二国間クレジット制度とは?温暖化対策で注目されている理由

ビジネス関連
2021年11月25日

地球温暖化対策の一つとして始まった「二国間クレジット制度」についてご存知でしょうか。脱炭素の動きが加速する中、各国が連携することで地球規模でのCO₂削減に貢献できる制度として注目が高まっています。二国間クレジット制度について分かりやすくご紹介します。

目次

【目次】

二国間クレジット制度とは

クレジットの仕組み

CDMとの違い

JCMプロジェクトの状況

今後の動向

まとめ

二国間クレジット制度とは


「二国間クレジット制度(Joint Crediting Mechanism、JCM)」(以下、JCM)は、日本の優れた低炭素技術や製品、システム、サービス、インフラを発展途上国などに提供することで、途上国の温室効果ガスの削減など持続可能な開発に貢献し、その成果を二国間で分けあう制度のことです。

JCMによって、温室効果ガスの排出削減や吸収に対する日本の貢献を定量的に評価することが可能になり、日本の排出削減目標の達成に活用することができます。また、地球規模での温室効果ガス排出削減・吸収行動を促進することにより、パリ協定で掲げる、世界の平均気温上昇を産業革命以前に比べて2℃より低く保つという「2℃目標」の達成にも役立ちます。

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(出典: 二国間クレジット制度(Joint Crediting Mechanism(JCM))の最新動向 | 環境省)

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クレジットの仕組み


そもそも「クレジット」とは、温室効果ガスの削減量や吸収量を他の企業や国と取引するために誕生した仕組みです。パリ協定の前身である「京都議定書」では、クリーン開発メカニズム(CDM)というクレジット発行の仕組みがつくられました。
CDMでは、先進国が途上国に自国の技術や資金を提供して温室効果ガス削減プロジェクトなどをおこなう代わりに、そこで得られた温室効果ガスの削減分を「クレジット」として自国の削減目標達成にカウントできるという仕組みになっています。

JCMでは、日本企業がパートナー国の現地企業などと協力して実施したプロジェクトで削減・吸収されたCO₂などの温室効果ガス(GHG)を「クレジット」として取得し、日本の温室効果ガス削減目標の達成に活用できます。

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(出典:「二国間クレジット制度」は日本にも途上国にも地球にもうれしい温暖化対策|資源エネルギー庁)

(出典:温暖化への関心の高まりで、ますます期待が高まる「二国間クレジット制度」|資源エネルギー庁)

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CDMとの違い


JCMはCDMの後に誕生した制度ですが、それぞれどのような違いがあるのでしょうか。

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これは、JCMCDMを比較した表です。一つずつ、見ていきましょう。

■メカニズム全体の管理

CDMでは京都議定書締約国やCDM理事会が全体として一括で管理していたため、当事国同士の調整や、CDMプロジェクトの管理・監視に時間がかかるという課題がありました。
JCMはそれに比べて、基本的に当事者の2カ国が個別に管理するため、より調整しやすく、コストも抑えることができるようになりました。具体的には、日本と各パートナー国で設置した「合同委員会」が、JCMの実施に必要となるルールやガイドラインなどを定めて管理します。

■プロジェクトの対象範囲

CDMではプロジェクトの対象となる範囲が限定的だったのに対しJCMでは、より広くなりました。

例えば今までCDMのプロジェクトとして認められるためには厳しい基準をクリアする必要があった省エネ技術は、JCMによって認められやすくなっています。

■排出削減量の計算

CDMでは、複数の計算式の中から事業者が式を選択して、排出量を計算する必要があります。また、排出量の計測を行うパラメータに不確実な要素がある場合は、予めどのくらいの誤差が出るか等を明確にしておく必要があり、より計算が複雑になります。

JCMでは、あらかじめ用意されているスプレッドシートで、より簡単に計算ができるほか、パラメータに測定できない数値がある場合でも、一時的な数値を使って算定することが可能です。

■プロジェクトの妥当性確認(事前)

CDMでは、指定する「指定運営機関(DOEs)」(32機関)のみが、プロジェクトの妥当性を確認し、このプロジェクトがなければCO₂削減ができないか(「追加性」の証明)等を厳しく判断します。

一方JCMでは、DOEsだけでなく、ISO14065(温室効果ガスに関する妥当性を確認・検証することができる機関に与えられる国際認証)認証を受けた機関(6機関)も実施可能です。また、プロジェクトが客観的に判断することのできる「適格性要件」を満たしていれば、CDMのような「追加性」の証明がなくても認められることがあります。

■プロジェクトの検証(事後)

CDMでは、プロジェクトの妥当性を確認した機関は、基本的に検証に入れません。また、仮にプロジェクトが進んでいたとしても、事前の妥当性の確認と事後の検証は、あくまで別に実行される必要があります。

JCMでは、プロジェクトの妥当性を確認した機関も検証を実施できるため、よりスムーズに検証を行うことができます。また、プロジェクトが進んでいる場合は、妥当性の確認と検証を同時に並行しながら進めることができるので、コストも抑えられます。

このように、CDMでは厳しい判断基準や削減効果の計算方法も複雑といった特徴がありますが、JCMはそれに比べて簡易的、効率的かつ、柔軟なしくみといえるでしょう。

(出典:「二国間クレジット制度」は日本にも途上国にも地球にもうれしい温暖化対策|資源エネルギー庁)

(出典: クリーン開発メカニズム(CDM)の現状と課題 | 日本オペレーションズ・リサーチ学会)

(出典: 二国間クレジット制度(Joint Crediting Mechanism(JCM))の最新動向 | 環境省)

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JCMプロジェクトの状況


日本は、2011年から途上国とJCMに関する協議を始め、現在までに17カ国とパートナー関係を構築しています。資源エネルギー庁が発表している資料によると、現在経産省で実施しているプロジェクトはタイやベトナムなどの東南アジアを中心に世界6カ国に及びます。

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(出典:温暖化への関心の高まりで、ますます期待が高まる「二国間クレジット制度」|資源エネルギー庁)

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今後の動向


政府は、「2030年度までに温室効果ガスの排出を2013年度比46%削減する」という目標を掲げていますが、その実現に向けた取組の一つがJCMの活用促進です。
実際、JCMなどの国際貢献によって、2030年度までの累積で5000万~1億トンの温室効果ガスを排出削減・吸収することを見込んでいます。1億トンという数字は2020年末時点の削減見込み量の5倍以上にあたる数字です。また、官民合わせた事業規模は最大で1兆円程度になるとも言われており、その期待値の高さが伺えます。

こうした流れの背景には、世界的な環境問題や地球温暖化への関心の高まりの他に、JCMが民間企業における温室効果ガス排出削減および自主目標達成にも活用でき、また海外市場の獲得につながる可能性があることも挙げられます。政府だけでなく、民間企業の中でもJCMの積極的な活用への関心は高まりつつあります。

(出典:温暖化への関心の高まりで、ますます期待が高まる「二国間クレジット制度」|資源エネルギー庁)

 

まとめ


いかがでしたでしょうか。
CDMと比較すると、JCMの方が良い面がたくさんありますが、JCMをさらに拡大してくためには、認知度の向上やパートナー国、プロジェクトの規模拡大や資金源の多様化など様々な課題があります。

世界共通の課題である環境問題は国単位で対策を取るだけでなく、各国の連携無くして解決は望めません。JCMなどのクレジット制度が広がることで、取組の輪が広がることが期待されます。

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