南極の氷はどれくらい?溶けたら何が起こるのか

南極は地球上の氷の約90%が集中している場所です。その体積は約2,600万立方キロメートルにも達し、南極大陸全体を平均約2kmの厚さで覆っています。
地球温暖化の進行によって南極の氷がすべて溶けると、世界の海面は約60m上昇するといわれています。これは、およそ20階建てのビルに相当する高さです。
この海面上昇により、人間の居住地の多くが失われることになります。特に深刻なのは、海抜の低い島国や沿岸部の大都市への影響です。
さらに、海面上昇だけでなく、気候パターンの大幅な変化や淡水供給の問題、生態系への甚大な影響なども予想されます。
もし60m海面上昇したら…世界と日本への影響
気候変動による南極氷床の融解は、地球規模の海面上昇を引き起こす深刻な問題です。
もし南極の氷がすべて溶けて海面が60メートル上昇した場合、世界地図は大きく塗り替えられることになるでしょう。
ここでは、南極の氷の融解が世界の国々や日本に与える影響を詳しく解説します。
世界への影響
世界各地で低地沿岸域が水没し、各地で海岸線の形が劇的に変化するでしょう。ツバルやキリバスといった島しょ国だけでなく、アメリカのニューヨークやヒューストン、上海、ロンドンといった世界経済を支える大都市も海面下に沈みます。
世界の海面上昇は、低地沿岸地域に住む約9億人(世界人口の約11%)に直接的な脅威をもたらしています。もし海面が60mも上昇したら、前例のない規模の避難と移住が必要になります。
このような変化は長期間にわたって段階的に進行するものの、一度始まると止めることは困難です。
日本への影響
島国である日本は、その地理的特性から極めて深刻な影響を受けることになります。東京、大阪、名古屋といった日本の心臓部ともいえる大都市の大部分が水没し、国土の形は大きく変わるでしょう。
東京23区はほぼ全域が水没し、高層ビル群が島のように点在する光景となります。また、福岡市の博多湾周辺の市街地も海中に沈み、仙台平野、石狩平野などの平野部もほぼ全域が海となります。
農業への影響も甚大で、陸地の水没により多くの農地が失われるため、国内の食料自給率はさらに低下するでしょう。
二次的な影響
海面上昇は単なる土地の水没に留まらず、社会全体に連鎖的な影響をもたらします。
海水の侵入により地下水が塩水化し、残った陸地でも飲料水の確保が困難になります。また、道路、鉄道、港湾、発電所など現代社会を支える重要な基盤が機能不全に陥り、社会システム全体の再構築が必要になるでしょう。
さらに、住む場所を失った膨大な数の人々が移住を余儀なくされれば、世界規模の社会的混乱が発生し、国際的な安全保障にも影響をおよぼすかもしれません。
加えて、地球上でもっとも生物多様性に富む沿岸生態系が消失するなど、生物多様性にも深刻な悪影響を与えます。
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南極の氷が溶けると地球全体で何が起きる?

