新常識!?今話題の「PPAモデル」とは?

ビジネス関連
2020年9月16日

カーボンニュートラルの実現に向けた取組が求められるなか、企業にも再生可能エネルギーを用いた事業運営を重要視する動きが高まっています。そんななか、企業や自治体の建物の屋根に太陽光パネルを無償で設置できる「PPA」の活用が進んでいます。PPAとはなにか、導入拡大の背景、メリット・課題、政府による補助金についてなど、幅広く解説します。

目次

【目次】

PPAとは

PPA拡大の背景

■パリ協定による国際的な脱炭素化社会実現への動き

 
■ESG投資の拡大

■FIT制度への移行

■PPAでは再エネ賦課金がかからない

PPAモデル導入のメリットと留意点

■PPAモデル導入のメリット

■PPAモデル導入時の留意点

PPAに関する補助金

まとめ

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※この記事は、2020年9月16日に公開した記事ですが、文言やデータ、その他の部分も追記・更新して2022年9月22日に再度公開しました。

PPAとは


PPAとは、「Power Purchase Agreement(電力販売契約)」の頭文字を取ったもので、第三者モデルとも呼ばれます。企業や自治体が保有する施設の屋根などを事業者が借り、そこに無償で発電設備を設置し、発電した電気をその企業・自治体が使用することで、電気料金とCO2排出の両方が削減できる仕組みとなっています。設置した発電設備の所有は第三者(事業者または別の出資者)が持つため、資産を保有することなく、再エネを利用することができるとして、アメリカを筆頭に日本でも導入が進んでいます。

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PPA拡大の背景


PPAが拡大している背景には以下のようなものが挙げられます。

■パリ協定による国際的な脱炭素化社会実現への動き

まず、気候変動対策の新たな枠組みであるパリ協定(2015年採択、2016年発効)を契機に、世界では様々な国際機関が脱炭素化社会に向けた取り組みを加速させました。
現在、120以上の国と地域が、2050年までにカーボンニュートラルを実現することを目標に掲げており、日本も二酸化炭素だけに限らず、メタンやフロンガスを含む温室効果ガスの排出量を2050年までに全体として0にすることを目指しています。(2050年カーボンニュートラル)

もっと詳しく
2050年に日本が目指すカーボンニュートラルとは?

■ESG投資の拡大

脱炭素化の潮流はビジネスにも影響を与えています。投資家の間で従来の企業価値に加え、環境・社会・企業統治に配慮している企業を重視・選別して行うESG投資を重視する動きが拡大しており、企業はもちろん、サプライヤー全体にも「再生可能エネルギーとしての付加価値」への需要が高まっています。

もっと詳しく
ESG投資とは?ESG投資の7つの種類、企業がESG経営を行うメリット

■FIT制度への移行

更に日本政府は、再エネの普及をより高めるために、再生可能エネルギー源を用いて発電された電気を国が定める価格で一定期間電気事業者が買い取ることを義務付けるFIT制度 (固定価格買取制度)を導入、太陽光発電をはじめとする対象のエネルギーが本制度に移行しました。2022年度の太陽光発電で発電された電気の買取価格は下記の通りです。

・住宅用(10kW未満)17円/kWh(買取期間10年)
・事業用(10-50kW)11円/kWh(地域活用要件あり)
・事業用(50kW以上)10円/kWh or 入札制

また、FIT制度で既存建物への屋根を設置した場合はFIT入札を免除したり、10―20kWの集合住宅の屋根への設置については、配線図等から自家消費を行う構造を確認できる場合に限り、30%以上の自家消費を実施しているものとみなすなど、導入促進を行っています。

