アンモニア発電とは?メリット・デメリットや課題について解説

ライフスタイル
2022年3月1日

近年、アンモニアを発電に利用するという話題を耳にすることがあります。あまり発電と結び付かないイメージですが、一体どのようなものなのでしょうか。今回は、アンモニア発電の仕組みやメリット・デメリットなどをご紹介します。

目次

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アンモニア発電とは、アンモニアを燃料として燃やす発電方法です。

アンモニアは、常温常圧では無色透明の気体で、その独特の刺激臭が特徴的です。「臭いのきつい有毒物質」というイメージがある人も多いと思います。

そんなアンモニアですが、今では次世代エネルギーの一つとして大きな期待が寄せられているのです。

アンモニアの利用

アンモニアの主な用途は、畑の化学肥料です。

植物の生育に欠かせない肥料の三要素といえば、窒素、リン酸、カリです。そのうちの窒素肥料の原料として、水素(H)と窒素(N)で構成されるアンモニアが使われています。

アンモニアの生産で採用されている合成方法が、ハーバー・ボッシュ法です。鉄アルミナ系の触媒を使い、圧力200~350気圧、温度500℃で窒素と水素を反応させることで、アンモニアを生み出します。

この方法は、19世紀末から20世紀にかけ、ともにドイツ人科学者のフリッツ・ハーバーとカール・ボッシュによって確立されました。

これ以後、人口増による肥料の世界需要に応えるため、急速にアンモニア製造量が増えていきました。

電源構成に盛り込まれたアンモニア発電

2021年10月に閣議決定した「第6次エネルギー基本計画」では、水素やアンモニアによる発電が初めて電源構成に盛り込まれました。

電源構成とは、エネルギー別に分類した発電の割合のことです。

この計画は、2030年までに水素やアンモニアによる発電量を、全体の1%を占めるようにするとの見通しを立てています。

日本政府も、アンモニアの燃料としての可能性に期待を寄せていると言えます。

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アンモニアは、具体的にどのようにして発電に利用されるのでしょうか。

混焼

混焼とは、ガスタービン発電や石炭火力発電の燃料にアンモニアを混ぜて燃焼させることを指します。

2014年、日本の科学者らにより、世界で初めてアンモニア燃料のガスタービン発電が実現しました。ガスタービン発電は、燃料を燃やしたときに発生するガスでタービンを回すことで電気を作るのですが、その燃料の30%にアンモニアを用いて発電に成功しました。

現在アンモニア発電で最も技術開発が進んでいるのが、火力発電のボイラーにアンモニアを混ぜて燃焼させる混焼です。後ほど「アンモニア発電のメリット」のパートでも触れますが、火力発電にアンモニアを多く使うことができれば、CO₂の排出量削減が期待できます。

さらに、混焼だけでなく、アンモニアだけを燃料として燃やす「専焼」についても、研究が進められています。

燃料電池

混焼とともに実用化が期待されているのが、アンモニアを燃料とした燃料電池です。

燃料電池は通常、水素と酸素の化学反応で生じるエネルギーを電力として取り出します。

しかし、水素は運搬・貯蔵などが難しく扱いづらいことから、その代わりとしてアンモニアを使った燃料電池の研究・開発が進められています。

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アンモニア発電が注目を集めているのは、以下のようなメリットがあるからです。

発電時にCO₂を排出しない

燃料としてのアンモニアの一番の長所は、カーボンフリーな点です。

アンモニアは燃焼時にCO₂を出しません。

そのため、国内の主要な石炭火力発電所のすべてで、アンモニアの20%混焼を行った場合、約4,000万トンのCO₂を削減できると言われています。アンモニアの割合を上げれば、さらに多くのCO₂を削減することができます。

そしてアンモニアだけを燃やして発電する「専焼」が実現できれば、CO₂排出削減量は約2億トンにのぼると試算されています。

水素と比べ運搬が容易で、コストが安い

燃料電池で、水素に代わる燃料として期待されているアンモニアですが、その理由は、運搬が容易で、コストが安い点にあります。

水素にはさまざまなメリットがありますが、輸送や貯蔵が難しく、またその分コストもかかる傾向にあります。

しかしアンモニアは、水素と比べて輸送や貯蔵が比較的容易です。また昔から肥料として使われてきた経緯もあり、すでに生産から運搬、貯蔵までの技術が確立されています。

また専焼による発電コストを見た場合、水素は1kWhあたり97.3円(2020年時点試算)なのに対し、アンモニアは23.5円(2018年度時点試算)と、大きく下回っています。

アンモニアの分子式に水素が含まれていることから、水素をアンモニアに変換して運び、そこから水素を取り出すといった方法も考案されています。

既存施設を有効活用できる

混焼によるアンモニア発電は、既存施設をそのまま利用することができます。

火力発電のボイラーにアンモニアを混焼する場合、バーナーなどを変えるだけで対応できます。

新たな整備や初期投資を最小限に抑えることができ、火力発電所を廃炉するといった必要がありません。

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しかし、アンモニア発電にもデメリットはあります。

発電時に窒素酸化物を排出する

アンモニアは窒素を含むため、燃焼すると窒素酸化物(NOx)を排出する性質があります。

窒素酸化物は、工場や自動車の排ガスなどから発生します。高濃度の二酸化窒素は、のどや気管、肺などの呼吸器に悪影響を与えるほか、光化学スモッグや酸性雨の原因にもなります。

