再生可能エネルギー主力電源化に向けて「出力制御」について考える(前編)

ビジネス関連
2021年5月18日

近年の導入量の増加に伴い今や身近な電源となりつつある再生可能エネルギーですが、今後の主力電源化に向けて系統に接続するための接続コストが高かったり、そもそも系統に空きがなく接続出来ない等の問題が発生しています。今回は、電力系統の需給バランスをコントロールするための「出力制御」と系統に接続できない問題を解決するための取組について2回に分けてご紹介します。

目次

【目次】

出力制御とは

■需給バランスによる出力制御

■送電線の容量による出力制御

出力制御の仕組み

■優先給電ルール

■先着優先ルール

■指定電気事業者制度の廃止

再生可能エネルギー導入拡大に重要な出力制御量の低減に向けた今後の対応

まとめ

出力制御とは


出力制御とは、電力会社が発電設備の発電量を抑えて電気の供給をコントロールすることを指します。 出力制御には2種類あり、一つ目が需給バランスによるもの、二つ目が送電線の容量(電力系統の安定性を含む)によるものです。ここでは、それぞれの違いを見ていきます。

■需給バランスによる出力制御

需給バランスによる出力制御は、電気が需要以上に発電されて余った時に発生します。
近年、再生可能エネルギーの導入拡大に伴い、需要が少ない時期には火力発電の出力を抑制したり、地域間連系線を活用するなどして需給バランスを調整した上で、なお電気が余る可能性がある場合には再生可能エネルギーの出力制御を行っています。

■送電線の容量による出力制御

送電線に流すことができる電気の量には上限があり、上限を超過して電源を接続した場合には、日々の運用において上限を超える恐れがあり、電源の出力制御が必要になります。これを「送電線の容量による出力制御」と呼びます。

(出典:なるほど!グリッド|資源エネルギー庁)

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出力制御の仕組み


出力制御自体はどのような仕組みで需要と供給のバランスを取っているのでしょうか。
ここでは、「優先給電ルール」「先着優先ルール」「指定電気事業者の廃止」の3つの観点からみていきます。

■優先給電ルール

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優先給電ルールとは、電気の発電量がエリアの需要量を上回る場合に、火力発電などの出力抑制、揚水発電※のくみ上げ運転による需要創出、地域間連系線を活用した他エリアへの送電など需要と供給のバランスを一致させるための手順や条件を法令で定めたものです。
これらの対応策をとってもなお、発電量が需要量を上回る場合には、バイオマス発電の出力制御の後に、太陽光発電、風力発電などの出力制御を行います。
この順番で制御を行うのには理由があり、各発電の発電コストや技術的特性が関係しています。水力・原子力・地熱発電などは「長期固定電源」と呼ばれ、出力を短時間で細かく調整することが難しく、一度出力を落とすとすぐに元に戻せないため、最後に抑制するとされています。

※揚水発電:夜間・休日昼間などの需要の少ない時間帯に他の発電所の余剰電力で下部貯水池(下池)から上部貯水池(上池ダム)へ水を汲み上げておき、需要が増加する時に、上池ダムから下池へ水を導き落とすことで発電する水力発電方式

(出典:なるほど!グリッド|資源エネルギー庁)

■先着優先ルール

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発電事業者は、事業を始める際、発電した電気を送るための系統容量を確保するために
一般送配電事業者に接続契約を申し込む必要があります。この時、公平性や透明性を保つため、全電源において接続契約申し込み順に系統容量を確保するのですが、この考え方を「先着優先ルール」といいます。

先着優先ルールが無ければ、事前に系統容量を確保していた事業者がいざ運転を開始したときに後から接続した事業者によって系統容量が不足し送電できなくなる等、事業予見性に影響を及ぼす恐れがあります。
よって、空き容量が無い系統に新規の接続希望があった場合、必要な補強工事が完了するまでは連系できない仕組みになっています。