南極の氷融解は海面上昇だけでなく、地球の気候システム全体に広範な影響をおよぼします。
地球温暖化がさらに加速する
白い雪氷は、太陽光を反射して地球を冷やす役割を担っています。ところが、氷が減少すると代わりに暗い海面が露出し、太陽熱をより多く吸収するようになります。
この現象は地球温暖化をさらに進行させ、その結果としてより多くの氷が溶けるという危険な悪循環を生み出しています。
さらに注目すべきは、温暖化によって氷の表面に紫色や茶色がかった黒色の藻類が繁殖する現象です。
この現象により、太陽光の反射率が低下し、氷はより多くの熱を蓄積。融解が一層促進され、温暖化加速の新たな要因となっています。
海洋の循環システムが弱まる
最新の研究によると、南極氷床の融解が世界最強の海流「南極周極海流(ACC)」を弱めていることが判明しました。
メキシコ湾流の4倍の強さを誇るACCは、大西洋・太平洋・インド洋を結び、熱や二酸化炭素の交換という重要な役割を担っています。
氷床が溶けると大量の淡水が海に流れ込み、海水の塩分濃度を変化させます。これにより深海への水の沈み込みが弱まるなど、海洋循環に深刻な影響が生じています。
この繊細な海洋バランスが崩れれば、気候変動の激化や海洋の炭素吸収能力低下により、地球温暖化がさらに加速する恐れがあると、研究者も警鐘を鳴らしています。
ペンギンなどの動物が影響を受ける
南極の環境変化は現地の生態系に壊滅的な打撃を与えています。
コウテイペンギンなどの南極特有の生物たちは生息地の縮小という厳しい現実に直面しており、2023年には海氷融解により約1万羽のひなが溺死した可能性が報告されました。
コウテイペンギンの生活は氷と密接に関連しています。春に海氷上の繁殖地に到着して5~6月に産卵し、約2ヶ月で孵化したヒナは12~1月に巣立ちますが、防水性のある羽が十分発達するまでは安定した氷が必要不可欠です。
地球温暖化による南極の氷の減少が続く限り、このような悲劇が今後もさらに拡大する懸念が高まっています。
海面上昇はなぜ起きる? – 氷床と海氷の違い
「コップに浮かんだ氷が溶けても水位は変わらないのに、なぜ南極の氷が溶けると海面が上昇するの?」という疑問をお持ちの方も多いでしょう。
これを理解するには、「氷床」「棚氷」「海氷」の違いを知ることが重要です。
氷床(陸上の氷)
南極大陸を覆う「氷床」は陸地の上にある氷の塊です。この氷が溶けると、これまで海にはなかった水が新たに海に流れ込むため、海面が上昇します。南極の氷の大部分は、この「氷床」です。
さらに、南極大陸は現在、巨大な氷の重みで押し下げられています。氷が溶けると大陸が隆起して、さらに海水を押し出す効果もあります。
棚氷(氷床が海に張り出したもの)
「棚氷」は氷床が海に張り出して形成された分厚い氷の塊です。海に浮かんでいますが、陸地の氷床と繋がっています。
物理法則だけで考えると、棚氷自体は海に浮いているため、これが溶けただけでは大きな海面上昇は起きないとみられています。
しかし実際は、棚氷は背後にある氷床の流れを堰き止める「栓」のような働きをしています。この棚氷が崩壊すると、陸上の氷床が海へ流れ出すスピードが加速し、結果として海面上昇につながる可能性があります。
海氷(海に浮かぶ氷)
海氷は海水が凍ったもので、すでに海の上に浮いています。この氷が溶けても、水のかさは基本的に変わりません。コップの氷が溶けても水があふれない理由と同じです。
しかし、海氷には棚氷を融解から守るという重要な役目があります。
前述の通り、棚氷が溶けると南極大陸の氷床の融解が加速し海面上昇を引き起こすため、海氷の融解も間接的には海面を招く恐れがあります。
北極との違い
「北極の氷が溶けるとどうなるの?」という疑問も多いでしょう。実は北極の氷のほとんどは「海氷」、つまりすでに海に浮いている氷です。コップの氷が溶けても水位が変わらないように、海氷が溶けても海面上昇にはほとんど影響しません。
一方、グリーンランド(北極圏)にある陸上の氷床は別です。これが全て溶けると海面は約7m上昇します。南極の60mほどではありませんが、沿岸地域には大きな被害をもたらすでしょう。
南極の氷は本当に全部溶ける?

南極の氷がすべて溶けるという極端なシナリオは、現実にはどれほど可能性があるのでしょうか?
南極の氷が全部溶けるまでにかかる時間
公益財団法人 日本極地研究振興会の試算によれば、海面が60m上昇するまでにかかる時間は約6,000年とされています。
つまり、現代人のスケールでは南極の氷が「すべて」溶けるという事態は考えにくく、南極の氷が「すべて」溶けて海面が60m上昇するという事態は、人類の歴史スケールでは非常に遠い未来の話と言えるでしょう。
今後100年で現実的に起こりうる海面上昇は?
