※この記事は、2021年3月24日に公開した記事ですが、文言やデータ、その他の部分も追記‧更新して2022年2月28日に再度公開しました。
エネルギー供給強靱化法とは
エネルギー供給強靭化法とは、正式名称を「強靱かつ持続可能な電気供給体制の確立を図るための電気事業法等の一部を改正する法律」といい、自然災害の頻発、国際エネルギー情勢の緊迫化、電気供給を巡る環境変化(再エネの主力電源化)等を踏まえ、災害時の迅速な電力の復旧、送配電網への円滑な投資、再生可能エネルギー導入拡大のための措置等を通じて、強靭かつ持続可能な電気の供給体制を確保するため、電気事業法などの一部を改正する法律です。
電気事業法とは、その名の通り電気事業などに関するルールを定めた法律ですが、エネルギー供給強靭化法はこの電気事業法の他に、固定価格買取制度(FIT)について定めた法律であることからFIT法とも呼ばれる「再エネ特措法※」、海外での資源開発を担う独立行政法人石油天然ガス・金属機構について、その役割や事業内容等を定めた「JOGMEC法※」の改正も含まれています。
※再エネ特措法:電気事業者による再生可能エネルギー電気の調達に関する特別措置法
※JOGMEC法:独立行政法人石油天然ガス・金属鉱物資源機構法
(出典:「法制度」の観点から考える、電力のレジリエンス ①法改正の狙いと意味|資源エネルギー庁)
法改正が行われた背景
上記にあげた3つの法律の改正が一度に行われた背景には、日本の電力インフラ・システムが抱える課題があります。
■自然災害の甚大化と被災範囲の広域化
まず一つ目が、近年の自然災害の甚大化と被災範囲の広域化です。
元々日本は地震や台風等の自然災害が頻繁に発生しやすく、その度にインフラの整備、構築がなされてきました。しかし、近年これらの自然災害は甚大化しており、それによって被災の範囲も広域化しています。
実際に、2018年の北海道胆振東部地震では、電力インフラ・システムが被災したことで北海道全域が停電(ブラックアウト)する事態となりました。また、同年の台風21号・24号、2019年の台風15号・19号の発生時には、電柱や家屋が倒壊したこと等により長期間の停電が発生する等甚大な被害に繋がりました。
今後、同等もしくはこれを超える規模の大きな自然災害が発生する可能性は十分にあり、大規模災害に対応し得る更に強い電力インフラ・システムの早急な構築が求められています。
(出典:「法制度」の観点から考える、電力のレジリエンス ①法改正の狙いと意味|資源エネルギー庁)
■地政学的リスクとエネルギー事情の変化
二つ目が、地政学的リスクとエネルギー事情の変化です。「地政学的リスク」とは、地理的な位置関係によって起こる政治的、社会的リスクのことです。
日本で主に利用されている石油・石炭・天然ガス(LNG)などのエネルギー資源は、その殆どを海外からの輸入に頼っており、国内のエネルギー自給率は11.2%(2020年度)と他国と比べ低い状況です。
海外に依存するということは、地政学的なリスクも高まるということです。例えば石油は、サウジアラビアやアラブ首長国連邦などの中東地域に依存していますが、中東情勢は常に変化しており、安定的な供給が約束されているわけではありません。
またその一方で、世界のエネルギー事情も変化しています。
IEAが発行している2019年版の「World Energy Outlook」によると、中国やインドをはじめとする新興国では、エネルギー利用が経済成長とともに増加しています。また、2000年後半の「シェール革命」以降、アメリカは産油国としての地位を堅固なものとし、世界の市場、貿易フロー、エネルギー安全保障の再構築に影響を与える等、世界におけるエネルギー需要と供給の構造が以前とは異なってきています。
更に、2020年に発生した新型コロナウイルス(Covid-19)のパンデミックは、今も尚、終息の兆しを見せず、近年のエネルギー分野で最も大きな混乱を引き起こしたといっても過言ではありません。IEAも2020年版のWorld Evergy Outlookで新型コロナウイルスの経済・社会的影響について言及しており、パンデミックが長引き不況が深刻化した場合には、減少傾向にある世界のエネルギー需要の回復が更に遅れる可能性等も示唆しています。こうした地政学的リスクは、電力などのエネルギー源である資源の供給網に大きく影響を与えるため、供給網の強靭化に優先的に取り組む必要があります。
