【目次】
メタンガスとは
はじめに、メタンガスの特徴や発生源について解説します。
メタンガスはどんな物質?
メタンガス(CH4)とは、炭素原子と水素原子が結合して生じる炭化水素化合物の一種です。
自然界にも広く存在している無色無臭の可燃性ガスで、大気中のOHラジカル(活性酸素のひとつで、反応性が高く不安定な物質)と反応して消失します。
後述する「メタネーション」という技術を用いて、人工的に生成することも可能です。
メタンガスの発生源
メタンガスの発生源は、湖沼や湿地、水田、牛などのゲップ、シロアリ、化石燃料の採掘および燃焼など、多岐に渡ります。
湖沼や水田、牛やシロアリなどからのメタン発生に関わっているのが、メタン生成古細菌という微生物です。
メタン生成古細菌は、沼や河川、田んぼなどの泥の中や、動物・昆虫の消化管内などに存在し、嫌気的環境下(酸素の少ない環境)においてメタンを生成します。
多くの餌を食べる乳牛の場合、1日あたり約600リットルものメタンを排出するという報告もあります。
大気中に放出されるメタンのうち、約40%は沼地や河川、シロアリなどの自然起源のもので、約60%は稲作・畜産・化石燃料の採掘といった人為起源のものです。
私たちの身近で使われているメタンガス
メタンガスは日常生活でなかなか耳にすることがない物質ですが、実は私たちの身近でよく利用されているものでもあります。
たとえば、私たちが普段使っている都市ガスは天然ガスを原料としていますが、その天然ガスの主成分はメタンガスです。
そして、メタンを多量に含む天然ガスからは、メタノールやアンモニアといった基礎化学品や、プラスチック製品・医薬品・塗料などの、私たちの暮らしを支えるさまざまな化学製品が作られます。
メタンガスは温室効果ガスのひとつ
メタンガスは、私たちの生活や産業を支える物質ですが、同時に、地球温暖化を引き起こす温室効果ガスのひとつでもあります。
メタンガスの温室効果や、排出削減に向けた世界の動きについてご紹介します。
【関連記事】温室効果ガスが増える原因は?減らすためにできることも紹介
温室効果はCO₂の25~28倍
メタンガスは、CO₂に次いで地球温暖化に及ぼす影響が大きい温室効果ガスです。
100年間で比較した場合、メタンガスの温室効果はCO₂の25~28倍といわれています。
また、20年間で比較すると、その温室効果はCO₂の約84倍になるという報告もあることから、温暖化問題を考えるうえで、軽視できない物質であることが分かります。
さらに注目すべきは、大気中のメタンガス濃度が、少なくとも1980年代後半から現在に渡って長期的に増加傾向にあることです。
産業革命前の1750年頃と比較すると、2017年の大気中のメタンガス濃度は150%以上も上昇しています。
温暖化を防ぐためには、主因であるCO₂の排出量を減らすだけでなく、メタンガスの排出量も削減していく必要があります。
メタンガス排出量の削減は世界全体の目標
現在、地球温暖化の進行を防ぐために、メタンガスの排出量削減が世界全体の目標として掲げられています。
2015年にCOP21で採択されたパリ協定では、「産業革命以降の世界の平均気温上昇を2℃より十分低く保ち、1.5℃に抑制すること」が世界共通の長期目標として示されました。
さらに、2022年開催のCOP27では、「2030年までに、メタン排出量を2020年比で30%削減する」という世界協定をアメリカと欧州連合(EU)が提示し、150ヶ国以上が調印しました。
COP27で示された世界協定は、パリ協定を順守するための重要な目標に位置付けられています。
2030年までのメタン排出削減目標、およびパリ協定で掲げられた目標を達成するために、世界各国で温室効果ガスの排出量削減に向けた取り組みが進められています。
メタンガスは環境問題対策に役立つ物質としても注目されている
メタンはCO₂よりも強い作用を持つ温室効果ガスである一方で、環境対策に役立つ物質としても注目されています。
ここでは、環境問題対策として有力視されているふたつの技術、「メタネーション」と「メタンガス化」について解説します。
カーボンニュートラルを実現する「メタネーション」
地球温暖化を防ぐため、現在、世界規模で脱炭素化の動きが加速しています。
日本でも、2050年のカーボンニュートラル実現を目指して、さまざまな取り組みが実施されています。
そのひとつとして注目されているのが、CO₂と水素からメタンを合成する「メタネーション」という技術です。
メタネーションでは、工場や発電所から排出されるCO₂を回収し、メタンガスを生成します。生成されたメタンガスは、天然ガスの代替燃料として、工場・発電所で使用されます。
メタンは燃焼時にCO₂を排出しますが、メタンを生成する際にCO₂を回収するため、実質的にCO₂排出量がゼロになる、というのがメタネーションのポイントです。
メタネーションは「2050年カーボンニュートラルに伴うグリーン成長戦略」において、成長が期待される14分野のうちの「次世代熱エネルギー産業」に位置付けられており、カーボンニュートラルの達成に向けて、国も有望視している技術です。
脱炭素化に貢献する「メタンガス化」
脱炭素化を進めるにあたっては、食品廃棄物などのバイオマスをエネルギー源として活用する「メタンガス化(バイオガス化)」も注目されています。
メタンガス化とは、生ごみや家畜の排泄物などのバイオマスを、嫌気性微生物の働きによって分解することで、メタンガスを含むバイオガスを生成する技術です。
バイオガスは可燃性のため、燃焼させることで電気や熱などのエネルギーとして利用できます。
温暖化を防ぐためには、石油・石炭などの化石燃料の使用をいかに抑えるかが重要なポイントです。
再生可能エネルギーであるバイオマスを使ったメタンガス化が普及すれば、脱炭素化が促進されて地球温暖化の防止に繋がります。
また、本来なら捨てられるはずの食品廃棄物をリサイクルできることに加え、メタンガス化と同時に生成される発酵残さ(微生物の食べ残し)は肥料として農地で活用できるため、循環型社会の形成に役立つのもポイントです。
現在、環境省ではさまざまな施策を通して、メタンガス化システムの普及を後押ししています。
脱炭素化への取り組みは電気でも!
