【目次】
気候変動適応法とは
気候変動対策には、温室効果ガスの排出量を削減する「緩和策」と、気候変動による悪影響を最小限に抑える「適応策」があります。
気候変動適応法は、気候変動の影響に対する「適応策」を推進するために、2018年に制定された法律です。
近年、日本でも台風・豪雨による被害や生態系への影響など、気候変動の影響が顕著になってきました。
このような状況下で、私たちが安心して暮らせる社会を実現するには、気候変動の原因に直接アプローチする「緩和策」だけでなく、気候変動の影響に備える「適応策」にも積極的に取り組む必要があります。
適応策の具体例としては、次のようなものが挙げられます。
- 農業分野における高温に強い品種への切り替え
- 将来の水位変化を考慮した施設設計
- 自然の防災機能などを活用したグリーンインフラの推進
また、適応策には、気候変動がもたらす悪影響を軽減するだけではなく、好影響を活かすことも含まれます。
気候変動適応法は、これらの適応策を推進するための法的枠組みを定めたものです。
気候変動適応法が必要な背景|緩和策との違いは?
気候変動を抑制するには、温室効果ガスの排出量を削減する「緩和策」がもっとも重要です。
しかし、排出削減努力を最大限実施したとしても、それまでに大気中に蓄積された温室効果ガスの影響により、ある程度の気候変動は避けられないのが現状です。
IPCC第6次評価報告書第1作業部会報告書によれば、世界の平均気温は少なくとも今世紀半ばまでは上昇し続けるとされています。
また、今後数十年の間に温室効果ガスの排出量が大幅に減少しない限り、産業革命以前を基準とした世界平均気温の上昇は、21世紀中に1.5℃および2℃を超えると報告されています。
そのため、緩和策と並行して、気候変動の影響を軽減・回避する適応策にも取り組むことが重要です。緩和策と適応策は例えるなら車の両輪であり、両者を同時に推進することが求められています。
気候変動適応法の4つの柱
気候変動適応法は次の4つの柱により構成されています。
- 適応の総合的推進
- 情報基盤の整備
- 地域での適応の強化
- 適応の国際展開等
気候変動適応法への理解を深めるために、それぞれの内容を見ていきましょう。
適応の総合的推進
気候変動適応法の目的は、国・地方公共団体・事業者・国民が一丸となって気候変動適応策に取り組む体制を整備し、適応策を効果的に推進することです。
そのため、適応策に取り組む各主体が担うべき役割が、責務や努力として明確に規定されています。
例えば、国の責務には、適応策の基本的な方向性や、農林水産業・自然災害などの各分野における施策などを盛り込んだ「気候変動適応計画」の策定・変更が定められています。
また、環境省による気候変動影響の評価(おおむね5年ごと)や、適応計画の進展状況を把握・評価する手法の開発も行うこととされています。
情報基盤の整備
気候変動適応策の推進には、科学的知見にもとづく情報の整備・活用が不可欠です。
気候変動適応法では、国立環境研究所が情報基盤整備の中核を担うこととされています。
具体的には、「気候変動適応情報プラットフォーム(A-PLAT)」の充実・強化を進め、気候変動の影響や適応策に関する情報を収集・整理・分析して提供することが明記されています。
また、地域における気候変動適応の取り組みに対して技術的な助言を行うことも、国立環境研究所に求められる役割のひとつです。
国立環境研究所が気候変動適応に関する科学的な知見を集約・発信することで、国全体として適応策を効果的に進めていくことを目指しています。
地域での適応の強化
気候変動適応法では、地方公共団体の役割強化が重視されています。
気候変動の影響は地域の気候や社会経済状況により大きく異なるため、地域の実情に合わせた対策が必要です。
そのため、気候変動適応法では、都道府県や市町村が「地域気候変動適応計画」の策定に努め、地域の気候変動影響を把握するための「地域気候変動適応センター」の設置に取り組むことが定められています。
また、地域が連携して適応策を推進する「気候変動適応広域協議会」の組織も可能となっています。
適応の国際展開等
気候変動は地球規模の問題であり、その影響は世界各国におよんでいます。そのため、国内における適応策の取り組みを国際的に展開することも重要です。
特に、気候変動対策が十分でない開発途上国においては、適応策に対する強いニーズがあり、こうした国々への支援が喫緊の課題となっています。
そのような状況の中、環境省は2019年に「アジア太平洋気候変動適応情報プラットフォーム(AP-PLAT)」を立ち上げ、アジア太平洋地域における適応策の推進を支援しています。
さらに、日本企業が持つ適応技術や製品、インフラを海外に展開することで、気候変動への適応を世界的に促進することも期待されています。
改正気候変動適応法では熱中症対策が強化
近年、地球温暖化に伴い、熱中症のリスクが高まっています。国内でも熱中症による死者数が1,000人を超える年もあり、深刻な影響が出ています。
こうした現状をふまえて、2024年4月に改正された気候変動適応法には、新たに熱中症対策の強化が盛り込まれました。
改正によって熱中症対策実行計画が法定計画に格上げされ、これまで以上に総合的・計画的に熱中症対策が推進されることになりました。
また、従来の熱中症警戒アラートを熱中症警戒情報として法定化するとともに、発表基準の引き下げも実施されています。さらに、より深刻な健康被害が発生し得る場合に備え、一段階上に熱中症特別警戒情報が創設されました。
指定暑熱避難施設(クーリングシェルター)制度や、熱中症対策普及団体の指定制度も新設され、社会全体で熱中症に備える体制づくりが進められています。
熱中症対策として新たに制度化された「クーリングシェルター」とは?