一方で、南極氷床の「一部」が崩壊・融解するリスクは現実的な脅威です。
特に懸念されているのは西南極氷床の不安定化で、完全に崩壊すると3~5mもの海面上昇をもたらす恐れがあります。
これらの部分的な融解でさえ、沿岸都市や低地国家に甚大な影響が出る点は見過ごせません。
また、気候変動に関する政府間パネル(IPCC)の予測によれば、現在の温暖化傾向が続くと2100年までに海面が0.38~0.77m上昇すると見込まれています。
さらに、温室効果ガスの排出量が多い場合、2100年までに最大1m以上の海面上昇が起こる可能性も指摘されています。
南極の氷の現状|溶けるスピードは年々加速
南極の氷が「すべて」溶けるのは遠い未来かもしれませんが、「一部」の融解はすでに進行中の現象で、その状況は年々深刻化しています。
南極の氷が溶けるスピードは加速中
南極では年間約1,500億トンもの氷河が融解しており、そのペースは年々加速しています。
2023年冬には南極海の海氷面積が観測史上最小を記録し、1981~2010年平均と比較して175万平方kmも少ない状態となりました。
現象は単年の気象変動だけでは説明できず、人為的な気候変動が主要因である可能性が指摘されています。
専門家が警告する「終末氷河」の危機
西南極にある「スウェイツ氷河」(別名:「終末氷河」または「ドゥームズデイ氷河」)は、特に不安定化が進んでいる地域です。
このスウェイツ氷河が崩壊することで、西南極の氷床の安定も失われるとみられています。
2023年11月には「西南極氷床の融解はもはや止められない可能性がある」とする研究結果も公表され、温室効果ガスの排出削減を早急に進めなければ、取り返しのつかない事態になる可能性があると訴えています。
世界の地球温暖化対策と私たちにできること
南極の氷融解を食い止めるには、地球温暖化の主な原因である温室効果ガス(特にCO₂)の排出を削減することが不可欠です。
ここでは、地球温暖化を防ぐための国際的な取り組みと、個人でできる対策をご紹介します。
国際的な取り組み
地球温暖化を防ぐ国際的な取り組みにおいて、中心的な役割を果たしているのが「パリ協定」です。
この協定では、世界の平均気温上昇を産業革命前と比べて2℃より十分低く保ち、1.5℃に抑える努力を追求することが掲げられています。
また、IPCCは、1.5℃目標を達成するためには2030年までにCO₂排出量を2010年比で45%削減し、2050年には正味ゼロを達成する必要があると報告しています。
こうした取り組みによって温暖化を1.5℃に抑えられた場合、2℃の温暖化と比べて海面上昇を約0.1メートル低く抑えられる可能性があります。
海面上昇を約0.1メートル低く抑えられると、海面上昇のリスクにさらされる人口を最大1,000万人減らせることが示されており、早急な対策が求められています。
個人レベルでできること
温暖化対策は国際的な課題ですが、私たち一人ひとりの行動も重要です。特に、家庭からのCO₂排出量を減らすことが効果的な対策となります。
近年、家庭における温暖化対策として注目されているのが、再生可能エネルギー由来の「エコな電気」へのシフトです。
従来の火力発電では化石燃料の燃焼により大量のCO₂が排出されますが、太陽光やバイオマス、水力などの再生可能エネルギーによる発電では、CO₂をほとんど排出しません。
日本の家庭におけるCO₂排出量は約15万8,000キロトンで、そのうち約半分が電気使用によるものです。つまり、電気をエコなものに切り替えるだけで、家庭のCO₂排出量を大幅に削減できます。
手間なく効率的に温暖化対策に貢献できる方法なので、ぜひ検討してみてください。
エバーグリーンの「エコな電気」で CO₂を削減

家庭の電気をエコなものに切り替えるなら『エバーグリーン』がおすすめです。
エバーグリーンは再生可能エネルギーのリーディングカンパニー「イーレックスグループ」の一員で、再生可能エネルギー100%で発電されたエコな電気をすべてのプランで提供しています。
エバーグリーンに切り替える最大のメリットは、家庭の電気使用で発生するCO₂排出量を実質ゼロにできること。
ファミリー世帯なら、1ヶ月で148kgのCO₂を削減可能で、これは杉の木11本の植林効果に相当します。
※CO₂排出量は令和3年度全国平均係数(0.434kg-CO₂/kWh)をもとに計算
※植林効果は「森林の二酸化炭素吸収力」(関東森林管理局/林野庁)をもとに、杉の木1本当たりの年間CO₂吸収量を14kgとして計算
