※この記事は2021年3月3日に公開した記事ですが、文言やデータ、その他の部分も追記・更新して2024年1月31日に公開しました。
キャップアンドトレード制度とは
キャップアンドトレード制度の仕組みとは
キャップアンドトレード制度とは、「国内排出量取引制度」とも呼ばれる温室効果ガスの排出量取引制度の一つで、企業に排出枠(限度=キャップ)を設け、その排出枠(余剰排出量や不足排出量)を取引(トレード)する制度です。単純に排出量を規制するのではなく、余剰した排出枠を売買することにより、排出削減に努力している企業ほどメリットがあるシステムになっています。
キャップアンドトレード制度の歴史とは
キャップアンドトレード制度は、2000年以降ヨーロッパ、欧米諸国を中心に導入されはじめました。日本では2010年4月に国内で初めて東京都が開始し、その後2011年に埼玉県が開始しました。東京都キャップアンドトレード制度は、2010~2014年度の第1期、2015~2019年度の第2期を経て、現在第3期目を迎えています。
キャップアンドトレード制度のメリットとは
キャップアンドトレード制度のメリットをわかりやすく解説
キャップアンドトレード制度には以下のようなメリットがあります。
まず、個々の企業にキャップを設定することで、努力した企業に利がある公明正大なルールの下、排出削減の確実な実施を担保することです。自主的に排出削減に取り組めない、もしくは取り組んでも決められた排出枠内に抑えることができない企業は、他の企業から余剰枠を買い取ることになります。そのため中長期的な排出削減に向けて、努力する企業が得をする公平で透明なルールを構築しています。
次に、排出枠(トレード等)を認めることにより、柔軟性ある義務履行が可能になることです。事業者は、自らの努力で削減するほかに、排出枠の取引等を義務の達成に活用できるため、履行手段の多様性、柔軟性が高いといわれています。また、排出枠の取引により、景気動向等に応じた活動量の変化にも対応可能です。
キャップアンドトレード制度で期待できることとは
炭素への価格付けを通じて、経済効率的に排出削減を促進する効果が期待できます。出来る限り費用を抑えた排出削減の取り組みが効率的に行われることで、社会全体の効率的な排出削減に繋がります。また、例えば使用時や処分時に温室効果ガスを排出しない製品や、より効率的な排出削減技術への需要が高まり、経済社会システム全体の低炭素化と温暖化対策が自然に促進できます。
日本のキャップアンドトレード制度の現状と問題点は
東京都のキャップアンドトレード制度とは
東京都キャップアンドトレード制度の対象となる事業所は、年間のエネルギー使用量(原油換算)が1,500kL以上のオフィスビル、工場等の大規模事業所で、これまで8%~17%の削減義務が設けられ、未達成の場合は、「義務不足量×1.3倍」の削減を求められる等の措置がなされてきました。しかし、第2期からは、「低炭素な電気事業者」から電気などを購入した場合は義務履行に利用できるほか、都が認定するCO₂排出係数の低い電力・熱を調達した場合に、需要側にインセンティブとして削減量を付与する仕組みを導入するなど、義務履行を促進する体制が整えられています。
対象事業所 | ・年間のエネルギー使用量(原油換算)が1,500kL以上の事業所(約1,200事業所) |
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削減計画期間 |
・第一期:2010~2014年度(履行期間 2016年9月末) |
削減義務率 |
・第一期:オフィスビル等 8%、工場等 6% ◆病院、データセンター等の削減義務率の緩和 |
基準排出量 | ・(原則)2002年度から2007年度までの連続3か年度平均 |
検証 | ・毎年度の排出量の報告等に、第三者機関による検証を義務付け |
推進体制 | ・統括管理者、技術管理者の選任義務 |
低炭素電力等の選択 | ・第二期:「低炭素な電気事業者」から電気等を購入した場合、義務履行に利用できる仕組みの公表等 |
不遵守時の措置 | ・削減義務未達成の場合「義務不足量×1.3倍」の削減命令 ⇒命令違反の場合、罰金、違反事実の公表等 |
また、体制・設備・運用の取り組みが優良な事業所は「トップレベル事業所」に認定され、認定事業所になると、削減率が1/2(又は3/4)に緩和される等のメリットが得られます。
キャップアンドトレードとクレジットの取引価格
キャップアンドトレード制度の主な履行手段には下記の3つがあります。
また、省エネの推進に加え、再生可能エネルギーの利用拡大の促進も期待できるとして、再生可能エネルギーによるCO₂削減効果を削減義務の履行に活用できる仕組みになっています。
- 1) 自らで削減
高効率なエネルギー消費設備の導入等により燃料・熱・電気の使用量を削減したり、低炭素電力・熱の供給事業者から電力を供給してもらう 等が挙げられます。
また、自らの事業所内に設置した再エネ発電設備を自家消費した場合※、排出量の算定において削減効果を「1.5倍」にして排出量から減らすことができます。※再エネクレジット等により当該自家消費分の環境価値を他人に移転する場合を除く
2) 排出量取引
クレジット等を活用して義務履行する方法です。削減義務量を超えて削減した場合にその超過分を取引できるほか、都や県が独自に発行するクレジットを活用できる場合もあります。また、再生可能エネルギー※の環境価値を「再エネクレジット」として利用できます。※太陽光(熱)、風力、地熱、水力(1,000kW以下)、バイオマス(バイオマス比率が95%以上のものに限る。黒液を除く。)
3) バンキング
超過削減量やオフセットクレジット等を次の期間に繰り越して、削減義務の不足量に充当したり、他の企業との排出量取引に利用する仕組みです。再生可能エネルギーや再エネクレジットの利用については、取り扱いに長けている電力会社もあり、今後の需要の高まりに伴い市場の拡大が見込まれます。 - (出典:東京都|キャップ&トレード制度における再エネ推進の方向性について)
- (出典:東京都|温室効果ガス排出総量削減義務と排出量取引制度(キャップ&トレード制度)に関する改正事項 キャップアンドトレード制度は、環境問題への迅速な対応が求められる中、温室効果ガス等の排出削減を確実に担保することと、排出の少ないソリューション需要の拡大促進、低炭素技術の開発・進化に繋がるとして期待が高まっています。一方で、割り当て基準などのルールの構築が難しいほか、事業に際し行政が深く関与することもあり、行政に多額の費用が掛かる可能性等、課題もあります。 また、2023年10月からは、東京証券取引所にカーボン・クレジット市場が開設されました。排出量取引制度を導入した市場として創設されたもので、2026年度からの本格稼働が予定されています。 2024年1月17日までのクレジットの売買状況を見ると、約定値段の加重平均は省エネルギーが1681円、再生可能エネルギー(電力)が3045円、再生可能エネルギー(熱)が2282円、J-クレジット森林が8095円、J-VER(未移行)森林が8450円となっています。 キャップアンドトレード制度や、カーボン・クレジット市場は、運営しながら出てきた課題を解決しながら、今後も拡大していくのではないでしょうか。
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