潮力発電とは?メリットとデメリット、日本の取り組みも解説

ライフスタイル
2024年10月20日

潮力発電とは、潮の満ち引きをエネルギーに変える発電方法です。地球温暖化が進む昨今で、注目されている再生エネルギーのひとつですが、仕組みについてご存知ない方も多いのではないでしょうか。今回は、潮力発電の仕組みとメリット・デメリット、日本の現状についても解説します。

目次

潮力発電とは、月と太陽の引力で発生する潮の満ち引きを利用して、電気を生み出す発電方法です。

海面の水位(潮位)は月と太陽の引力により、約半日の周期でゆっくりと上下に変化しています。地球は1日に1回自転するため、多くの場所では1日に2回満潮と干潮を迎えることがほとんどです。この潮位の変化を「潮汐」と呼びます。

潮力発電の種類は「潮汐発電」と「潮流発電」の2つです。

潮汐発電は、大きい湾や河口の入り口などにダムと水門を建設し、満潮時には海水を貯水、干潮時に水門を開いて海へ放出することでタービンを回して発電します。

潮流発電は、内湾や海峡などに生じる潮流の運動エネルギーを利用し、水平軸型タービンを回して電気を生み出します。

どちらも同じ潮汐を利用して発電しますが、潮汐発電が潮位差の位置エネルギーを使った発電である一方、潮流発電は水平方向の運動エネルギーを利用するため、これらの発電方式は異なる特徴を持っています。

海洋エネルギーを使った発電方法との違い

潮力発電は、海洋エネルギーに分類されます。潮力以外の海洋エネルギーと、潮力発電の違いを見てみましょう。

洋上風力発電
海上に風力発電施設を設置して発電します。潮汐ではなく風のエネルギーで電気を生み出すため、風の強い海域が設置条件です。

波力発電
波の上下運動を利用して電気を生み出します。潮汐発電は貯めた水の放出によりタービン発電機を回しますが、波力発電は水面の上下動でタービンを回すのが大きな違いです。

海流発電
海水の流れを利用して、水車を回して発電します。潮流発電は潮の流れが速い海峡や内湾で行われますが、海流発電は海流がある海域ならどこにでも設置可能です。

海洋温度差発電
海の表層の温かい水と、深層の冷たい水の温度差により発電します。潮力発電とは異なり、海水の温度を利用して電気を生み出します。

潮力発電は、潮の満ち引きといった自然エネルギーを利用して発電するため、環境に優しい再生可能エネルギーとして注目されています。

発電による温室効果ガスの削減に繋がり、地球環境を守れることが大きなメリットです

また、一定した潮汐を利用して発電するため、一年を通して安定した発電が可能です。太陽光や風力発電と比べて、天候に左右されにくいメリットもあります。

四方を海に囲まれた日本は、海洋エネルギーの大きなポテンシャルを有しており、潮力による発電設備を設置する場所に困りません。

広大な日本の海域を有効活用できるのもメリットでしょう。

潮力発電のひとつめのデメリットは、タービン発電機の耐久性です。

潮力発電では、常にタービンを海水につけた状態で稼働させる必要があるため、海水による腐食や水圧などで機器が故障しやすい環境にあります。

故障した際はメンテナンスコストが発生するため、コスト面も問題視されています

ふたつめのデメリットは、ほかの海域利用者との共存です。 潮力発電はダムや水門が建設可能な場所や、潮の流れが速い場所など、設置場所が限られます。

そのため、設置場所によっては船舶航路や漁業に影響が出る可能性があるでしょう

海域利用者との共存のため、地方公共団体との調整や海域利用に関する法整備が課題とされています。

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現在、潮力発電を含む海洋エネルギー発電の技術開発は、欧州やアメリカを中心に進められています。世界の潮力発電の開発件数をランキング形式でまとめました。

  • 1位:イギリス
  • 2位:アメリカ
  • 3位:カナダ
  • 4位:ノルウェー
  • 5位:日本

(引用:NEDO|第 6 章 海洋エネルギー)

潮流・波力発電の開発件数の約6割は欧州で、さらにその約半数はイギリスで行われています

イギリスは日本と同じ島国で、周辺海域の潮流エネルギー密度が高いといわれています。

日本は世界トップクラスの海洋ポテンシャルを有しているにも関わらず、世界的にはイギリスやアメリカに遅れを取っているのが現状です。

日本は、排他的経済水域世界第6位の海洋国でありながらも、欧米などと比べて潮流発電の実用化の事例がありません。

そこで環境省と経済省は、2014年より「潮流発電技術実用化推進事業」を開始しました。

事業の目的は、日本での潮力発電の早期実用化を見据え、技術の完成度を高め、実証を行い、コスト低減に向けた課題の対応策の検討を行うことです。

2021年には、長崎県五島市で実証に取り組んでいた潮流発電の発電機が、商業運転に必要な安全性や性能を満たしていると国から認可されました。

大型の潮流発電機ではこの実証が日本初となり、商用化に向けた第一歩となりました

五島市の実証で使われた発電機の発電量は、実験開始から3ヶ月超で約8万キロワット時です。これは一般家庭360戸の月間使用電力量に相当します。

日本の潮力発電はいまだ実用化には至っていませんが、さまざまな実証や検討が行われ、早期実用化に向けて取り組みを続けています。

地球温暖化が進む昨今において、潮力発電をはじめとする再生可能エネルギーの活用が世界中で進められています。

再生可能エネルギーは、化石燃料とは異なり、利用時に温室効果ガスであるCO₂を排出しない(もしくは増やさない)点がメリットです

温室効果ガス削減に大きく貢献でき、地球環境の改善にも繋がると期待されています。

また、日本は世界に比べて一次エネルギーの自給率が4%(原子力を除く)と非常に低いのが現状です。

国産エネルギーである潮力などの再生可能エネルギーを活用することで、エネルギー自給率の向上や化石燃料調達に伴う資金流出を抑えることができます。

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※300kWh/月×12か月×0.434kg-CO₂/kWh(令和3年度全国平均係数)より算出
※杉の木一本当たりの年間吸収量14kg-CO₂/年と想定(環境省資料より)

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(出典)

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