海外の一部の国では、再生可能エネルギーの接続申し込みがあれば、他の電源を追い抜いて送電線に接続できる「優先接続ルール」を採用しています。再生可能エネルギーの導入拡大のために、日本もこのルールを適用すればいいという意見もありますが、これには再生可能エネルギーの変動に応じて必要な火力発電を調整するための設備投資や維持が課題となる可能性があります。また、島国である日本は隣国と電気の輸出入を増減させることで需給バランスを調整するなどといった他国の調整力を活用することが難しいという点もあります。実際、同じ島国で日本より再生可能エネルギーの導入が進んでいる他の国々でも優先接続ルールは採用しておらず、実現にはハードルが高いのが現状です。

(出典:なるほど!グリッド|資源エネルギー庁)

(出典:なぜ、「再エネが送電線につなげない」事態が起きるのか?再エネの主力電源化に向けて|資源エネルギー庁)

■指定電気事業者制度の廃止

太陽光や風力による発電は、予め年間の出力制御に上限を設けることで事業予見性が高まります。これに伴いFIT制度(固定価格買取制度)の下定められたのが、年間30日(もしくは太陽光360時間、風力720時間)の上限内であれば系統連系を可能とする「30日等出力制御枠」です。この範囲で契約した事業者は年間30日(もしくは太陽光360時間、風力720時間)は無補償で出力制御に応じることが義務付けられました。

また、仮にこの「30日等出力制御枠」を超過して太陽光や風力の連系が見込まれるエリアでは、出力制御の上限を超えて制御を行わなければ、需給バランスが崩れる恐れがあります。
このようなエリアでも、再生可能エネルギー設備を追加で受け入れられるよう、経産省によって指定された電力会社を「指定電気事業者」と呼び、指定電気事業者とその後契約を交わした発電事業者は、無制限・無保証で出力制御に応じることが求められました。

しかしながら、近年全国的に太陽光発電や風力発電の導入が進んでいること、将来連系する事業者の負担軽減などを鑑み、2021年4月1日以降、指定電気事業者制度は廃止されました。これにより、東京、中部、関西を含む全エリアにおいて、「無期限・無補償ルール」が適用されています。

(出典:なるほど!グリッド|資源エネルギー庁)

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再生可能エネルギー導入拡大に重要な出力制御量の低減に向けた今後の対応


再生可能エネルギーは、環境意識の高まりに伴い従来の石炭や天然ガスなどに代わる新たな主力エネルギーとして重要視されています。その再生可能エネルギーの導入拡大に向けて重要視されているのが①事業者間の公平性の確保と、②出力制御のオンライン化を通じた出力制御量の低減を図ることです。
➀については、500kW未満の太陽光・風力のうち(10kW未満の太陽光を除く)、これまで当面は出力制御の対象外とされてきた発電設備についても出力制御の対象とし、30日等無保証ルールを適用することが適切とされました。また、➁については、オンライン制御はオフライン(手動)制御に比べ柔軟な運用が可能かつ、出力制御量の低減も見込まれることから、オフライン事業者が本来行うべき出力制御をオンライン事業者が代理で行い、代理制御分の対価を受け取る「経済的出力制御(オンライン代理制御)」という仕組みが検討されています。
両者ともに近い将来の実用化に向けて取組が進められています。

(出典:なるほど!グリッド|資源エネルギー庁)

まとめ


再生可能エネルギーの主力電源化に向けて更なる導入拡大を実現するためには、出力制御の予見性をいかに高められるかが重要です。今回は、基本となる「出力制御とは何か」というところを重点的にご紹介しました。
後編では、従来の系統接続の考え方を見直し、系統の「隙間」に注目してコスト低減と系統に接続出来ない問題を解決する「日本版コネクト&マネージ」という考え方についてご紹介します。

後編のコラムはこちら
再生可能エネルギー主力電源化に向けて「出力制御」について考える(後編)

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