【2023年最新】デマンドレスポンスとは?仕組みや課題をわかりやすく解説

ビジネス関連
2021年12月14日

デマンドレスポンスとは、電気の需要をコントロールすることによって、電力の需要と供給のバランスを調整する仕組みです。企業にとっては再エネの普及拡大や電気代の低下など様々なメリットがあります。デマンドレスポンスについて最新動向も含めわかりやすく解説します。

目次

【目次】

デマンドレスポンスとは

デマンドレスポンスの契約の仕組みとは

デマンドレスポンスの最新動向は

デマンドレスポンスのサービスを利用する

※この記事は、2021年12月14日に公開した記事ですが、文言やデータ、その他の部分を2022年7月21日、2023年10月27日に更新したものを公開しました。

デマンドレスポンスとは

デマンドレスポンスはいつから導入された?

デマンドレスポンス(DR)とは、需要家側のエネルギーリソースの保有者もしくは、第三者が、そのエネルギーリソースを制御することで、電力需要をコントロールする仕組みです。

別の言い方をすると、発電所が発電できる電力にゆとりがなくなった時に、消費者側でつかう電力を節電することで、発電容量にゆとりをもたせ、電力の安定供給に貢献する仕組みともいえます。

私たちの生活に欠かせない電力を安定して供給するためには、電力の需給バランスを「同時同量」、つまり電気をつくる量(供給)と電気の消費量(需要)が、同じ時に同じ量になっていなければなりません。この「同時同量」の需給バランスが崩れると、電気の周波数が乱れ、電気を正常に供給することが難しくなり、場合によっては大規模停電などを引き起こす要因になります。2018年9月に北海道全域が停電するいわゆる“ブラックアウト”が発生したのは、この電力需給バランスが崩壊したことが原因といわれています。

この需給バランスの安定を図るために、従来のエネルギー需給システムに加えて新たに誕生したのが、この「デマンドレスポンス」です。

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デマンドレスポンスで期待されることとは

デマンドレスポンス導入の背景には、従来のエネルギー需給システムの課題、 IT技術の革新、省エネ法の改正があります。

1つ目が従来のエネルギー需給システムの課題です。従来は、電力会社が消費者・需要家の電気使用量を予測して、需要に合わせて発電所を稼働させることで、電力の需給バランスを図ってきました。 
 
しかしながら、東日本大震災では、エネルギー供給が制約されたほか、大手電力会社が大規模電源と需要地を系統で繋ぐ従来の「集中型エネルギーシステム」の脆弱性が明らかになりました。

こうした背景から、エネルギー需給システムにおいては、従来の省エネ対策に追加してデマンドレスポンスの重要性が認識されつつあります。

具体的には、デマンドレスポンスで効果的にピークカット※を行うことで、需給ひっ迫の解消に寄与するとともに、非効率な火力発電の焚き増し等が不要となるため、中長期的に効率的な電力システムの構築につながることが期待されています。
スライド1.JPG※ピークカット:最も使用電力の多いピーク時の使用電力を「カット」し、電力の使用量そのものを低減させる仕組み

2つ目がIT技術の革新です。エネルギー需給構造の変化に伴う需要家側のニーズも多様化しています。これに併せて近年IT技術や蓄電技術を中心に、エネルギー需給を細かく制御できる技術革新が進展しており、デマンドレスポンスの導入を後押しする一つの材料となっています。

具体的には、平成23年度から横浜市や北九州市などの国内の4地域で行っているCEMS(地域エネルギー管理システム)や、HEMS等の通信インターフェイスが挙げられます。

3つ目が省エネ法の改正です。東日本大震災後の電力需給ひっ迫を契機に、エネルギー効率の改善や、CO₂を排出する化石燃料の使用の低減など、従来の省エネの強化に加えて、電力需給バランスを意識したエネルギー管理を行うことの重要性が強く認識されました。

これに伴い、2021年4月に施行された改正省エネ法では、「電気の需要の平準化」の概念が追加されました。

具体的には、全国一律で7~9月(夏季)、及び12月~3月(冬期)の8時~22時の間で、節電や、電気を使用する時間帯をずらす(シフト)など電気需要平準化に資する措置を、労働環境や従業員への負担を配慮しつつ行うことが明記されています。

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デマンドレスポンスの契約の仕組みとは

デマンドレスポンスの上げDRと下げDRとは

デマンドレスポンスは、需要制御のパターンによって需要を抑制する「下げDR」と逆に需要を増やす「上げDR」の2つに分けられます。

下げDRは、例えば電気のピーク需要のタイミングで需要機器の出力を落とし、需給バランスを図ります。
上げDRは、例えば再生可能エネルギーの過剰出力分を需要機器の稼働によって消費することや、蓄電池を充電することにより吸収します。

※需要制御のイメージ

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またこの他に、需要制御の方法によって「電気料金型」と「インセンティブ型」という2つの区分にも分けられます。なお、インセンティブ型の下げDRは「ネガワット取引」とも呼ばれます。

デマンドレスポンスの取引と契約の仕組みとは

電気料金型デマンドレスポンスとは、ピーク需要時に電気料金を値上げするなど多様な電気料金を設定することで、各家庭や事業者に対して電力需要の抑制を促す仕組みです。

電気料金の種類には、時間帯に応じて異なる料金を課す「時間帯別料金(TOU)」と、需給がひっ迫しそうなタイミングで、事前通知をした上で高い料金を課す「ピーク別料金(CPP)」等があります。

