GRESBとは
GRESBとは、Global Real Estate Sustainability Benchmarkの略称で、PRIを主導した欧州の主要年金グループを中心に2009年に創設された不動産会社・ファンドのESG配慮を評価する制度のことです。
GRESBは「GRESBリアルエステイト」「GRESBインフラストラクチャー」「GRESBリアルエステイトデット」の3種類の評価システムに分かれており、対象となる不動産会社・ファンドによって異なります。
ここでは、GRESBリアルエステイトとGRESBインフラストラクチャーの2つについて詳しくみていきます。
■GRESBリアルエステイト
GRESBリアルエステイトとは、不動産の既存投資物件や新規開発・大規模改修プロジェクトでの取組みを評価する制度で、最も広く使われています。創設は2009年で、2015年までは「GRESB調査」とも呼ばれていました。
企業のESG配慮を評価する枠組みはCDPなど様々なものが存在しますが、不動産セクターに特化したものとしては、GRESBリアルエステイトが唯一のものと言えます。
投資家が主体となり創設、運営しているため、評価項目は投資家目線での重要事項をカバーしており、多くの機関投資家が不動産投資の判断やモニタリングに活用しています。
GRESBリアルエステイト評価では、賃貸用不動産の運用に関わる「スタンディング・インベストメント・ベンチマーク」と新規開発・大規模改修プロジェクトに関わる「ディベロップメント・ベンチマーク」の2つが取得可能です。
評価項目はESG情報の開示状況をはじめ、サステイナビリティに関する社内体制や方針、テナントとの環境・社会配慮の協働など多岐にわたります。これらのスコアはマネジメント・コンポーネント(MC)」「パフォーマンス・コンポーネント(PC)※1にプロットされて総合的に評価されます。
※1 新規開発・大規模改修の場合は、既存投資物件と異なりパフォーマンス評価が難しい為、PCの代わりに「ディベロップメント・コンポーネント(DC:Development Component)」という指標が使用されます。
また、MC・PC両方で50%以上の高評価を得ると、「グリーンスター」の称号を得ることができ、総合スコアのグローバル順位によって上位20%以内には「5スター」と呼ばれる最高位が与えられます。
2020年の「GRESBリアルエステイト評価」には、グローバルでは1,229者、日本からは85者(46社のJ-REITを含む上場参加者53者、私募リート・私募不動産ファンドを含む非上場参加者32者(社数ベースでは18社))が参加し、評価を受けました。
特に、J-REIT市場での参加率は92.0%(時価総額ベース、2020年11月16日時点)に上るなど、需要の高まりが注目されています。
■GRESBインフラストラクチャー
「GRESBインフラストラクチャー」は、2016年に始まった制度です。
先に始まったGRESBリアルエステイト評価が、不動産会社・ファンドを対象としているのに対し、この制度はインフラファンドや、ファンドの投資先となるインフラ資産や企業を対象としているのが特徴です。
具体的には、インフラファンドを対象とする「ファンド評価 (Fund Assessment)」と、ファンドの投資先となるインフラ資産やインフラ企業を対象とする「アセット評価 (Asset Assessment)」の2種類から構成されており、主にインフラファンドの投資プロセスやインフラ会社・オペレータの運用を評価します。
GRESBインフラストラクチャーは近年参加者数が伸びており、グローバルで118ファンド、426アセット(2019年は107ファンド、393アセット)が回答しました。日本では、1ファンド、4アセットが参加しています。(2020年現在)
(出典:ゼブ・ポータル|環境省)
(出典:CSRデザイン環境投資顧問株式会社)
(出典:不動産のESG投資~GRESB調査と環境不動産の展望~|CSRデザイン環境投資顧問株式会社)
GRESBが注目される背景
GRESBが注目されている背景には何があるのでしょうか。
ここでは、ESG投資・環境不動産・REITの3つのキーワードを基にご紹介します。
■ESG投資の潮流
ESG投資は従来の財務情報に加えて、環境・社会・ガバナンスの要素も組み込んだ投資判断のことで、世界的な潮流になっていますが、このESG投資の波が不動産投資信託(REIT)や不動産投資においても加速しています。
不動産は、もともと環境や社会に関する課題解決に貢献できるポテンシャルが大きく、日本の抱える諸課題に対応するとともに、中長期的なリターンを確保できる可能性があるとして期待されていました。
近年J-REIT市場及び国内不動産市場の価値と規模を高めるためにも、ESGはますます重要視されており、その一つとして「環境不動産」が注目されています。
■環境不動産
環境不動産とは、その名の通り、一般的な耐震などの性能に加え、環境性能を有した「安全・安心・環境にも配慮した」不動産を指します。
建築・不動産セクターからのCO₂排出の割合は決して少なくありません。2019年度時点で日本の二酸化炭素排出量の約3割を占めており、環境性能の高い不動産が注目されています。
環境不動産は、専門の評価機関によって評価され、CASBEEやBELS等を代表とする評価基準によって認証されます。
設計の段階で環境への配慮が行われていたり、ライフサイクルCO₂の排出量が一定未満であるといったことが評価対象の一部になっています。
国土交通省主催の委員会で発表されたデータによると、環境認証を取得している物件は取得していない物件に比べ新規成約賃料が4.4%高いという結果が出ており、ESG投資を重視する企業等をテナントに誘致することで、物件の稼働率向上や賃料の上昇も期待できます。
■REITと脱炭素市場
REIT(リート:Real Estate Investment Trust)は、不動産投資信託の略称であり、通称「J-REIT」とも呼ばれますが、国内のREIT市場の中では約7割の売買シェアを海外の投資家が持っているといわれます。ESG投資への注目が世界的に高まる中、GRESBなどの国際的なESG評価基準は海外投資家にとって重要な指標であり、これが国内REIT市場の脱炭素の流れも後押ししている一つの理由と言われています。
(出典:我が国不動産へのESG投資の促進に向けて|国土交通省)
(出典:不動産のESG投資~GRESB調査と環境不動産の展望~|CSRデザイン環境投資顧問株式会社)
(出典:4-4 日本の部門別二酸化炭素排出量(2019年度)|JCCCA)
まとめ
いかがでしたでしょうか。
ESG投資が日本においても大きな潮流になるなか、GRESBは「不動産のESG投資」の指標として、日本を含む世界各国で普及しています。それに伴い国内でも環境不動産普及に向けた動きが活発化しており、GRESBの需要は今後ますます高まる見込みです。
不動産事業者の皆さまはもちろん、今後不動産投資を考えている方々も、是非チェックしてみてください。
次回はGRESBの評価項目の一つにもなっている「グリーンビルディング認証」について詳しく解説したいと思います。
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