【目次】
なぜカーボンニュートラルを目指すのか
どのようにカーボンニュートラルを実現するのか
カーボンニュートラル実現に向けた取組
■地球温暖化対策計画の見直し
■温対法の改正
■カーボンプライシングの検討
■再生可能エネルギー主力電源化の徹底
まとめ
※この記事は、2021年6月25日に公開した記事ですが、文言やデータ、その他の部分も追記‧更新して2022年3月29日に再度公開しました。
カーボンニュートラルとは
カーボンニュートラルとは、大気中に排出される二酸化炭素をはじめとする温室効果ガス(GHG)から森林などによる吸収量を差し引いた温室効果ガスが実質ゼロである状態を指します。
日本でも菅総理が2020年10月におこなった所信表明演説で、このカーボンニュートラルを2050年までに実現すると宣言し話題になりました。
また菅首相は「二酸化炭素の排出」ではなく、「温室効果ガスの排出」というワードを用い、日本が目指す「カーボンニュートラル」は、CO₂だけに限らず、メタン、N2O(一酸化二窒素)、フロンガスを含む「温室効果ガス」を対象にすると述べています。
出典(「カーボンニュートラル」って何ですか?(前編)~いつ、誰が実現するの?|資源エネルギー庁)
なぜカーボンニュートラルを目指すのか
そもそも、なぜ日本はカーボンニュートラルの実現を目指しているのでしょうか?
それは、温室効果ガスの排出を全体としてゼロにすることが地球温暖化への対応となるだけでなく、次のような理由もあるためです。
2021年1月20日時点で、世界では日本を含む144以上の国と地域が2050年までのカーボンニュートラルの実現を表明しています 。 また、国だけでなく企業においてもカーボンニュートラルを目指す動きが進んでおり、その中には日本企業も多く含まれています。
このように世界的に「2050年カーボンニュートラル」という目標を掲げ、投資をする流れも加速しており、地球温暖化への対応に加えてビジネスの潮流も変化しています。
出典(「カーボンニュートラル」って何ですか?(前編)~いつ、誰が実現するの?)
出典(カーボンニュートラルって何ですか?(後編)~なぜ日本は実現を目指しているの?)
どのようにカーボンニュートラルを実現するのか
ではこのカーボンニュートラルを実現するために具体的にどういった対策が求められるのでしょうか。
エネルギー起源CO₂の排出量を考える際の指標として、「エネルギー消費量」と「CO₂排出原単位」というものがあります。
「エネルギー消費量」は、単純にエネルギーをどれだけ使用するのかという意味です。しかし、エネルギーの使用には電力として消費するものもあれば、熱や燃料として利用する非電力でのエネルギー消費もあります。
これに対し「CO₂排出原単位」は、燃料を燃焼したり電気や熱を使用したりするなど、ある一定量のエネルギーを使用する際に、どのくらいのCO₂が排出されるかを示すものです。
燃料を燃焼したり電気や熱を使用したりすることで排出される「エネルギー起源CO₂」は、以下の式で表すことができます。
このようにCO₂排出原単位と、エネルギー消費量をかけ合わせたものが「エネルギー起源CO₂の排出量」です。カーボンニュートラルを達成するためには、この「CO₂排出原単位」と「エネルギー消費量」を共に低減していく必要があります。
出典(カーボンニュートラルって何ですか?(後編)~なぜ日本は実現を目指しているの?)
カーボンニュートラル実現に向けた取組
実際に「CO₂排出原単位」と「エネルギー消費量」を減らしカーボンニュートラルを実現するために、日本はどのような取り組みを行っているのでしょうか。
■地球温暖化対策計画の見直し
2020年に行われた42回目の地球温暖化対策推進本部で、菅首相は「地球温暖化対策計画」「エネルギー基本計画」「パリ協定に基づく成長戦略としての長期戦略」の3つの見直しを加速させるよう指示しました。 それぞれについて簡単に説明します。
地球温暖化対策計画とは、地球温暖化対策法に基づいて温室効果ガスの排出抑制・吸収の目標などについて記載した日本で唯一の地球温暖化に関する総合計画です。
エネルギー基本計画は、エネルギー需給に関する政策について、中長期的な基本方針を示したものです。
「パリ協定に基づく成長戦略としての長期戦略」は、COP21で採択されたパリ協定において長期的な温室効果ガスの低排出型の発展のための戦略を作成することが定められており、それに基づき、2019年に閣議決定されました。 具体的には「脱炭素社会の実現」を最終到達点とし、それを今世紀後半の出来るだけ早期に実現することを目指すとともに、2050年までに温室効果ガスの80%削減に取り組むことが掲げられています。
これら3つの計画について、現在環境省と経産省の合同会合で、一部の見直しを含めて気候変動対策について議論が進められています。
(出典:新しくなった「エネルギー基本計画」、2050年に向けたエネルギー政策とは?|資源エネルギー庁)
■温対法の改正
温対法とは、正式名称を「地球温暖化対策の推進に関する法律」といい、その名の通り国、地方公共団体、事業者、国民が一体となって地球温暖化対策に取り組むための枠組みを定めた法律です。 環境省はこの度の「2050年カーボンニュートラル宣言」を踏まえ今後の方向性について議論を重ね、2021年3月にこの温対法の一部を改正する法律案を閣議決定しました。2050年までのカーボンニュートラルの実現を法律に明記することで、脱炭素に向けた取組・投資やイノベーションを加速させるとともに、地域の再生可能エネルギーを活用した脱炭素化の取組や企業の脱炭素経営の促進を図る狙いがあります。
■カーボンプライシングの検討
カーボンプライシングとは、「炭素への価格付け」と訳され、その名の通り排出されるCO₂(二酸化炭素:カーボン)に価格付け(プライシング)する温暖化対策の一つです。
日本全体ではまだ未導入ですが、環境省と経済産業省が連携して、成長戦略に資するカーボンプライシングの検討が行われています。
また、経産省ではカーボンプライシングの検討も含めた「世界全体でのカーボンニュートラル実現のための経済的手法等のあり方に関する研究会」を開催しています。
■再生可能エネルギー主力電源化の徹底
日本における温室効果ガス排出量割合をみてみると、二酸化炭素が全体の90%以上を占めており、 この二酸化炭素排出量(直接排出量)は、約10億トンで、その内およそ4割をエネルギー転換部門が占めています。(2020年度時点)
こうした状況から、エネルギー分野の取組が2050カーボンニュートラルを実現するうえで重要となりますが、日本の産業構造や自然状況などを踏まえても、取組は簡単なものではありません。
そこで、政府は第6次エネルギー基本計画で、3E+Sを前提に、再生可能エネルギーの主力電源化を徹底するとしました。
具体的な取組例としては、FIT・FIP制度の活用などでのコストの低減や市場への統合、建物の側面や強度の弱い屋根にも設置可能な次世代太陽電池などの技術開発の推進、ノンファーム型接続などを活用した系統制約の克服などが挙げられます。
(出典:カーボンプライシング(炭素への価格付け)の全体像|環境省)
まとめ
2050年までにカーボンニュートラルを実現することは簡単な課題ではありません。実現のためにはまずは2030年までに、どれだけの具体的な取り組みが進むかが重要となってきます。
再生可能エネルギーの普及や環境問題への対応策が拡大し、官民が一体となって取り組みが進むことを期待します。
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