もっと詳しく
【2021年度最新版】FIT制度と2022年4月から始まるFIP制度を分かりやすく解説

■PPAでは再エネ賦課金がかからない

しかしながら、FIT制度は対象の再生可能エネルギーによって発電された電力の買い取りに要した費用を、再エネ賦課金として企業や各家庭の電気の使用量に応じて国民に負担させるものであり、再生可能エネルギーが普及するにつれ企業や家計への負担が増加することが懸念されています。こういった国民負担を減らすために、現在政府ではFIT制度による買取単価を徐々に減らしている傾向にありますが、FIT制度を使って売電する他に、自家消費型の発電方法も選択肢の一つとして注目され始めました。
一般的に太陽光発電システムを設置する際には太陽光パネル(モジュール)などの設備や、工事費などを含む費用負担が発生しますが、PPAは、初期費用不要で太陽光発電システムを導入できるうえ、発電した電気を自家消費すれば再エネ賦課金分の削減が可能になり、電気代も抑えられます。

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PPA導入のメリットと留意点


PPAモデルとは何か、誕生した背景を理解した上で、実際にPPAモデルを導入するとどのようなメリットがあるのでしょうか。導入の際の留意点も併せてご紹介します。

■PPAモデル導入のメリット

PPAを導入すると、以下のようなメリットがあります。

① CO₂フリーのクリーンな電気を発電できる
太陽光パネルから発電される電気はCO₂フリーのクリーンな電気のため、CSR※対策にも最適です。非化石エネルギーの為、省エネ法の対策にも活用できます 。

※CSR:Corporate Social Responsibilityの略。企業の社会的責任。企業が社会や環境と共存し、持続可能な成長を図るため、その活動の影響について責任を取る企業行動であり、企業を取り巻く様々なステークホルダーからの信頼を得るための企業の在り方。

② 再エネ賦課金を削減できる
太陽光パネルから発電された電気を自家消費した分は、再エネ賦課金が掛からないため、電気代の総額を抑制できます。

③ 工場立地法対策になる
太陽光発電の設置エリアは環境施設面積として算入可能です。

※環境施設面積 緑地及びこれに類する施設で工場又は事業場の周辺の地域の生活環境の保持に寄与するもの として主務省令で定めるもの 。

(出典:工場立地法FAQ集(第 2.0 版)|経済産業省)

➃ 契約期間満了後には設置した設備が譲渡される
一般的なPPAでは、契約期間満了後に取り付けた設備を需要者に譲渡するという契約が基本的に交わされます。メーカー保証の付いた商品をそのまま譲渡してもらい、引き続き、発電することが出来ます。(商品の保証範囲は契約する企業によっても異なります。)

➄ 減税の対象になる可能性がある
政府は、太陽光発電設備等を設置したZEH(Net Zero Energy House)の導入費用の補助や、太陽光発電設備等を導入した認定低炭素住宅の住宅ローン減税、自己居住用の住宅に太陽光発電設備等を設置した場合、通常よりも最大10万円を控除する省エネリフォーム税制などPPA普及を促進するための様々な政策を進めています。

■PPAモデル導入時の留意点

もちろん、契約である以上メリットだけではなくPPAモデル導入時には下記のような留意点があります。

① 譲渡条件などを事前に確認することが重要
PPA契約は一般的に最低でも10年ほどの長期契約になることが多いです。そのため、電力購入の費用や譲渡条件などを導入前にきちんと確認する必要があります。

② 設備交換や処分が自由に出来ない
太陽光発電設備を設置するのは自分の所有地内ですが、太陽光発電設備自体の所有権は契約期間中は他社にあります。そのため、設置したパネルなどを勝手に交換したり、処分を自由に行うことは出来ません。

③ 設備譲渡後のメンテンナンスは自己負担になるケースが多い
メリットでもお伝えした通り、契約期間満了後は基本的に設置した全ての設備は譲渡されます。そのため、それ以降継続して使用すれば使用した電力分の電気料金を支払う必要が無くなるため、その分利益貢献度が高くなります。
しかし、譲渡以降メンテナンスや修理が発生した場合の費用は基本的に自己負担となるため、利益と費用のバランスを見極める必要があります。

