森林環境税とは?背景や仕組みなどをわかりやすく解説

ビジネス関連
2025年1月16日

森林環境税は国内に住所がある個人に対して課税される国税で、2024年から徴収が始まりました。森林環境税が創設された背景や仕組みなどについて、わかりやすく解説します。

目次

森林環境税とは

森林環境税の仕組みとは

森林環境税は、国内に住所がある個人に対して課税される、新たに導入された税金です。2017年12月に閣議決定された税制改正の大綱に盛り込まれたもので、2024年度から徴収が始まりました。

森林環境税の仕組みは次のようになっています。市町村が納税義務者から、個人住民税均等割と合わせて1人年額1000円を徴収します。徴収した税金は、都道府県を通して、国の交付税及び譲与税配布金特別会計の財源となります。

総務省ホームページより

徴収された税収の全額は、国から都道府県や市町村に対して、森林環境譲与税として譲与されます。譲与は私有林人工林面積や、林業就業者数及び人口による客観的な基準で按分して行われます。

森林環境税はなぜ創設されたのか

森林環境税が創設された背景の一つに、国内に手入れ不足の森林が増えたことが挙げられます。日本の国土の約7割を占めているのは森林です。森林は環境の保全や土砂崩れなどの自然災害の防止、雨水を地中に浸透させることで水資源の貯蓄や水を浄化する機能を持つなど、さまざまな面で人々の暮らしを支えています。

しかし、林業の採算性が低下したことによって、林業の担い手は不足しています。また、所有者が不明な森林が増えたことで、人工林が間伐などが行われずに放置されるなど、森林の荒廃が問題になっています。

こうした中、国は「森林の機能を十分に発揮させるため、各地方団体による間伐などの適切な森林整備」を課題に挙げ、森林整備などの新たな財源にするため、森林環境税を導入しました。

Environmental protection image

森林環境税と温室効果ガス排出削減目標

もう一つの背景には、温室効果ガスの排出量削減があります。2015年にフランス・パリで開催された第21回国連気候変動枠組条約締約国会議(COP21)でパリ協定が採択されたことによって、世界の平均気温の上昇を産業革命以前に比べて2度より十分低く保ち、1.5度に抑える努力をすることが国際的な目標になりました。

日本も、2050年までに温室効果ガスの排出量を実質ゼロにする、カーボンニュートラルの達成を目指すことを2020年に表明。翌2021年には新たな目標として、2030年までに温室効果ガスの排出量を、2013年に比べて46%削減することも掲げました。

温室効果ガスの排出量を実質ゼロにするためには、森林の役割が重要になります。日本のCO₂吸収量のうち、9割以上を森林が吸収しています。また、木材には炭素を固定する役割もあります。温室効果ガス排出量削減のために、国内の森林の状況を改善していくことも、森林環境税が導入された要因と言えます。

森林環境税の徴収方法は

森林環境税はいくら徴収されるのか

森林環境税は、1月1日時点で国内に住所がある個人で、個人住民税(均等割)の納税義務者に課税されます。対象者は約6200万人です。

個人住民税は、その地域に住んでいる個人に対して課される地方税です。個人住民税には所得に応じて負担する所得割と、一定の所得がある人が定額で負担する均等割があり、森林環境税は均等割の納税義務者に課税されることになりました。

2024年度の森林環境税は、住民税に上乗せして1人年額1000円が徴収されています。

森林環境税の税額と個人住民税(均等割)の合計は5000円

森林環境税の徴収が始まったことで、2024年度からは森林環境税の税額1000円のほか、個人住民税(均等割)の市町村民税が3000円、同じく個人住民税(均等割)の都民税・道府県民税が1000円徴収されることになり、合計は5000円となりました。

2023年度までは、個人住民税(均等割)のうち市町村民税が3500円、都民税・道府県民税が1500円でした。この税額は、防災費用の確保のため、それぞれ500円ずつ引き上げられていたためです。

この引き上げ措置は2023年度で終了したものの、2024年度からは新たに森林環境税が導入されたため、個人住民税(均等割)と森林環境税の合計は5000円となったのです。

