SBTとは?背景と日本が掲げる目標、企業の取り組み事例を紹介します。

ビジネス関連
2020年8月27日

SBTは「Science-based Targets」の略で、日本語では「科学的根拠に基づく目標」とも呼ばれており、パリ協定が求める水準と整合した、5年~15年先を目標年として企業が設定する温室効果ガスの削減目標のことです。この記事では脱炭素社会とは何か、日本が掲げる目標と企業が行っている具体的な取組、そしてSBTについてご紹介します。

目次

【目次】

SBTとは

SBTに取り組むメリット

日本の削減目標とビジネスへの影響

目標達成のための”核”となる「再生可能エネルギー」

脱炭素化の方向性を持った企業の取組事例

■WE MEAN BUSINESSへの加盟

■RE100への参画

まとめ

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※この記事は、2020827日に公開した記事ですが、文言やデータ、その他の部分も追記‧更新して2021年11月30日に再度公開しました。

SBTとは


SBTとは、WWF、CDP(旧カーボン・ディスクロージャー・プロジェクト)、世界資源研究所(WRI)、国連グローバル・コンパクトによる共同イニシアティブです。
世界の平均気温の上昇を「2度未満」に抑えるために、企業に対して、気候科学(IPCC※)に基づく削減シナリオと整合した削減目標を設定することを推奨しており、2021年10月26日時点では、SBTのもとで意欲的な削減目標を設定することにコミットした企業が世界で2,000社を超え、日本では138社まで増加しました。

※IPCC:国連気候変動に関する政府間パネル(Intergovernmental Panel on Climate Change)の略。人によって引き起こされる気候変化、影響、適応及び緩和方策に関し、科学的、技術的、社会経済学的な見地から包括的な評価を行うことを目的として、1988 年に国連環境計画(UNEP)と世界気象機関(WMO)により設立。
参照

SBT誕生の背景にはパリ協定があります。
パリ協定は下記の2つの目的のために発足されました。

① 産業革命からの平均気温の上昇を「2℃よりも十分下方」に保持。
② 1.5℃に抑える努力を追求する。
上記の目的を達成するため、今世紀後半に温室効果ガスの人為的な排出と吸収の均衡を達成できるよう、排出ピークをできるだけ早期に抑え、最新の科学に従って急激に削減する目標を掲げています。
日本もパリ協定の締約国であり、締約国には削減目標を作成・提出・維持することが求められています。そのため、日本も削減目標の目的を達成するための国内対策を取る必要があり、その取組の一つとしてSBTが創設されました。

パリ協定の詳しい解説はこちら
パリ協定とは?今さら聞けない基本的な考え方や国内の取り組み、ビジネスとの関係をご紹介します。

(出典:パリ協定~歴史的合意に至るまでの道のり|外務省)
(出典:Science Based Targetsイニシアティブ(SBTi)とは|WWF)
(出典:脱炭素化の方向性を持った具体的な取り組み事例集|環境省)
(出典:第5次評価報告書(2014)|環境省)

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SBTに取り組むメリット


ESG投資にも代表されるように、環境に配慮し温室効果ガスの排出量の削減に取り組む企業に投資家の注目が集まっています。
このように事業環境が変化する中で排出削減を行う経営上の意義には大きく3つあります。

● 脱炭素の要請に対応する:法令や社会的なルールに、適切に対応する
● 優位性を築く:脱炭素のために既存事業を見直し、自社の競争力を強化する
● 新たな機会を捉える:脱炭素社会への転換によって生まれる新たなチャンスをつかみ取り、自社のビジネスを拡大する

国際的にも持続可能な経営を行っている企業は高く評価されており、投資家からGHG削減を求められる事例もあります。

ESG投資についての詳しい解説はこちら
ESG投資とは?市場の動向とESG投資の種類

(出典:SBT等の達成に向けたGHG排出削減計画策定ガイドブック|環境省)

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日本の削減目標とビジネスへの影響


パリ協定の締結によって、日本では、中期目標として2030年度の温室効果ガスの排出を2013年度の水準から26%削減することが定められました。
その後、2020年10月26日に菅元総理大臣が2050年までにカーボンニュートラル、すなわち脱炭素社会の実現を目指すことを宣言しました。さらに、2021年4月には野心的な目標として、2030年度の目標を2013年度の水準から46%削減することを宣言しています。
その他各国も続々と2030年の削減目標を宣言しており、2050年のカーボンニュートラルを宣言する国も増えています。

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カーボンニュートラルの詳しい解説はこちら
日本が30年後に目指す「カーボンニュートラル」とは?

