日本のエネルギーマネジメントシステムの課題に対応しうる分散型エネルギーとは?

ビジネス関連
2020年9月29日

「分散型エネルギー」という言葉をご存じでしょうか。あまり聞き慣れない言葉ではありますが、将来的に重要なエネルギーシステムとして注目されています。今回は、現在の日本が抱えるエネルギーマネジメントシステムの課題に対応しうる分散型エネルギーシステムについてご紹介します。

目次

【目次】

分散型エネルギーの分類

分散型エネルギーシステム誕生の背景

■エネルギーマネジメントシステムの変革

 
分散型エネルギーシステムの活用事例

まとめ

分散型エネルギーの分類


分散型エネルギーとは、比較的小規模で地域内に分散しているエネルギーの総称を指します。リソースは大きく①電気をつくる創エネ、②電気を貯める蓄エネ、③電気を効率良く使う省エネ・制御系の3つに分けられます。

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更に、その利用形態についても①分散型エネルギーが設置された施設内で利用するケース(自産自消)、②分散型エネルギーの近接地で使用されるケース(面的利用)、③FIT制度(固定価格買取制度)の売電等により系統ネットワーク※を通じ遠隔地で利用されるケースがあります。

※系統ネットワーク:電力について発電から始まり送電、変電、配電を経て、最終的に電力を消費する需要家に至るまでを構成するシステム全体。

(出典:資源エネルギー庁|分散型エネルギーについて)

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分散型エネルギーシステム誕生の背景


従来は、需要家から離れた場所に大型の発電所を建設することで、経済性の優れる大規模電源・大規模送電による一方向の供給を行う大規模集中型のエネルギーシステムが主流でした。これに対し、分散型エネルギーシステムは、需要家の比較的近く、または地域に分散するかたちで需要を満たすだけの規模の発電設備をつくって電力を供給するシステムです。

今後は、この分散型エネルギーと従来の大規模電源が共存した、電気・熱を双方向に融通する供給が主流となると言われています。では、なぜ従来の方法と対照的な分散型エネルギーシステムが誕生したのでしょうか。一つは、従来の大規模集中型エネルギーシステムの課題として、エネルギー利用率の低さや需要地と供給地が離れていることによる、送配電による損失が生まれること等がありました。そしてもう一つが「エネルギーマネジメントシステムの変革」です。ここではこのエネルギーマネジメントの変革についてご紹介します。

■エネルギーマネジメントシステムの変革

2015年に採択されたパリ協定を契機に、脱炭素化社会実現に向けて世界各国で様々な取組が行われています。パリ協定締約国である日本でも、従来の電力需給構造に革新的な変化を及ぼす可能性の高い、いくつかの流れが起こっています。

① 太陽光発電コストの急激な低下
FIT制度 により、参入へのハードルが低く、開発のリードタイムが短い太陽光発電は急速に拡大し、太陽光パネル(モジュール)費用を含むシステム費用も急速に低減しています。

② デジタル技術の発展
IoT、AI、ビッグデータといった、新たなデジタル技術の進展が予想される中、エネルギー関連分野では、AI、IoTを用いた需給予測の高度化や発電所運転の最適化、デマンドレスポンス※やVPP※による分散型電力のアグリゲート・最適制御等、多様な可能性が期待されています。

※デマンドレスポンス:需要家側エネルギーリソースの保有者もしくは第三者が、そのエネルギーリソースを制御することで、電力需要パターンを変化させることです。
※VPP:需要家側エネルギーリソース、電力系統に直接接続されている発電設備、蓄電設備の保有者もしくは第三者が、そのエネルギーリソースを制御(需要家側エネルギーリソースからの逆潮流も含む)することで、発電所と同等の機能を提供することです。

③ 地域新電力の出現
電力自由化に伴い、地方自治体が主体となって「地域新電力」を設立する取組が出てきています。

④ 再生可能エネルギーを求める需要家とこれに応える動き
先述したパリ協定を契機に、世界的にESG投資が拡大、事業者の低炭素・脱炭素化へのニーズは非常に高まっており、これに対して太陽光発電などの「再生可能エネルギーの付加価値」の需要も高まっています。

⑤ 多発する自然災害を踏まえた電力供給システムの強靭化(レジリエンスの向上)
地震や台風などの度重なる自然災害により、「多様な発電主体による電源の分散化」による災害時、緊急時のレジリエンスへの期待が高まっています。

(出典:資源エネルギー庁|分散型エネルギープラットフォーム)

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分散型エネルギーシステムの活用事例


実際に分散型エネルギーシステムはどのように活用されているのでしょうか。ここではいくつかの活用事例をご紹介します。

① 大規模停電時の分散型エネルギーの活用
住宅用太陽光発電の多くは、停電時に自立運転を行う機能が備わっています。
自立運転機能付きの太陽光発電 とエネファーム等の家庭用コジェネを併設した住宅においては、電気と熱両方の供給が可能です。実際に、北海道胆振東部地震後、自立運転機能等の利用により、停電時においても電力を継続して利用できた家庭が約85%あったという調査結果も出ています。

(出典:資源エネルギー庁|分散型エネルギーリソースの最適活用に向けた取組)

② 大口需要家の活用方法
大企業や大型の商業施設など電力を多く使用する大口需要家では、オンサイトに設置された再生可能エネルギー 電源による自家消費が可能です。また、同時に優先制御によってオフサイト(敷地外または需要地から一定の距離を置いた場所)に設置された再生可能エネルギー電源による供給も可能です。

(出典:資源エネルギー庁|分散型エネルギープラットフォームの開催について)

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③ 災害時における地域のエネルギー安定供給
地域の再生可能エネルギーと自営線・系統配電線を活用することで、災害時にもエネルギーの安定供給が可能になります。
例えば、宮城県大衡村の「F-グリッド」というエネルギー供給システムでは、災害等により大規模停電の供給が困難な状況になっても、太陽光発電とコジェネを非常用電源とし、自営線によりエリア内の電力供給を行える上に、既存の配電線を活用して役場まで電力を供給出来ます。

(出典:資源エネルギー庁|分散型エネルギーリソースの最適活用に向けた取組)

まとめ


いかがでしたでしょうか。
電力は、私たちの生活に無くてはならないものであり、特に地震や台風など災害の多い日本では電力の供給が止まってしまうリスクも多く抱えています。
また、世界情勢は日々変化しており、従来の発電方法とは異なる環境に配慮した電源の確保も将来的に必須になることでしょう。この記事を参考に、是非積極的な分散型エネルギーの活用を考えてみてはいかがでしょうか。

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