改正気候変動適応法において新たに制度化された「指定暑熱避難施設(クーリングシェルター)」とは、熱中症による健康被害の発生を防止するために利用できる施設のことです。
「適切な冷房設備を備えている」などの要件を満たした施設(役所・図書館・ショッピングセンターなど)を、区市町村がクーリングシェルターとして指定しています。
改正気候変動適応法では、熱中症特別警戒アラート発表期間中にはクーリングシェルターを開放することが定められています(※)。
2024年8月14日時点で、全国で757の自治体がすでにクーリングシェルターを指定済みです。
お住まいの地域のクーリングシェルター情報は、環境省が運営する熱中症予防情報サイトから確認できますので、ぜひチェックしてみてください。
※開放期間や実施日時は施設ごとに異なります
個人でできる気候変動適応策
ここからは、個人でできる気候変動適応策を、「熱中症予防対策」「感染症予防対策」「自然災害対策」の3つに分けてご紹介します。
暑い時期を健康かつ安全に過ごすためのポイントを確認していきましょう。
熱中症予防対策
気候変動の影響により熱中症リスクが高まっている昨今においては、一人ひとりが熱中症予防に対する理解を深めて日頃から意識的に対策することが重要です。
熱中症予防に効果的な対策としては次のようなものがあります。
- エアコンなどを適切に使用する
- 水分・塩分をこまめに補給する
- 外出時は日傘や帽子を使用する
- 涼める場所・施設を利用する
気温が低い日でも、湿度が高いと汗が蒸発しにくくなるため、熱中症の危険度が増します。目安として、気温が25℃以下でも湿度が80%以上ある場合は注意しましょう。
また、子どもや高齢者は体温調節機能が低く、熱中症になりやすいので特に注意が必要です。こまめに水分補給を促すなどの声かけも意識的に行いましょう。
感染症予防対策
気候変動に伴って、デング熱などの蚊が媒介する感染症の蔓延リスクの増大も懸念されています。
実際、デング熱の発生率が過去50年間で30倍に増加したという研究報告もあるため、感染症予防対策をしっかりと行いましょう。
デング熱などの感染症リスクを減らすには、第一に蚊の発生源をつくらないことが重要です。
蚊は植木鉢の受け皿や空き缶、バケツなどにたまった水に産卵します。家の周囲に水がたまるような場所を作らない、たまっている水はすぐに捨てるなどの対策を心がけましょう。
また、外出時には長そで・長ズボンを着用したり、虫よけスプレーを使ったりするなど、蚊を寄せ付けない工夫も大切です。
自然災害対策
近年では台風がもたらす大雨やそれに伴う河川の氾濫など、自然災害による被害が毎年のように報じられています。
気候変動は台風の被害を拡大させる一因と考えられています。
台風への備えとして、家族で避難場所や避難経路、連絡方法の確認をしておくといざというときに安心です。
あわせて、防災備蓄品の準備や、災害情報などをチェックできるアプリ・Webサイトも事前に把握しておきましょう。
気候変動適応策とあわせて実施したい「エコな電気」への切り替え
地球温暖化を防ぐには、一人ひとりが緩和策と適応策をあわせて実施することが重要です。
個人でできる緩和策としておすすめなのが、再エネ由来のエコな電気への切り替えです。
再生可能エネルギーとは、太陽光・風力・バイオマスなど自然に由来するエネルギーのことです。
発電時にCO₂を排出しないクリーンなエネルギーとして、気候変動対策においても重要視されています。
国立環境研究所のデータによると、家庭からのCO₂排出量のうちもっとも多いのが電気に由来するもの(47.2%)です。
再生可能エネルギー由来のエコな電気に切り替えることで、家庭のCO₂排出量を大きく削減できます。
個人でできる気候変動対策として、ぜひ暮らしにエコな電気を取り入れましょう。
エバーグリーンのエコな電気で気候変動対策に貢献しよう