アンモニア発電の実用化に向けては、窒素酸化物の制御や排出抑制が必須となることでしょう。

製造時にCO₂を排出する

窒素を合成するハーバー・ボッシュ法は、高温、高圧のもとで窒素と水素を反応させることで、アンモニアを生み出します。このため、大量のエネルギーを消費することとなります。

アンモニア発電自体はCO₂を排出しませんが、その製造過程で多くのCO₂を排出することになります。

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また、アンモニア発電の実用化に向けては、いくつかの解決すべき課題があります。

アンモニアの確保

アンモニア発電の研究が進んで実用化された場合、アンモニアが不足することが懸念されています。

たとえば国内の主要な石炭火力発電所のすべてで、アンモニアの20%混焼を行った場合、年間約2,000万トンのアンモニアが必要となります。

これは、現在の世界全体の貿易量に匹敵する量で、とても日本だけでまかなうことはできません。混焼率が高くなれば、さらに不足します。

2019年の世界のアンモニアの生産量は約2億トンです。主な生産国は中国、ロシア、米国、インドなどの大国で、この4カ国で世界全体の生産量の半分以上を占めています。

アンモニア発電の実用化に向けては、中長期的な調達量のコントロール、調達先の分散化などが重要となります。 

大規模発電では可能性が未知数

日本が世界をリードしているアンモニア発電の研究ですが、これまでの試験炉は小規模なものでした。

大規模発電への実証実験はまだこれからの段階で、実用化できるかどうかは、まだ未知数です。

今後、実際に使われている火力発電所を使い、アンモニアの混焼を試す実験などがさらに進められる予定です。

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まだまだ発展途上のアンモニア発電ですが、すでに実用化されている再生可能エネルギーはいくつかあります。

太陽光発電は、太陽の光エネルギーを太陽光パネルにより電気エネルギーに変換する発電方法です。

CO₂はもちろん、アンモニア発電と違い窒素化合物も出さないのが大きな特徴になります。燃料や炉を用いないので、災害時の非常用電源としても頼もしい存在です。

一方で、天気の悪い日や夜は発電できないなど、気象条件により発電出力が不安定となるのは、アンモニア発電に劣る点となります。

水力発電は、水を高いところから低いところに落とすことで水車を回し、その動力で発電機を回して電気を生み出します。

一定量の電力を安定して発電できるのが大きな利点で、この安定性は、アンモニア発電の目指すべきところではないでしょうか。

一方で、ダム建設の際に自然環境や地域住民の住環境を壊す恐れがあり、設置の際はコンセンサスを取ることが求められます。

風力発電は、風で風車を回し、回転エネルギーを電気エネルギーに変える発電方法です。太陽光発電と違い夜でも発電でき、海の上でも電気を作れるのが大きな特徴です。

しかし、風の状況など気象条件により発電出力が不安定になるのは、太陽光発電と同じです。

バイオマス発電は、木材などの生物資源を燃やしたり、ガス化することで発電する方法で、燃料を燃やしてタービンを回す点では、火力発電、アンモニア発電と原理は同じです。

天候に左右されないうえ、生物資源を有効に活用するので環境に優しく、循環型社会を体現した発電方法です。

また、燃やす際に二酸化炭素が出ますが、バイオマス燃料は成長過程で二酸化炭素を吸収しているので、トータルで見ると大気中の二酸化炭素量を増やすことにならない、というのも大きな特徴です。

一方で、燃料を集めたり運んだりするのに手間とコストがかかります。

地熱発電は、天気に左右されず昼も夜も発電できる、資源が枯渇する心配がないといった長所を併せ持っています。

しかし導入コストが高く、山中や温泉地に発電所が建設されることが課題です。

このように一長一短がある再生可能エネルギーですが、さまざまな発電方法を組み合わせることで、それぞれの短所を補うことができます。

第6次エネルギー基本計画では、2030年までに再生可能エネルギーの電源構成を36~38%にする見通しを立てています。

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※ 300kWh/月×12か月×0.434kg-CO₂/kWh(令和3年度全国平均係数)より算出
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アンモニア発電が実用化されるのは、まだ少し先のようです。しかし発電技術についてのニュースに絶えず関心を持ち、地球環境について問題意識を持ち続けるのはとても大切です。

新しい発電、新しい電力サービスについて、少しずつ知識を深めていきましょう。

エバーグリーンのホームページはこちら >>

(出典:資源エネルギー庁|アンモニアが“燃料”になる?!(前編)~身近だけど実は知らないアンモニアの利用先)
(出典:資源エネルギー庁|アンモニアが“燃料”になる?!(後編)~カーボンフリーのアンモニア火力発電)
(出典:資源エネルギー庁|「燃料アンモニアサプライチェーンの構築」プロジェクトの研究開発・社会実装の方向性)
(出典:資源エネルギー庁|エネルギー基本計画の概要)
(出典:日本肥料アンモニア協会|肥料の分類)
(出典:つくばサイエンスニュース|空気からパンを作る ~アンモニアの話~)
(出典:一般財団法人 新エネルギー財団|「アンモニア」エネルギー・キャリアとしての可能性)
(出典:独立行政法人環境再生保全機構|排出物質:窒素酸化物(ちっそさんかぶつ))

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