2050年のカーボンニュートラル、さらにその先の脱炭素社会の実現に向けて、メタネーション技術などを活用したガス脱炭素化の動きが加速していることをご紹介しました。
そして、脱炭素化に向けた取り組みは、ガスだけでなく電気においても進められています。
CO₂フリーの電気を選ぶという選択肢
近年、“環境に優しい電気”として高い関心を集めているのが、温室効果ガスであるCO₂を排出しない「CO₂フリー電気」です。
2021年度における家庭からのCO₂排出量を見てみると、もっとも多いのが電気使用によるもので、全体の46.8%を占めています。
普段家庭で使っている電気をCO₂フリーのものに変えるだけで、CO₂排出量を大きく削減できる可能性があるのです。
今、個人で取り組める温暖化対策として、CO₂フリー電気を選ぶ方が増えています。
CO₂排出量ゼロのエバーグリーンの電気
環境に配慮した電気を使いたい方におすすめなのが、新電力『エバーグリーン』です。
エバーグリーンでは、実質再エネ100%の「CO₂フリー電気」をすべてのお客さまにお届けしています。
エバーグリーンの電気を使うことで、ご家庭の電力使用によるCO₂排出量がゼロになります。
エバーグリーンへの切り替えによって削減できる年間CO₂排出量は、一般的な家庭で1,562kg-CO₂です。これは杉の木約112本が1年間に吸収する量に相当します。
※ 300kWh/月×12か月×0.434kg-CO₂/kWh(令和3年度全国平均係数)より算出
※ 杉の木一本当たりの年間吸収量14kg-CO₂/年と想定(環境省資料より)
エバーグリーンは以下のような特徴を持つ電力会社です。
- 東証プライム市場上場のイーレックスグループの一員
- 電力事業20年以上の実績がある老舗の新電力
- 沖縄と一部離島を除く、日本全国に供給
- 申し込みはWebから5分程度で完了
エバーグリーンについて詳しく知りたい方は、ぜひ公式ホームページをチェックしてみてください。
持続可能な未来を目指して、一人ひとりが環境を意識した行動を
メタンガスは、CO₂に次いで影響力の大きい温室効果ガスです。その一方で、環境問題の解決に役立つ物質としても注目を集めています。
地球温暖化などの環境問題は、全世界が直面する喫緊の課題であり、各国で解決に向けた取り組みが進められています。
日本においても、持続可能な未来を実現するために、社会の仕組みや価値観が着実に変わり始めています。
そして、環境問題の解決には、私たち一人ひとりの意識や行動を変えることも非常に重要です。
メタンガスを活用したバイオマス発電について理解を深めたり、普段使っている電気をCO₂フリーの電気に切り替えたりするなど、地球環境を守っていくための行動を積極的に取り入れていきましょう。
(出典)
- ケイエルブイ株式会社|メタンガスとは
- 気象庁|温室効果ガスWeb科学館 展示室4 大気中メタン濃度の変動とその要因
- 環境省|メタンの全大気平均濃度の2021年の年増加量が2011年以降で最大になりました~温室効果ガス観測技術衛星GOSAT(「いぶき」)の観測データより~
- 環境省|温室効果ガスインベントリの概要
- 環境省|国連気候変動枠組条約第21回締約国会議(COP21)及び京都議定書第11回締約国会合(COP/MOP11)の結果について
- 環境省|パリ協定の概要(仮訳)
- 環境省|メタンガス化に関する基本的事項
- 経済産業省資源エネルギー庁|ガスのカーボンニュートラル化を実現する「メタネーション」技術
- 経済産業省|2050年カーボンニュートラルに伴うグリーン成長戦略
- 経済産業省| 3 次世代熱エネルギー産業
- 農林水産省|国連気候変動枠組条約第27回締約国会議(COP27)の結果
- 農林水産省|⾷品廃棄物のメタン化に取り組んでみませんか?
- 国立研究開発法人国立環境研究所|世界のメタン放出量は過去20年間に10%近く増加 主要発生源は、農業及び廃棄物管理、化石燃料の生産と消費に関する部門の人間活動
- 国立研究開発法人 国立環境研究所|温室効果ガスインベントリ 日本の温室効果ガス排出量データ(1990~2021年度)(確報値)
- JAMSTEC|大気化学輸送モデルを用いた新たな手法により地域別のメタン放出量を推定~熱帯域、東アジアの放出量に従来推定と異なる結果~
- 独立行政法人製品評価技術基盤機構|メタン生成古細菌
- 日本経済新聞|牛のげっぷを可視化 温暖化促すメタンを減らせ
- 一般社団法人日本ガス協会|都市ガスとLPガスの違い
- 三菱ガス化学|三菱ガス化学の「ガス化学」って何?
- REUTERS|COP27、米欧主導のメタン削減協定に150カ国超が調印