【目次】
G20世界のCO₂排出量の推移
CCO₂排出量はどうやって計測するのか
CO₂排出量をデータで分析する
生産から廃棄までのライフサイクルで考えるCO₂排出量
CO₂排出量削減のアプローチはさまざま
※この記事は、2021年5月27日に公開した記事ですが、文言やデータ、その他の部分も追記‧更新して2022年12月30日に再度公開しました。
世界のCO₂排出量の推移
世界のCO₂排出量削減を推進する「パリ協定」
2016年に発効された「パリ協定」が2020年から本格的に運用開始となり、日本を含む世界中の国で具体的な取組が求められています。
パリ協定が長期目標として掲げているのが「世界の平均気温上昇を、産業革命以前に比べて2℃より低くたもち、1.5℃に抑える努力をすること」ですが、気温を上昇させる主な原因は温室効果ガス(GHG:Greenhouse Gas)であることから、「21世紀後半でのGHG排出を実質ゼロにすること」もあわせて目標としています。
CO₂排出量の国別ランキングは
このGHGの中で圧倒的に排出量が多いのがCO₂です。総務省統計局「世界の統計2022」によると、CO₂排出量が多い国のランキングは、2019年は次のようになっています。
1位 中華人民共和国
2位 アメリカ合衆国
3位 インド
4位 ロシア
5位 日本
6位 ドイツ
7位 大韓民国
8位 カナダ
9位 メキシコ
10位 ブラジル
G20各国のCO₂排出量について、エネルギーを原因とするものに絞ってみてみると、日本、アメリカなどの先進国が減少傾向にあるのに対し、東南アジアや中東などの新興国は増加傾向にあります。
(出典:CO2の排出量、どうやって測る?~“先進国vs新興国”|資源エネルギー庁)
CO₂排出量はどうやって計測するのか
「生産ベース」で計測するCO₂排出量
前項で特に新興国についてCO₂排出量の増加傾向にあるとお伝えしましたが、そもそもCO₂の排出量はどのように測られているのでしょうか。
CO₂排出量の推計方法には「生産ベース」、「消費ベース」の2つの考え方があります。
以下にそれぞれ解説していきます。
現在国別のCO₂排出量は、「生産ベースCO₂排出」と呼ばれる推計を用いて測っています。これは、計器などを使い直接空中のCO₂を測定するのではなく、ガソリンや電気などの「使用量(活動量)」に「排出係数」をかけ算して求める手法です。
つまり、「石油を燃焼する」などといった「実際にCO₂排出が起こった国で排出量をカウントする」ということです。
ここで一つ懸念されるのが、この生産ベースCO₂排出による推計が実情よりも過剰に「先進国は減少傾向・新興国は増加傾向」を演出する面があるという点です。
近年、各企業においてコスト低下などの観点から一つの製品をパーツごとに分割しさまざまな国でつくる「グローバル・バリューチェーン」の考え方が急速に広がっています。特に製作時に大量のエネルギーを必要とする「炭素集約製品」は、エネルギー価格が高い国から安い国へ工場の移転が進みました。
これにより、エネルギー価格の安い新興国は自国外に輸出されるモノの生産過程で排出されるCO₂排出量も、自国の排出量としてカウントされてしまいます。
結果的に、統計上、工場が撤退した国のCO₂排出量は減少する一方で、移転先の国では排出量が増加するという現象が起こっています。
(出典:CO2の排出量、どうやって測る?~“先進国vs新興国”|資源エネルギー庁)
「消費ベース」で計測するCO₂排出量
製品やサービスの恩恵を得る消費国のために使われるエネルギーをそのエネルギーの生産国に計上するのは実態を正しく反映しているとはいえません。
そこで、経済協力開発機構(OECD)などが念頭に置くべきだと提言しているのが、「消費ベースCO₂排出量」です。これは、その製品が生産された際に排出されたCO2を最終的に消費される国の排出量としてカウントすれば、エネルギー使用の実態が明確になるという新たな考え方で、現行のCO₂排出計測方法と比較すると、下記のようになります。
このように、CO₂排出量の統計方法は「生産ベース」よりも「消費ベース」で考える方が、より実態に即した数字を算出することができます。
しかし、計測方法を消費ベースCO₂排出量に変更するには精微なデータが必要になることから、統計に5年はかかるといわれており、現状、直近のCO₂排出量の推移を追うには従来の「生産ベースCO₂排出量」を引き続き採用していくとされています。
(出典:CO2の排出量、どうやって測る?~“先進国vs新興国”|資源エネルギー庁)
CO₂排出量をデータで分析する
CO₂排出量を計算する数式
