カーボンバジェットとは
地球温暖化の気温上昇を一定レベルまでに抑える場合、私たちが排出できる温室効果ガスには上限があります。
この上限値のことを「カーボンバジェット(炭素予算)」と呼びます。
残されたカーボンバジェットの推定値は、過去の温室効果ガスの累積排出量と、目標とする気温上昇幅から算出可能です。
例として、家計管理をイメージしてみましょう。
毎月の生活費として使える金額が25万円の場合、18万円をすでに使っていたら残りはあと7万円しか使えません。
簡単に言えば、この「お金」を「温室効果ガス」に置き換えたものがカーボンバジェットの概念です。
カーボンバジェットは地球温暖化対策に取り組むうえで、非常に重要な指標となります。残されたカーボンバジェットの使い道をよく考え、確実に気温上昇を抑えていかなければなりません。
残りのカーボンバジェットはあとわずか
IPCC第6次評価報告書によると、地球の気温上昇を50%の確率で1.5℃までに抑える場合の総カーボンバジェットは約2兆9,000億tCO₂です。
1850年~2019年までにすでに約2兆3,900億tCO₂を排出しているため、2020年以降の残りのカーボンバジェットは約5,000億tCO₂と推定されます。
5,000億tCO₂と聞くと、まだまだ残されているように感じるかもしれません。
しかし、Global Carbon Projectのレポートによれば、2022年の世界全体の年間CO₂排出量は約400億tCO₂にものぼります。
今後もこのペースで排出が続けば、2030年頃にはカーボンバジェットが底をつくことになります。
現在、世界各国はパリ協定で掲げられた「1.5℃目標」に向かって温暖化対策を進めています。
しかし、カーボンバジェットの残りがわずかとなった今、1.5℃目標の達成は困難な状況に陥っているのが現状です。
世界全体で目指すべき「1.5℃目標」
温暖化対策の世界目標である1.5℃目標についてもう少し詳しく見てみましょう。
2015年開催のCOP21で採択されたパリ協定では「産業革命前と比べて世界の平均気温上昇を2℃より十分低く保ち、1.5℃に抑える努力をすること」(1.5℃目標)が地球温暖化対策の長期目標として掲げられました。
しかし、その後2018年にIPCCが公表した「1.5℃特別報告書」において、気温上昇を2℃まで許容していては、自然環境や社会経済などへの甚大な影響を免れないことが示されました。
例えば、温度上昇が2℃と1.5℃の場合、地球温暖化に伴うリスクは次のように大きく異なります。
【気温上昇が2℃・1.5℃の場合の温暖化リスク】
温暖化リスク | 1.5℃の場合 | 2℃の場合 |
---|---|---|
洪水の影響を受ける人口 (1976~2005年比) | 100%増加 | 170%増加 |
サンゴ礁への影響 | 70~90%が減少 | 99%以上が消失 |
夏の北極海の海氷が消失する可能性 | 約100年に1度 | 約10年に1度 |
世界全体の年間漁獲量 | 約150万tの損失 | 300万tを超える損失 |
他にも、気温上昇を1.5℃までに抑えることで、次のようなリスク軽減の可能性も示唆されています。
- 極端な高温に頻繁にさらされる人口が約4億2,000万人減少する
- 平均海面水位の上昇が0.1m低くなり、リスクにさらされる人口が最大1,000万人減少する
このように、1.5℃特別報告書によって、地球温暖化による気温上昇を1.5℃までに抑え込む重要性が明らかにされました。
1.5℃特別報告書では、地球温暖化を1.5℃に抑制するには、2030年までにCO₂排出量を2010年比で45%削減し、2050年には正味ゼロにする必要があることも示されています。
1.5℃目標との間にある大きな「排出ギャップ」
パリ協定では、各国に温室効果ガス排出削減目標(NDC)の提出・更新を義務づけています。
例えば、日本は2050年のカーボンニュートラル実現に向けて、2030年度に温室効果ガスを2013年比で46%削減すること、さらには50%削減にも挑戦することを表明しています。
しかし、各国のNDCを考慮した将来の排出量と、1.5℃目標の達成に必要な排出量には大きな差(排出ギャップ)があるのが現状です。
国連環境計画の排出ギャップ報告書2023によれば、各国NDCの達成により、2030年時点の世界の温室効果ガス排出量は最大で9%削減されます。しかし、1.5℃目標を達成するには42%の削減が必要です。
このままでは、各国のNDCが達成されたとしても、今世紀中に2.5~2.9℃の気温上昇は避けられず、1.5℃目標の達成は極めて困難であると言わざるを得ません。
私たちは今、前例のない規模の排出削減対策をすぐにでも実行しなければならない、非常に深刻な局面に立たされています。
2030年までの「決定的な10年」が地球の未来を左右する
排出ギャップを埋められず、カーボンバジェットを使い果たしてしまった場合、どのような未来が待ち受けているのでしょうか。
カーボンバジェットを使い切った場合に想定されることと、温暖化の行く末を左右する「決定的な10年」について解説します。
カーボンバジェットを使い切るとどうなる?
