※この記事は、2020年8月5日に公開した記事ですが、文言やデータ、その他の部分も追記‧更新して2021年12月24日に再度公開しました。
卒FITとは
卒FITとは、FIT制度 による買取期間が満了した発電設備のことを指します。
FIT制度では再生可能エネルギーで発電した電気を電力会社が一定期間買い取ることが約束されています。
買取期間は発電方法や電力量によって異なりますが、2019年11月以降、このFIT制度で買取期間が満了する住宅用太陽光発電設備の数が増加し始めました。
2019年の11月・12月だけで約53万件が卒FIT対象となり、累計では2023年までに約165万件に達する見込みです。
では、なぜ2019年11月を境に多くの住宅用太陽光発電が買取期間の満了を迎え始めたのでしょうか。
太陽光余剰電力買取制度から10年
FIT制度は2012年から開始しましたが、2009年には先駆けとなる「太陽光余剰電力買取制度」が既に開始していました。
太陽光余剰電力買取制度は、太陽光発電の普及拡大を目指すために2009年11月より始まった制度です。太陽光発電設備で作られた電気のうち、自家消費分を差し引いた余りの電気(余剰電力)を電力会社が買い取ることを義務づけ、住宅用太陽光発電等による余剰電力の買取期間を10年と定めました。
そのため、太陽光余剰電力買取制度開始直後に売電を始めた設備が、2019年11月に一斉に買取期間満了を迎えることとなったのです。
制度を開始した2009年11月当時の買取価格は1kWhあたり48円と今よりも高額だったため、制度開始後、太陽光発電設備の導入は一気に加速したといわれています。
卒FITになると何が変わるのか
2019年11月に多くの太陽光発電設備が卒FITの対象となりましたが、これは今までFITを活用していた人にとって何を意味しているのでしょうか。
住宅用太陽光発電による余剰電力を2012年の固定買取価格である42円/kWhで売電したとすると、発電設備への投資は約10年で回収できると試算されています。買取期間の10年が過ぎると固定価格での買取はなくなりますが、その後は一般的に小売電気事業者などへの売電、もしくは電気自動車や蓄電池を導入して発電した電気を自家消費するかのどちらかになります。
また卒FIT後の設備管理は基本的に自己責任です。より長く太陽光発電設備を使い利益を享受するためには、メーカー保証が切れる前の9年目点検が推奨されています。
つまり卒FITの太陽光発電でメリットを出すには、発電した電力を余すことなく消費するための工夫がより大切になります。
例えば、太陽光発電の40%を占める11:00~15:00の時間帯に意識的に電力消費を増やして、夜間太陽光で発電できない時に電力会社から購入していた電気を減らすことが出来れば、結果的に電気代を減らすことに繋がります。今まで夜間に電力を使用してエコキュートを動かしていたご家庭なら、昼間に余剰電力がある時にエコキュートを活用するようにすれば、発電した電力を効率的に活用できます。
卒FIT後の活用方法
2020年には新たに20万件の太陽光発電設備が卒FIT対象となる見込みですが、卒FIT後残された発電設備はどうすれば良いのでしょうか。ここでは2つの活用方法についてご紹介します。
■電力会社へ売電
ひとつは、それぞれの企業、家庭と小売電気事業者などが、個別に交渉して契約を結び、余った電力を売電する方法です。既に買取期間満了後の買取りを行なっている事業者や、具体的な買取りメニューを発表する事業者も増えてきています。
このように余った電力の自由売電がスムーズに進めば、FIT制度がなくても継続できる再エネ事業のビジネスモデルの先駆けを構築出来る可能性があり、近年注目されています。
■蓄電池を導入
もう一つの方法が、余った電力を蓄電池に貯めておき、必要な時に活用する方法です。
蓄電池とは、1回限りではなく、充電をおこなうことで電気を蓄え、繰り返し使用することが出来る電池(二次電池)のことです。
余った電気の活用方法は自分たちで自由に決められるため、例えば災害や電力不足などで停電が発生した場合の非常用電源や、ピークカット・ピークシフトにも役立てられます。
まとめ
卒FITとは何か、近年卒FITの対象者が増えている理由、卒FIT後の具体的な活用方法について説明しました。
どの世帯が、いつ買取期間満了を迎えるかは、設置している企業や住宅の管理者、住民にしか分かりません。気づかないうちに期間満了を迎えていたということがないように、改めて契約期間の確認と卒FIT後の活用方法について検討してみてはいかがでしょうか。
資源エネルギー庁 住宅用太陽光発電設備のFIT買取期間終了に向けた対応
固定価格買取制度の買取期間満了後の対応(いわゆる2019年問題)について|太陽光発電ネットワーク京都支部
知っておきたいエネルギーの基礎用語 ~「蓄電池」は次世代エネルギーシステムの鍵|資源エネルギー庁
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