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PPAに関連する補助金


こうしたPPAへの需要の高まりに伴い、政府は様々な補助金を用意しています。
ここでは、「PPA活用など再エネ価格低減等を通じた地域の再エネ主力化・レジリエンス強化促進事業(一部 総務省・経済産業省 連携事業)」のうち、「(5)再エネの価格低減に向けた新手法による再エネ導入事業」と「(6)データセンターのゼロエミッション化・レジリエンス強化促進事業」についてご紹介します。

■PPA活用など再エネ価格低減等を通じた地域の再エネ主力化・レジリエンス強化促進事業(一部 総務省・経済産業省 連携事業)
本補助事業は、再エネ、蓄電池の導入及び価格低減促進と調整力の確保等により、再エネ主力化とインフラ強化を同時に向上させることを目的としています。
オンサイトPPAによる再エネ・蓄電池の導入や、需要家側の運転制御による需給バランスの調整を想定しており、地域内再エネ活用モデル構築や再エネ主力化に向けた需要家側の運転制御設備等導入促進事業など、6つの事業を令和2年度から令和6年度にかけて実施予定です。

■PPA活用など再エネ価格低減等を通じた地域の再エネ主力化・レジリエンス強化促進事業のうち、(4)ストレージパリティの達成に向けた太陽光発電設備等の価格低減促進事業
太陽光の欠点の一つとして、太陽が出ていない日や時間帯は発電できないという点が挙げられます。本事業は太陽光発電設備と蓄電池を組み合わせたシステムへの支援により、「蓄電池を導入しないよりも蓄電池を導入したほうが経済的メリットがある状態(=ストレージパリティ)」の達成と災害時のインフラ向上を目指す事業です。
例えば、企業などの需要家の屋根や敷地に発電事業者が太陽光パネルと蓄電池を設置することで、企業は電気利用料を支払う代わりに、RE100などへの報告に活用できるほか、災害時などにも緊急用電源として使用することができます。
本補助事業では設備費用の一部が発電事業者に還元される仕組みです。そして初期コストが抑えられた発電事業者は、サービス料金の低減等を通じて需要家に還元する事が期待されています。

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■PPA活用など再エネ価格低減等を通じた地域の再エネ主力化・レジリエンス強化促進事業のうち、(5)再エネの価格低減に向けた新手法による再エネ導入事業
本補助事業では、再エネ主力化に向けて、再エネ設備を低価格で導入・供給できるように支援する事業です。
具体的には、オフサイトコーポレートPPAにより、太陽光発電による電力を供給する事業者に対して、価格構造や個人情報を除く契約に係る情報を匿名で公表することを条件に、設備など導入支援を行うなどをし、再エネの価格低減の促進などが挙げられます。

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まとめ


自家消費型太陽光発電への注目とともに新たに誕生したPPAについて、誕生の社会的背景などを踏まえながら導入時のメリット、留意点などをご紹介しました。
PPAを扱う電力サービス会社は既に多数存在していますので、導入をお考えの方はサービス内容等を比較した上で導入を考えてみてはいかがでしょうか。

(出典)
パリ協定に基づく成長戦略 としての長期戦略|環境省
https://www.env.go.jp/press/111781.pdf
なっとく!再生可能エネルギー 固定価格買取制度とは|資源エネルギー庁
https://www.enecho.meti.go.jp/category/saving_and_new/saiene/kaitori/surcharge.html
企業会計、開示、CSR政策|経済産業省
https://www.meti.go.jp/policy/economy/keiei_innovation/kigyoukaikei/
PPA活用など再エネ価格低減等を通じた地域の再エネ主力化・レジリエンス強化促進事業
(一部 総務省・経済産業省 連携事業)
https://www.env.go.jp/earth/earth/ondanka/energy-taisakutokubetsu-kaikeir03/matr03-02.pdf
今後の再生可能エネルギー政策について|資源エネルギー庁
https://www.meti.go.jp/shingikai/enecho/denryoku_gas/saisei_kano/pdf/040_01_00.pdf

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