(出典:「法制度」の観点から考える、電力のレジリエンス ①法改正の狙いと意味|資源エネルギー庁)
(出典:World Energy Outlook 2019 エグゼクティブサマリー|IEA)
(出典:World Energy Outlook 2020 エグゼクティブサマリー|IEA)
■再生可能エネルギーの主力電源化
三つ目が、再生可能エネルギーの主力電源化です。
これについては、日本のエネルギー政策指針で2018年に発表された「第5次エネルギー基本計画」において、主力電源化を目指すことが提言されました。また、2020年10月には「2050年カーボンニュートラル」が宣言され、1年後の2021年10月に最新版となる第6次エネルギー基本計画が閣議決定されました。第6次エネルギー基本計画では、特に電力部門において再生可能エネルギーや原子力などを活用し、2050年カーボンニュートラル達成に向けて2030年までに着実に脱炭素化を進めるといった内容になっています。
特に再生可能エネルギーについては、3E+Sを前提に、引き続き主力電源化を徹底し、私たち国民の負担の抑制と地域との共生を図りながら、最大限の導入を促すとしています。
また再生可能エネルギーは、カーボンニュートラルの実現に向けたCO₂削減だけでなく、エネルギー自給率の向上や分散型エネルギーシステム(電源が分散して設置され連携している状態)の拡大にも役立ちます。
しかしながら、再生可能エネルギーは日本において十分に普及しているとはいえず、従来の石油や石炭等の化石燃料が主要なエネルギー源となっています。再生可能エネルギーの普及には、再生可能エネルギーの「発電コストの削減」や「電力市場への統合」、再エネ発電設備を安全に設置・運用するための「事業規律の策定」、「電力系統の整備」等様々な課題を解決する必要があり、今回のエネルギー供給強靭化法はこれらの課題解決を促進させる役割も担っています。
(出典:「法制度」の観点から考える、電力のレジリエンス①法改正の狙いと意味|資源エネルギー庁)
法改正によって変わること
エネルギー供給強靱化法の改正によって、具体的に何が変わるのでしょうか。
先述の通りエネルギー供給強靭化法は、複数の法律を改正するものですが、この記事ではその中でも主とされる電気事業法の改正によって変わる事を解説します。
電気事業法には主に、「①災害時の連携強化」「②送配電網の強靭化」「③災害に強い分散型電力システムの構築」の3つの改正ポイントがあります。
1つ目の改正ポイントとして、まず送配電事業者に対して「災害時連携計画」の策定の義務化が求められるようになります。過去、災害が起きた時に停電などの復旧が遅れた際、地域自治体や自衛隊との連携がスムーズに取れなかったケースがありましたが、改正により事前に連携計画を策定する事が義務付けられました。その他、災害の甚大化に伴う復旧作業の長期化や早期復旧を優先するための費用を予め積み立てておき、いざ災害が発生した際に、被災地域の送配電事業者に対して交付する制度の創設などがなされました。
2つ目として、広域的な系統整備を推進する「電力広域機関」に対して、「将来を見据えた広域系整備計画策定義務」を課し、従来の系統設備の増強の要請があってから対応するプル型系統整備から、送電網整備の増強要請がなされる前に、計画的に対応ができるプッシュ型系統整備に方針転換がなされました。
3つ目として、災害に強い分散型電力システムを推進するために、地域において分散小型電源等を含む配電網を運営しつつ、有事には独立したネットワークとして運用する事が可能になりました。同時に配電事業の新規参入を促すために、「配電事業ライセンス」を導入し、配電網などの設置にかかるコストの抑制などが取り組まれています。
詳しくは「エネルギー供給強靭化法によって何が変わった?改正ポイントについて徹底解説」 の記事も是非ご覧ください。
まとめ
いかがでしたでしょうか。次のコラムでは、改正された「電気事業法」「再エネ特措法」「JOGMEC法」について、それぞれの改正のポイントをご紹介します。
是非、ご確認ください。
エネルギー供給強靭化法によって何が変わった?改正ポイントについて徹底解説
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