また、エバーグリーンでは通常プランの他にも、エコな電気におトクをプラスした以下のプランをご用意しています。
- あるく・おトク・でんき:歩数に応じて電気代が割引されるプラン
- 保険でんき:個人賠償責任保険と電気がセットになったプラン
南極の氷を守るためには、CO₂の排出削減が不可欠です。エバーグリーンへの切り替えを検討して、地球温暖化防止に貢献しましょう。
未来の地球を守るために
南極の氷が完全に溶ける事態は、数千年単位の長期的な問題かもしれません。
しかし、部分的な融解による数メートルの海面上昇でも、沿岸地域や島嶼国には甚大な被害が出ます。
私たちの行動のひとつひとつが、未来の地球環境を左右します。ぜひエバーグリーンに切り替えて、南極の氷と地球の未来を守る一歩を踏み出しましょう。
- (出典)
- 環境省「なんきょくキッズ」|南極の氷が全部とけたらどうなるの?
- 公益財団法人 日本極地研究振興会|南極の氷はあと何年でとけてしまう?
- 全国地球温暖化防止活動推進センター「デコ活」|2-2 海面上昇の影響について
- Flood Maps
- WWF|Rising to the challenge of sea level rise
- 農研機構|農環研ニュース No.31 1996.7
- NASA Jet Propulsion Laboratory|NASA-DOD Study: Saltwater to Widely Taint Coastal Groundwater by 2100
- ギズモード・ジャパン|「世界各地の水不足」に追い討ちをかける、海水侵入のリスク
- CISA|Sea Level Rise
- United Nations|Climate Change-induced Sea-Level Rise Direct Threat to Millions around World, Secretary-General Tells Security Council
- Aqua Publisher|Long term Impact of Sea Level Rise on Marine Ecosystems
- esse-sense|地球の温まりやすさを変える雪や氷の「アルベド」を正確に計算するために
- JAXA地球観測衛星データサイト「Earth-graphy」|近年の世界的な気温上昇に伴う急速な海氷域の減少
- ScienceDaily|Melting Antarctic ice sheets will slow Earth’s strongest ocean current
- WWF|Emperor penguins: the icons of the Antarctic
- 朝日新聞|南極のコウテイペンギン1万匹近く死亡か 温暖化で海氷なくなり
- 北極域研究共同推進拠点|北極海の氷の特徴
- 環境省「なんきょくキッズ」|棚氷(たなごおり)
- International Science Council|南極大陸が地球規模の気候変動について私たちに教えてくれること
- WIRED|南極の海氷面積が過去最小に。警戒すべき変化が起きているのか?
- 国立極地研究所|グリーンランド氷床とは?
- 公益財団法人 日本極地研究振興会|南極の氷はあと何年でとけてしまう?
- University of Southampton|Feedback loop that is melting ice shelves in West Antarctica revealed | University of Southampton
- CNN|南極の「ドゥームズデー氷河」、急速な融解は1940年代から 新研究
- IPCC|IPCC Sixth Assessment ReportThe Physical Science Basis Chapter 9: Ocean, Cryosphere and Sea Level Change
- Forbes JAPAN|南極の氷河融解は年間1500億トン 2100年に海面上昇2メートル予測も
- JAXA「Earth-graphy」|気候変動2023 第2回:南極域の冬季海氷面積が最小記録を更新
- CNN|南極の「ドゥームズデー氷河」、急速な融解は1940年代から 新研究
- CEN|もはや止められないか 西南極氷床
- IPCC|Global Warming of 1.5 ºC(Summary for Policymakers)
- 全国地球温暖化防止活動推進センター|4-06 家庭からの二酸化炭素排出量(2022年度)