森林環境税が免除されるケースは

森林環境税は、個人住民税(均等割)が非課税の方には課税されません。具体的には次のような人が免除になります。

1月1日時点で生活保護法による生活扶助を受けている人。1月1日時点で、障害者、未成年者、寡婦またはひとり親で、前年の合計所得金額が135万以下の人。さらに、前年の合計所得金額が一定金額以下の人です。

非課税基準は市町村によって異なります。詳しくは、住んでいる自治体に確認してください。

森林環境税の使い道と問題点

森林環境税の使い道は

森林環境税は、前述したように徴収された税収の全額が、国から都道府県や市町村に対して、森林環境譲与税として譲与されます。森林環境譲与税は、森林環境税に先立って2019年度から譲与が始まっています。

その使い道は、市町村の実情に応じて異なるものの、基本的には森林の整備や、その促進に関する費用に活用されています。総務省と林野庁によりますと、2022年度までの4年間で、全国の都道府県と市区町村に交付された金額は、約1500億円でした。実際の活用事例を見ていきましょう。

森林環境税の活用事例

森林環境譲与税の活用方法として、主要なものの一つが森林整備です。林野庁によりますと、2022年度は159の自治体が森林整備などの取り組みを行いました。

Scene of felling the branches of a large tree in a park using a crane for high-altitude work.

森林整備で広がっているのは、都市部と山村部の市町村が協定を締結して、山村部における森林整備の費用に都市部の譲与税を当てる取り組みです。

このうち、東京都荒川区と福島県福島市は、福島市の市有林の一部を「あらかわの森」と名付けて、連携・協力して植樹体験や丸太切り体験、それに周辺の自然林の散策などを行いました。

また、戦後に造成された人工林の多くが資源として利用が可能な段階を迎えていることから、森林資源の循環利用を図るために、再造林を支援する取り組みを行った自治体もあります。鹿児島県さつま町は、森林の所有者に直接交付金を支払うことによって、再造林への意欲を喚起する事業を実施しました。

他にも、台風による倒木被害を未然に防止するため、千葉県成田市では電線沿いの森林の伐採を行ったほか、和歌山県田辺市では集落周辺の森林を市が伐採しています。

森林整備以外では、人材の育成や確保などに取り組んでいる自治体もあります。人口減少に伴う林業従事者の減少や、それに起因する放置森林の増加が課題となっている島根県津和野町では、地域おこし協力隊制度を利用して、林業の担い手不足の解消に取り組んでいます。具体的には、協力隊の任期を終えた人を対象に、個人事業主として林業経営を行う上で必要となる、重機などにかかる初期費用を年間120万円、最大で3年間補助しています。

森林環境税の二重課税の問題と企業の立場は

このように活用事例も公表されている森林環境税ですが、いくつか問題点もあります。東京23区のように、私有林人工林の面積がゼロとなっている自治体にも公布されていることです。交付の際に考慮される要素は、2024年度からは私有林人工林面積が55%、林業就業者が20%、人口が25%。人口も交付の基準に入っていることから、東京23区にも公布されることになります。

また、二重課税の問題もあります。2023年度時点で森林保全や整備を目的とした超過課税を行なっていた自治体は都道府県の大半を占めていたことから、森林整備を目的とした森林環境勢は二重課税になるのではないかといった指摘もあります。

個人に対して年額1000円を課すことに対しても、賛否の声があります。少し古い数字ですが、2015年の日本国内でのCO₂排出量の内訳は、家庭部門からの排出の割合が22%だったのに対し、78%は企業と公共部門によるものでした。

このような現状から、森林環境税に温室効果ガス排出量の削減につなげる趣旨があるのであれば、企業にも課税か、もしくは森林環境を守る取り組みを課すことが必要ではないかといった議論もあります。

前述したように、森林には排出されたCO₂の吸収や、炭素を固定する役割があります。企業は森林環境税の課税対象にはなっていないものの、今回の新税導入をきっかけに森林整備などについてできることを考えてみてはいかがでしょうか。

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