エコな電気への切り替えを検討したい方におすすめなのが『エバーグリーン』です。
エバーグリーンは、再生可能エネルギーのリーディングカンパニーである「イーレックスグループ」の一員です。
親会社のイーレックス株式会社では、全国で5ヶ所のバイオマス発電所を運営するなど、再生可能エネルギーの普及拡大に向けて積極的な取り組みを展開しています。
エバーグリーンでも、再生可能エネルギー実質100%で発電されたエコな電気をすべてのプランで提供しています。
エバーグリーンのエコな電気の特徴は次の通りです。
- 家庭の電力使用によるCO₂排出量がゼロになる
- 年間で1,562kg-CO₂のCO₂を削減できる(杉の木約112本が1年間に吸収するCO₂量に相当)
※300kWh/月×12か月×0.434kg-CO₂/kWh(令和3年度全国平均係数)より算出
※杉の木1本当たりの年間吸収量14kg-CO₂/年と想定(環境省資料より)
エバーグリーンでは、FIT期間の満了を迎える方を対象に、太陽光電力買取サービスも行っています。電気とセットで契約することで買取価格がアップするので、気になる方はあわせてチェックしてみてください。
気候変動適応法を理解して個人でできる対策に取り組もう
気候変動対策には、温室効果ガスの削減に取り組む「緩和策」だけでなく、気候変動の影響を回避・抑制する「適応策」の推進も不可欠です。
この「緩和策」と「適応策」を両輪として、社会全体で気候変動対策を強化していく必要があります。
個人レベルでもできる限り緩和策と適応策を実践して、気候変動への対策を進めましょう。
エコな電気を選ぶことは、気候変動対策のひとつの選択肢です。家庭でできる気候変動対策として、ぜひエバーグリーンのエコな電気をご検討ください。
(出典)
- 環境省|気候変動適応法(平成 30 年法律第 50 号)逐条解説
- e-Gov法令検索|気候変動適応法(平成三十年法律第五十号)
- 気候変動適応情報プラットフォーム|海水温24℃に耐える黒ノリ品種「みえのあかり」
- 気候変動適応情報プラットフォーム|将来の水位の変化に対応できる施設の設計
- 気候変動適応情報プラットフォーム|グリーンインフラの活用
- 気候変動適応情報プラットフォーム|気候変動と適応
- IPCC|AR6 Climate Change 2021: The Physical Science Basis(Summary for Policymakers)
- 環境省|令和元年版 環境・循環型社会・生物多様性白書
- 環境省|気候変動適応計画
- 環境省|アジア太平洋気候変動適応情報プラットフォーム(AP-PLAT)
- 気候変動適応情報プラットフォーム|AP-PLATが公開されました
- 環境省|令和6年版 環境・循環型社会・生物多様性白書
- 環境省「熱中症予防情報サイト」|改正気候変動適応法の法施行(令和6年4月1日)について
- 気候変動適応情報プラットフォーム|国の取組・動向
- 環境省「熱中症予防情報サイト」|指定暑熱避難施設(クーリングシェルター)・リンク集
- 独立行政法人環境再生保全機構|指定暑熱避難施設って?
- 環境省「熱中症予防情報サイト」|指定暑熱避難施設の運営に関する事例
- 気候変動適応情報プラットフォーム|高齢者のための熱中症対策
- 一般社団法人ジャパンデザイン「熱中症予防声かけプロジェクト」|熱中症を学ぼう!
- 政府広報オンライン|「デング熱」にご注意を! 予防策は「蚊に刺されない」「蚊を発生させない」
- Kristie L. Ebi, Joshua Nealon.Dengue in a changing climate.Environmental Research.2016.Volume 151.P115-123
- 国立研究開発法人国立環境研究所|日本の温室効果ガス排出量データ(1990~2022年度)(確報値)