前回のコラム再生可能エネルギー主力電源化に向けて「出力制御」について考える(前編) では、再生可能エネルギーの主力電源化に向けて①系統の接続コストが高い問題や、②そもそも系統の空き容量の不足により、接続出来ない問題について、電力系統の需給バランスをコントロールする出力制御の仕組み、これらの問題を解決するための今後の取組を交えてご紹介しました。今回は、これまでの系統接続・運用の考え方を見直し、再エネ導入を更に進めていくための「日本版コネクト&マネージ」について詳しく見ていきます。
日本版コネクト&マネージとは
日本版コネクト&マネージとは、前述の問題を解決するために、系統の「隙間」に注目し、既存系統を最大限活用する取組です。 これは、イギリスなど一部の国で既に取られていた一定の条件下で、系統の増強工事が完了する前に系統への接続を認める制度「コネクト&マネージ」を日本でも取り入れたもので、 系統の増強が不要となるケースを増やし、低コストかつ短期間で新たな電源を接続することが可能になります。
日本版コネクト&マネージは大きく次の3つの手法から成り立っています。
(出典:系統制約の克服(「日本版コネクト&マネージ」)と次世代ネットワーク形成について|資源エネルギー庁)
想定潮流の合理化
想定潮流の合理化とは、実際の利用状態に近い考え方で想定した潮流に基づき、系統の空き容量を算定する手法です。 従来は、接続されている電源が全てフルに稼働することを前提に容量が確保されていましたが、実際そのようなケースは殆どなく、過去のデータに基づいてより緻密に空き容量を算定することを目的としています。この手法は2018年4月から導入されており、広域機関によるとその効果として、全国で590万kWの空き容量の拡大※が見込まれています。
※最上位電圧の変電所単位で評価したものであり、全ての系統の効果を詳細に評価したものではない。
(出典:系統制約の克服(「日本版コネクト&マネージ」)と次世代ネットワーク形成について|資源エネルギー庁)
N-1電制
N-1(エヌマイナスイチ)電制は緊急時用に空けておいた容量の一部を、事故などが起こった際に瞬時に発電を制限(遮断)し、平常時にも活用できるようにする仕組みです。多くの送電線は、2回線で構成されており、仮に1回線の送電線が故障しても、もう一方の送電線を確保しておくことで停電を防ぐことが出来るようになっています。しかしながら、いつ起こるか分からない災害・事故のために常に流せる電気の容量を制限することは、効率が良いとは言えません。 そこで採用されたのがこのN-1電制です。これはかなり高度な系統管理であり、一般的には採用されていない日本独自の手法です。N-1電制は、2018年10月から一部導入されており、広域機関によるとこの取組によって全国で4,040万kWの容量について接続可能※なポテンシャルがあるとの試算が出されています。
N-1電制導入の効果は大きいものの、現在導入されているのは系統運用の確実性の観点から大きな電源(特別高圧以上)にしかつけることができない暫定適用になっています。そのため、今後他の大きな電源に電制装置を取り付けて、より規模の小さな電源も緊急時の容量を活用できる手法(本格適用)の導入を2022年度中に開始することが検討されており、電力広域的運営推進機関を中心に進められています。
※最上位電圧の変電所単位で評価したものであり、全ての系統の効果を詳細に評価したものではない。
※速報値であり、数値が変わる場合がある。
(出典:系統制約の克服(「日本版コネクト&マネージ」)と次世代ネットワーク形成について|資源エネルギー庁)
ノンファーム型接続
これまで日本では、系統の容量を接続契約に申し込んだ順に確保する先着優先ルールを採用しており、接続した電源は平常時であれば、最大出力の範囲内で自由に送電をすることが可能でした。これを「ファーム型接続」といいます。
これに対しあらかじめ系統の容量を確保せず、系統の容量に空きがあるときに、再エネなどの新規電源を接続する手法が「ノンファーム型接続」です。
ノンファーム型接続の導入に向けては、現行の電力取引制度をはじめとする諸制度、ルールとの整合性、システムの構築など多くの課題があり、また再生可能エネルギー電源が多数接続されている配電系統を含めた網羅的なノンファーム型接続の仕組みは海外に例がないことから、かなり時間を要することが予測されていました。
しかしながら、2019年には東京電力パワーグリッドの千葉・鹿島エリアで試行的に運用が始められ、2021年1月から全国への展開が始められています。
これにより、まずは全国の空き容量のない基幹系統※において、原則として「ノンファーム型接続」が適用されています。発電所を計画する際、その地点でノンファーム型接続ができるかについては、一般送配電事業者が公開する「空き容量マップ」などで確認できます。
※各一般送配電事業者の上位 2 電圧(ただし、沖縄電力については、132kV とする)の送変電などの設備(変圧器については、一次電圧により判断)
(出典:再エネをもっと増やすため、「系統」へのつなぎ方を変える|資源エネルギー庁)
まとめ
再生可能エネルギー主力電源化に向けて出力制御の仕組み、既存系統を最大限活用する様々な取組を2回に分けてご紹介しました。
系統の形成には、日本の歴史的、地理的な背景が大きく影響しています。
系統制約などの問題は、当面の間は今回ご紹介した取組を続けていくことで解消していくとしても、10年、20年後にはまた新たな課題や系統投資が必要になることも見込まれます。
電力ネットワークは今後ますます私たちの生活に無くてはならないものになるため、常に後世を見据え、計画的に技術を高めていくことが重要です。
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