

【自治体の取り組み事例】

  • 所沢市:「生物多様性ところざわ戦略」など積極的な活動を展開
  • 愛知県:「あいち生物多様性企業認証制度」の創設

ANAホールディングス株式会社:「チーム美らサンゴ」で沖縄のサンゴを守る

ANAホールディングス株式会社では、2004年に沖縄県内外の企業9社とともに「チーム美らサンゴ」を結成し、沖縄県恩納村のサンゴ保全活動に取り組んでいます。

全国から参加者を募ってサンゴの苗の育成や植え付け、サンゴを食害する生物の除去を行い、「美ら海を⼤切にする⼼」を広める活動を展開しています

2023年までの活動参加メンバーは4,433名、植え付けたサンゴは19,439本にのぼり、生物多様性の保全・回復に貢献しています。

大成建設株式会社:ネイチャーポジティブに貢献する工業団地開発

大成建設株式会社は、2010年に富士山のふもと・静岡県富士宮市に環境共生型の工業団地を創出しました。

10年に渡って工場周辺に段階的な植樹を行うことで、自然に近い森を作り上げた点が特徴です。「南陵の森」と呼ばれるこの森には、現在、絶滅危惧種のキンランやヒメボタルなども生息しています。

また、持続的な森づくり活動の一環として、工業団地の進出企業や地域住民に対して、森を活用したさまざまなプログラムの提供も行っています。

ネイチャーポジティブに貢献するハード面(森林創出)とソフト面(森を活用したプログラム)を組み合わせた取り組みとして注目されている事例です。

所沢市:「生物多様性ところざわ戦略」など積極的な活動を展開

埼玉県所沢市では2021年4月に「生物多様性ところざわ戦略」を策定しました。

2030年3月までの10年間に渡る生物多様性保全のロードマップを示すことで、自然の恵みを受けながら心豊かに暮らせるふるさとづくりを目指しています

2023年5月には所沢市・株式会社NTTドコモ・公益財団法人日本自然保護協会の3者で連携協定を締結し、各々が持つ知見や技術などを活用しながら「生物多様性ところざわ戦略」にもとづく取り組みを推進しています。

愛知県:「あいち生物多様性企業認証制度」の創設

愛知県では、企業における生物多様性保全の取り組みを促すため、2022年4月に「あいち生物多様性企業認証制度」を創設しました。

この制度は、生物多様性を守るための優れた取り組みを展開する企業を県が認証するものです。

これまでに、トヨタ自動車株式会社(堤工場)、リンナイ株式会社など県内55の企業・事業所が認証を受けています(2024年9月時点)。

県の強みである「企業の力」を生物多様性の保全にも生かすという、愛知県ならではの取り組みと言えます。

個人でできる取り組みは?環境に優しいエコな電気を選ぼう

エコな電気

ネイチャーポジティブ実現のためには、個人レベルでの取り組みも重要です。

例えば、個人で実践できる取り組みのひとつとして、環境に優しい「エコな電気」を使うという選択肢があります。

生物多様性が損失している原因のひとつは地球温暖化です。

国際的な環境保全団体であるWWFが公表した「生きている地球レポート2022」では、地球温暖化がさらに進行した場合、長期にわたって気候変動が生物多様性損失の主な要因となるおそれがあると指摘されています。

地球温暖化の原因となるCO₂を排出しないエコな電気を選ぶことは、温暖化の緩和、ひいてはネイチャーポジティブの実現につながります。

多様な生き物がすむ美しい自然を次の世代に残すためにも、ぜひエコな電気の利用を検討しましょう。

エバーグリーンのエコな電気で環境に配慮した暮らしを

生き物や環境に優しい「エコな電気」に切り替えたい方は、ぜひ『エバーグリーン』をチェックしてみてください。

エバーグリーンは、再生可能エネルギーのリーディングカンパニーである「イーレックスグループ」の一員です。

親会社のイーレックス株式会社では、全国で5ヶ所のバイオマス発電所を運営するなど、再生可能エネルギーの普及拡大に向けて積極的な取り組みを展開しています。

エバーグリーンでも、再生可能エネルギー実質100%で発電されたエコな電気をすべてのプランで提供しています

エバーグリーンのエコな電気の特徴は次の通りです。

  • 家庭の電力使用によるCO₂排出量がゼロになる
  • 年間で1,562kg-CO₂のCO₂を削減できる(杉の木約112本が1年間に吸収するCO₂量に相当)

※300kWh/月×12か月×0.434kg-CO₂/kWh(令和3年度全国平均係数)より算出
※杉の木1本当たりの年間吸収量14kg-CO₂/年と想定(環境省資料より)

エバーグリーンへの切り替えは、Webから5分ほどで簡単にお申込みいただけます。

エバーグリーンのエコな電気に切り替えることで、環境や生き物に配慮した暮らしを簡単に実現できます。この機会にぜひご検討ください。

個人でもネイチャーポジティブにつながる取り組みを実践しよう!

生物多様性は私たちの豊かな暮らしに欠かせないものです。

生物多様性の損失が加速している今、ネイチャーポジティブの実現に向けた取り組みを世界的に推進する必要があります。

政府や自治体、企業でもさまざまな活動が展開されていますが、個人でもネイチャーポジティブを意識した取り組みを実践することが重要です。

例えば、毎日使う電気を環境に優しいエコなものに変えることは、自然環境や生き物を守ることにつながります。

ぜひエバーグリーンのエコな電気に切り替えて、ネイチャーポジティブに貢献できる暮らしを実践しましょう。

(出典)

エバーグリーンは
環境に配慮した電気を
供給することで
皆さまの暮らしを支えます

  • Point
    1

    CO₂排出量が実質ゼロの電気

    実は、家庭から排出されるCO₂の約半数は電気の使用によるもの。エバーグリーンの電気をご利用いただくと、これを実質ゼロに抑えることができます!

  • Point
    2

    安心・安全の供給体制

    エバーグリーンは、再生可能エネルギーのリーディングカンパニーであるイーレックスと、東京電力エナジーパトナーの共同出資により創設した企業です!

  • Point
    3

    充実のサポート体制

    電気のトラブル時に迅速に駆け付ける「でんきレスキュー」 サービスなど、万が一の際もご安心いただけるサポート体制を整えています。

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