ネガワット取引とは
ネガワット取引とは、アグリゲーター※等との事前の契約に基づき、電気のピーク需要のタイミングで節電を行う、インセンティブ型の下げデマンドレスポンス※(以下DR)のことを指します。アグリゲーター等との契約により、事業者だけでなく一般家庭の需要家もVPP※・DRに参加することができます。また、需要家はこの取組に参加することにより、報酬を手にすることも可能になります。
※アグリゲーター:需要家側エネルギーリソースや分散型エネルギーリソースを統合制御し、VPPやDRからエネルギーサービスを提供する事業者
※デマンドレスポンス(ディマンドリスポンス):需要家側エネルギーリソースの保有者もしくは第三者が、そのエネルギーリソースを制御することで、電力需要パターンを変化させること
※VPP:バーチャルパワープラント(Virtual Power Plant)の略。需要家側エネルギーリソース、電力系統に直接接続されている発電設備、蓄電設備の保有者もしくは第三者が、そのエネルギーリソースを制御(需要家側エネルギーリソースからの逆潮流も含む)することで、発電所と同等の機能を提供すること
(出典:資源エネルギー庁|バーチャルパワープラント(VPP)・デマンドレスポンス(DR)とは)
■デマンドリスポンスについて
ネガワット取引について説明する前に、理解しておくべきことが「デマンドレスポンス(DR)」です。デマンドレスポンスとは、簡潔に説明すると、「電気の需要量を賢く制御すること」で、需要家側エネルギーリソースの保有者もしくは第三者が、そのエネルギーリソースを制御することで、電力需要パターンを変化させることを指します。
電力は、他の一般的な商品とは異なり、生産と消費が同時に行われるという性質上、貯蔵が出来ない※ため、電力の需要量と供給量を常に一致させる必要があります。しかし電気の使用量は、季節や時間帯によって変動するため、需要と供給のバランスを取ることが難しい場合があります。従来は発電所の発電量を調整することによって、需要調整をしていましたが、そうすると、電力需要のピーク時にしか稼働しない電源が存在する等、その非効率性が課題でした。
そこで誕生したのが、需要のピークが発生しそうなタイミングで、皆が協力して一斉に需要量を抑制したり、逆に増やしたりするなどして電気の需要量を賢く制御するデマンドレスポンスです。
デマンドレリスポンスには、大きく分けて電気の需要量を増やす「上げDR」、逆に電気の需要量を減らす「下げDR」そして電気の需要量を小刻みに増やしたり減らしたりする「上げ下げDR」の3つがありますが、ネガワット取引はこの「下げDR(需要量を減らす)」にあたります。
※厳密には蓄電池等で電力貯蔵は可能であるが、蓄電池からの放電を電力の生産、蓄電池への蓄電を電力の消費と捉えれば、広義では需給を一致させる必要があると言える。
(出典:資源エネルギー庁|デマンドレスポンス(ネガワット取引)の 活用に向けた取組み)
(出典:経済産業省|デマンドレスポンス (ネガワット取引)ハンドブック)
■アグリゲーター等の役割
アグリゲーター等は、事業者や需要家との契約の流れをコントロールする、いわば司令塔のような役割を担っています。具体的には下記のような役割で、需要家を束ね、状況に応じて指示を出します。
(出典:資源エネルギー庁|バーチャルパワープラント(VPP)・デマンドレスポンス (DR)とは)
■ネガワット取引の類型
ネガワット取引は、その目的・用途によって、以下のように区分されています。
※計画値同時同量:需給バランスを保つため、小売電気事業者(または発電契約者)が、30分ごとに需要計画(または発電計画)と需要実績(または発電実績)を一致させるよう調整を行う制度
※調整力:周波数制御・需給バランス調整に必要となる電源のこと。調整力の調達は、供給区域の一般送配電事業者が担っており、多くの電源等への参加機会の公平性確保、調達コストの透明性・適切性の確保の観点から、公募により行われている。
(出典:資源エネルギー庁|バーチャルパワープラント(VPP)・デマンドレスポンス (DR)とは)
ネガワット取引の流れ
ネガワット取引とはどのような仕組みになっているのでしょうか。ここでは、具体的な取引の流れを3つに分けてご紹介します。
① まず前提として、電力会社・アグリゲーター間、アグリゲーター・需要家間において、あらかじめ電力需要の抑制に関する契約を締結します。
② 次に、電力会社からアグリゲーターに需要抑制を依頼し、アグリゲーターは需要家に対して需要抑制要請を依頼します。契約によっては、需要設備の遠隔制御等により自動で需要抑制がなされる場合もあります。
③ この際、アグリゲーターは電力会社から、需要家はアグリゲーターから対価を得ます。
(出典:資源エネルギー庁|デマンドレスポンス(ネガワット取引)の 活用に向けた取組み)
ネガワット取引需要家のメリットと報酬の種類
需要家がネガワット取引によりアグリゲーター等からの依頼に基づいて需要を抑制することで得られるメリットには、もちろん電力料金の低減がありますが、それに加えて以下2種類の報酬※を得ることができます。
① kW報酬
下げDRは、契約で決められた時期・時間帯であれば、何時でもDR発動の可能性があるため、需要家は、いつ発動されても対応出来る体制を整えておく必要があります。
そのため、実際の発動の有無に関わらず、需要抑制可能な容量(kW)に従って報酬が支払われます。
② kWh報酬
下げDRによって実際に削減された電力量(kWh)に従って報酬が支払われます。
※報酬は、アグリゲーター等との需要家間の契約により決定
(出典:資源エネルギー庁|バーチャルパワープラント(VPP)・デマンドレスポンス (DR)とは)
ネガワット取引の国内事例
最後に、国内の実際の事例を使ってメリットや課題をご紹介します。
■メリット
① 店舗・事務所
インセンティブは省エネと違い、目に見える報酬だと実感する。
② 病院
中間期に停止していたコージェネレーションシステムを下げDR対応のために有効活用できた。
③ 福祉施設
先進的な取組に参加することで、効率的な電力システムの構築や、低炭素社会の実現に貢献できた。
■課題
① 化学工場
高価な設備を新規導入すると、ネガワット取引の報酬のみでは十分な収支を得られないことがある。
② 鉄鋼業
納期と機器停止の調整が難しい場合がある。
③ 冷凍倉庫
冬場になると冷凍機が停止している事が多く需要制御が困難な場合がある。
こうした課題に対しては、例えば蓄電池についてはその高い制御性を活かし、自家消費などとのマルチユースを検討したり、生産計画について事前検証をしっかりと行う、需要家ごとの状況をアグリゲーターがポートフォリオの中で調整する、などで解決できることがあります。
(出典:経済産業省|デマンドレスポンス (ネガワット取引)ハンドブック)
まとめ
電気は、一般家庭、企業を問わず日常生活を送るうえで欠かせないものです。
ネガワット取引によって節電と電気料金の低減を同時に行なうことが出来ますので、ネガワット取引について初めて知った方も既に取引をお考えの方も是非この機会に検討してみてはいかがでしょうか。
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