CO₂排出削減の取組について、日本は2020年10月、2050年までに温室効果ガス排出を全体でゼロにする、「2050年カーボンニュートラル」を目指すことを宣言しました。また、環境と経済成長の好循環を促す「グリーン社会の実現」にも最大限取り組む姿勢を見せています。
一般的に経済の成長とCO₂排出量は比例していると言われていますが、経済成長を続けつつ、CO₂を削減するにはどうすれば良いのでしょうか。
そのためにはまず、CO₂排出の要因を明確にすることが重要です。ここでヒントとなるのが、「茅恒等式」と呼ばれる以下の数式です。
この式は東京大学名誉教授の茅陽一氏が提示したもので、IPCC(気候変動に関する政府間パネル)でも参照されるなど、世界的に知られています。
この考え方によると、「CO₂の排出総量」は、「①エネルギー消費当たりのCO₂排出量」、「②経済活動のエネルギー効率」、「③人口1人当たりの経済水準」、「④人口」のかけ算で表すことができます。
経済成長のためにGDP(③×④)を減らすわけにはいきません。GDPの成長を確保しつつCO₂排出量削減を進めるには、①「エネルギー供給の低炭素化」や②「省エネルギー」を図ることが必要であることが分かります。
日本はCO₂排出量が減少もさらなる取り組み必要
環境省の発表では、2019年度の国内の温室効果ガス総排出量は2014年度以降6年連続で減少しており、実質GDP当たりでみても2013年度以降7年連続減少、温室効果ガス の総排出量は2013年度比-14%削減されています。
これには、再生可能エネルギーの普及に伴い電力由来のCO₂排出量が減少したことや、LED、次世代自動車の普及に伴う省エネの促進などが挙げられます。
順調に削減できている状況ですが、カーボンニュートラルやグリーン社会の実現には、エネルギー供給の低炭素化や再生可能エネルギーの拡大など、更なるCO₂削減への取組が重要です。
(出典:「CO2排出量」を考える上でおさえておきたい2つの視点|資源エネルギー庁)
(出典:2019 年度(令和元年度)の温室効果ガス排出量(速報値)<概要>|環境省)
生産から廃棄までのライフサイクルで考えるCO₂排出量
電気を生み出すことによるCO₂排出量は
もうひとつ、CO₂排出量を見る上で重要な「ライフサイクルCO₂」という考え方をご存知でしょうか。CO₂は、モノが工場などで製造されている時だけではなく、原材料を集めたり精製したりする時や、消費者によってモノが使用されている時、モノが廃棄される時にも排出されます。
この、モノが生まれてから廃棄される一連の流れで排出されるCO₂をすべて含めて考える、というのが「ライフサイクルCO₂」です。
ライフサイクルCO₂の考え方を、エネルギーのCO₂排出量に当てはめるとどうなるでしょうか。発電所が稼働しているときだけでなく、発電所が建設されてから廃棄されるまで、また燃料が採掘されてから輸送・加工というプロセスをたどり、最後に廃棄物として処理されるまで、CO₂は常に排出され続けていることが分かります。
電気の技術分野別で見たライフサイクルCO₂排出量は
ここで日本の各電源についてのライフサイクルCO₂排出量を示したデータを見てみると、石炭・石油・LNG(天然ガス)を使った火力発電のライフサイクルCO₂は、ほかの電源と比べて高いことがわかります。
これに対し、太陽光、風力などの再生可能エネルギーは、発電所の建設や廃棄などの過程でCO₂を排出するものの、発電時には排出しません。日本はエネルギー資源の多くを輸入に頼っていますが、ここでは海外から運搬する際に排出されるCO₂も考慮にいれており、それを含めてもライフサイクルCO₂は低く抑えられていることがわかります。
しかしながら、ライフサイクルCO₂が高い火力発電は、天候によって変動する再生可能エネルギーの不安定さを補うための“調整役”として現時点で欠かせない存在なのも事実です。このため、資源エネルギー庁では、化石燃料から排出されるCO₂を“資源”として捉え、これを分離・回収して再利用する「カーボンリサイクル」の取組をすすめています。
(出典:「CO2排出量」を考える上でおさえておきたい2つの視点|資源エネルギー庁)
CO₂排出量削減のアプローチはさまざま
CO₂排出量を減らすとひと言でいってもそのアプローチ方法にはさまざまあり、企業も多角的なアプローチでCO₂を削減していかなければなりません。
ご紹介したCO₂排出の考え方が環境経営を行う上で参考になれば幸いです。
また、他のコラムでは、環境経営を促進する様々な取り組みをご紹介しています。
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