(出典:成長戦略ポータルサイト|首相官邸)
(出典:日本の排出削減目標|外務省)

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目標達成のための“核”となる「再生可能エネルギー」


先述の目標を達成するために、政府が核として掲げているのが、再生可能エネルギー(再エネ)の導入量を増やすなど低排出なエネルギーミックスの推進と、さらなるエネルギー効率化の追求です。
再生可能エネルギーとは、太陽光・風力・中小水力・バイオマス等といった温室効果ガスを排出せず、エネルギー源として永続的に使用することができるエネルギーのことです。
第6次エネルギー基本計画で政府の示した野心的な2030年のエネルギーミックスにおいては、徹底した省エネルギーとともに、再エネを36%~38%、原子力を20~22%とするなどの電源構成の見通しが示されています。

※再生可能エネルギーについて詳しくはこちら
再生可能エネルギーとは?企業のメリットと今後の課題

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日本企業においては、これらの目標をビジネスチャンスと捉え、自社の排出量をさらに削減するだけでなく、高機能素材や低炭素・省エネ製品の開発・国内外への普及を進めることが求められます。
また、サプライヤーや下請け企業にも再エネ利用を要求するようになったり、投資家や取引先から再エネ導入を求められるケースもここ数年で増加しています。
経済発展が無ければ、温暖化対策に有用な革新的イノベーションは生まれません。
排出削減の取り組みを、経済や社会の発展に向けた取り組みとセットで進めていくことが重要とされています。

(出典:資源エネルギー庁|日本の削減目標とビジネスへの影響)

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脱炭素化の方向性を持った企業の取組事例


ここでは脱炭素化の方向性を持った企業の具体的な取組事例の一部をご紹介します。

■WE MEAN BUSINESSへの加盟

WE MEAN BUSINESS(以下、WMB)は、低炭素社会への移行に向けた取り組みの促進を目的として、PRI※やCDP※等の国際機関やWBCSD※等の企業連合により、2014年9月に結成された連合体です。
カーボンプライシングや再エネ、省エネに関する国際的なイニシアティブと企業・投資家を結ぶプラットフォームの役割を果たしており、構成機関は、このプラットフォームを通じて連携しながら、ネットゼロ(Net-zero)、エネルギー、都市(Urban)、⼟地(Land)、産業(Industrial)、実現に向けて(Enablers)、回復⼒(Resilience)といった7つの領域において計12種の取組を広める活動を⾏っています。
2018年3月時点で、加盟企業数は670社、総誓約数は1,132にのぼります。

※PRI 国連が公表する、ESG要素を投資の意思決定プロセスに組み込むための投資原則組織。
※CDP 企業に対し気候変動に関する情報開示の要請等を行う国際機関。
※WBCSD 環境保全と経済発展に向けた企業活動の推進を目的とする企業連合。

(出典:環境省|https://www.env.go.jp/seisaku/list/ondanka/plan_06.pdf)
(出典:環境省|We Mean Businessについて)

■RE100への参画

WE MEAN BUSINESSで取り組まれている中で、有名なものが前述のSBTとRE100です。RE100とは、国際環境NGOのThe Climate Group(TCG)によって2014年に発足された国際イニシアチブです。参画した企業には再生可能エネルギーの導入実績を毎年、CDP気候変動質問書を通してRE100に報告することが求められており、その結果が「RE100 Annual Report」に公表されます。RE100に加盟し、実際に100%再生可能エネルギーでの事業運営に向けて取り組むことで、投資家や取引先にアピールすることができ、企業価値に繋げることができます。

RE100についての詳しい解説はこちら
RE100とは?加盟条件と再エネ100%を達成する方法、及び中小企業向けのRE Actionについてご紹介

※RE100について詳しくはこちら

(出典:https://www.env.go.jp/earth/re100.html)
(出典:https://www.env.go.jp/seisaku/list/ondanka/plan_06.pdf)

まとめ


SBTとはパリ協定が求める水準と整合した、5年~15年先を目標年として企業が設定する温室効果ガスの削減目標です。この記事では、このような脱炭素社会の実現に向けた取り組みが求められることとなった背景、実現するための新たなエネルギーの活用、具体的な企業の取り組み事例をご紹介しました。IPCCは地球温暖化の要因を「人間の影響の可能性が極めて高い」と明言しており、こうしている間にも地球温暖化のリスクは更に加速しています。
長期的視点では、こうした環境問題へのリスクを低減するため、短期的には投資家や消費者の賛同を得るために脱炭素社会の実現に向けた取り組みは重要になっていますので、自社の取り組みについて今一度考えてみてはいかがでしょうか。

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