前述の通り、現状のままでは2030年頃にカーボンバジェットを使い切る可能性があります。
カーボンバジェットを使い切ってしまうと、地球温暖化が1.5℃、さらには2℃を超えて進行し、地球がティッピングポイントと呼ばれる臨界点に達する可能性が高まります。
ティッピングポイントとは、温室効果ガスなどの変化が少しずつ蓄積した結果、突然大規模かつ不可逆的な変化を引き起こす危険な転換点のことです。
ティッピングポイントに達すると、自然環境に壊滅的な影響が及び、人間を含む多くの生物に深刻なリスクをもたらす可能性があります。
例えば、アマゾンの熱帯雨林の消失やサンゴ礁の消滅など、その地域の生物多様性や文化的価値の喪失、観光資源・防災機能の消失や、食料が入手困難になるなどの深刻な影響が懸念されています。
2030年までの期間は「決定的な10年」
IPCC第6次評価報告書によれば、地球の気温は産業革命前と比較してすでに約1.1℃上昇しています。
温度上昇を1.5℃に抑えるには、2030年までに温室効果ガスをどれだけ削減できるかがキーポイントです。
2021年11月のCOP26では、この2030年までの期間を「決定的な10年」と位置づけ、各国に温室効果ガス削減の強化を求めました。
加えて、1.5℃目標達成のためには、2030年時点の温室効果ガス排出量を2010年比で45%削減し、2050年頃に実質ゼロにする必要があることが、COP26の成果文書であるグラスゴー気候合意に明記されました。
これにより、これまで努力目標とされてきた1.5℃目標が、実質的な世界共通目標となった点も注目すべきポイントです。
日本における温室効果ガス削減の取り組み
前述の通り、日本はNDCにおいて、2030年度に温室効果ガス46%削減(2013年度比)を目指し、さらには50%削減にも挑戦することを表明しています。
2021年10月に閣議決定された第6次エネルギー基本計画では、NDCの達成に向けて、2030年度の再生可能エネルギー電源構成比を36~38%に高めるという目標が掲げられました。
太陽光発電については、従来のFIT制度に加えて2022年4月からFIP制度もスタートし、さらなる普及拡大を目指しています。
さらに、洋上風力発電の次世代技術の開発など、太陽光発電以外の再生可能エネルギーの普及にも力を入れています。
個人でできることは?暮らしの脱炭素化に役立つ「エコな電気」
2030年までの期間は、地球温暖化対策を進めるうえでもっとも重要な時期です。
政府や企業だけでなく、私たち一人ひとりの取り組みも地球の未来を大きく左右することになります。一人ひとりが自分ごととして温暖化問題を捉え、できる限りの対策を講じることが重要です。
暮らしの中でCO₂排出量を削減しやすいもののひとつに、電気があります。実は、家庭からのCO₂排出量の約半分が電気の使用に由来するものです。
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まずは毎日使う電気をエコなものに切り替えて、家庭からのCO₂排出量を減らしましょう。
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いつも通り生活しているだけで、ファミリー世帯なら月間148kgのCO₂排出量を削減可能です。これは実に、杉の木11本分の植林効果に相当します。
※CO₂排出量は令和3年度全国平均係数(0.434kg-CO₂/kWh)をもとに計算
※植林効果は「森林の二酸化炭素吸収力」(関東森林管理局/林野庁)をもとに、杉の木1本当たりの年間CO₂吸収量を14kgとして計算
早めにエバーグリーンへ切り替えていただくことで、その分より多くのCO₂を削減できます。1日1日の積み重ねが大きな取り組みとなり、地球温暖化を抑えることにつながります。
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CO₂排出削減は喫緊の課題!一人ひとりの取り組みで地球を守ろう
残されたカーボンバジェットは、残りわずかしかありません。
2030年までにCO₂排出量を削減するには、私たち一人ひとりが主体的に温暖化対策に取り組む必要があります。
地球温暖化を1.5℃以内に抑えるには、大幅なCO₂排出量削減が求められます。
家庭からのCO₂排出量を大きく減らすには、地球に優しいエコな電気への切り替えがおすすめです。
エバーグリーンでは、簡単なお申し込みで手間なくCO₂排出ゼロの電気に切り替えが可能です。ぜひ、エバーグリーンのエコな電気をご検討ください。
(出典)
- 一般財団法人環境イノベーション情報機構|カーボンバジェット
- 全国地球温暖化防止活動推進センター「デコ活」|カーボン・バジェットとは?
- IPCC|Climate Change 2021 : The Physical Science Basis(Summary for Policymakers)
- IPCC|Climate Change 2022 : Mitigation of Climate Change(Summary for Policymakers)
- Global Carbon Project|Global Carbon Budget 2023
- 国立研究開発法人国立環境研究所 社会システム領域|COP26閉幕:「決定的な10年間」の最初のCOPで何が決まったのか?
- 経済産業省資源エネルギー庁|「COP28」開催直前!知っておくと理解が進む、「COP27」をおさらいしよう
- IPCC|Global Warming of 1.5 ºC(Summary for Policymakers)
- 環境省|IPCC 1.5℃特別報告書
- 環境省|IPCC「1.5℃特別報告書」の概要
- 外務省|日本の排出削減目標
- 環境省|日本のNDC(国が決定する貢献)
- IGES|国連環境計画「排出ギャップ報告書 2023」
- 国立研究開発法人 国際農林水産業研究センター|362. 気候変動の転換点(tipping point)
- WWFジャパン|生きている地球レポート2024 – 自然は危機に瀕している –
- IPCC|Climate Change 2021 : The Physical Science Basis(Full Report)
- 一般財団法人環境イノベーション情報機構|決定的十年
- 環境省|Glasgow Climate Pact
- WWFジャパン|COP26閉幕!「グラスゴー気候合意」採択とパリ協定のルールブックが完成
- 経済産業省資源エネルギー庁|第6次エネルギー基本計画
- 経済産業省資源エネルギー庁|エネルギー基本計画の概要
- 経済産業省資源エネルギー庁|日本の多様な再エネ拡大策で、世界の「3倍」目標にも貢献
- 経済産業省資源エネルギー庁|再エネを日本の主力エネルギーに!「FIP制度」が2022年4月スタート
- 国立研究開発法人国立環境研究所|日本の温室効果ガス排出量データ(1990~2022年度)(確報値)