TOUとCPPは実際に導入した地域で効果が報告されており、TOUは2009年度から2012年度まで実施された負荷平準化機器導入効果実証事業において、約10%のピークカットが継続的に可能であることが確認されています。

また、CPPも国内四地域実証事業の結果、約20%のピークカットが継続的に可能であることが確認されています。

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年間のわずかな時間に発生するピーク需要を満たせるように電源が確保されている場合、電気料金型デマンドレスポンスによって、年間のピーク時間帯の電力需要を抑制することで、電源開発にかかる費用を抑えられる可能性があるとしてその効果が期待されています。

また、ピーク時間帯に石油や太陽光発電などコストの高い電源で焚き増しが行われている場合、電気料金型デマンドレスポンスでピーク時間帯の電力需要を抑制することで、コストの高い焚き増しを抑えられる可能性があります。

改正省エネ法によって、電力会社に電気の需要の平準化に資する取り組みとなる料金メニューの公表が促されていることもあり、電力会社の中には季節や時間帯に応じて異なる料金を課す時間帯別料金(TOU)を提供しているところもあります。
また、業務・産業部門においてはこのTOUを採用している需要家の割合が多く、電気料金型デマンドレスポンスは特に対企業において、広く普及しています。

インセンティブ型デマンドレスポンスとは、ネガワット取引とも呼ばれ、電力会社が報奨金などを支払うことで、事業者等に電力需要の抑制を促す仕組みです。
ネガワット取引も、電気料金型デマンドレスポンスと同様に、需要のピークカットによって、電源開発の効率化やコストの高い電源の焚き増しの抑制に寄与します。

電気料金型デマンドレスポンスとの違いは、例えば電力会社と電力需要をコントロールする役割を担うアグリゲーター間の契約に基づき需要抑制の要請を行うため、より確実な需要抑制が見込まれること等があります。

また、ネガワット取引は、需要削減目標未達成の場合に、需要家に対しペナルティを課すことができます。需要抑制量も細かく指定でき、様々な持続時間の需要抑制ができるなど、電気事業者のニーズに合わせた細かい対応が可能です。

しかしながら、ネガワット取引の更なる普及に向けては、取引のルールが未整備であることや、確実性・応答性等を向上させるための方法において未だ発展途上の部分があるなど課題も散見されます。
実ビジネスでのネガワット取引は、これまで新電力をはじめとする一部の電気事業者による取組に留まっていたものの、電力システムの改革が進むにつれ、ネガワット取引の普及も進みつつあるため、これらの課題の早期解決が求められます。

▼ネガワット取引の流れ

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デマンドレスポンスの最新動向は

デマンドレスポンスについての補助金は

日本では、「エネルギー・リソース・アグリケーション・ビジネス検討会」で、上記で挙げたネガワット取引を含めたデマンドレスポンス活用に関する検討の議論が進められています。これらは経済産業省主導で実証が進められていますが、関連テーマ別に動向を見ていきましょう。

経済産業省において、2016年より通信技術から制度面の取り組みまで多岐にわたる要素の検討が進められており、その取り組みの一つとして、ビジネスモデルやサービスに関しての議論が行われています。

例えば、需要家は電気を一方的に供給される側ではなく、需要家自身でエネルギーを創出して消費する事や、蓄電器等を利用して効率的に電気を使うといった新しい需要の考え方が生まれてきています。このような新しい消費の形をビジネスモデルやサービスとしてどのように確立していくかが議論されています。

デマンドレスポンスの制度設計と市場規模、技術に関する動向は、次の通りです。

・ネガワット取引の動向
現在「電力基本政策小委員会」や「電力・ガス取引監視等委員会」においてネガワット取引市場に関する制度設計が進められていますが、「エネルギー・リソース・アグリゲーションビジネス検討会」ではネガワット取引活性化に向けた取引ルールなどの策定の議論がされています。

・調整力市場に関する動向
現在は一般送配電事業者が調整力の確保の役割を担っていますが、2016年10月より公募が実施され、様々な電源が調整力として活用されています。今後は公募結果を踏まえつつ詳細設計がされ、一般送配電事業者が調整力を市場で調達・取引できる環境が整備されていく見通しです。

・VPPに関する動向
エネルギーリソースアグリゲーションに関連して、VPPの技術実証も進められています。
具体的な取り組みとして、経済産業省により「バーチャルパワープラント構築実証事業」が2016年より5年事業として推奨されており、更なる再生可能エネルギーの導入拡大や省エネルギー負荷標準化等が進められています。

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デマンドレスポンスのメリットとデメリット

デマンドレスポンスは、今後の主力電源としても注目され導入が進んでいる再生可能エネルギーの更なる普及にも影響します。

太陽光発電や風力発電が代表的な再生可能エネルギーは、CO₂を排出しない電源としてその環境価値の高さが注目される一方で、日射量や風の強弱など自然の状況に応じて発電量が左右されるため、供給量の制御が難しいという特徴があります。

再生可能エネルギーによる供給量と需要のバランスを取るためには、他の電源の出力を調整することで変動を吸収し、需給を一致させる必要がありますが、今後再生可能エネルギー発電設備の導入が更に進むと、1日の中で供給量が需要量を上回る時間帯が生じる可能性があります。

このとき、これまでであれば出力制御により再生可能エネルギーの発電量を抑制することで需給バランスを維持する方法が考えられますが、デマンドレスポンスが代わりに需要を創出すれば、再生可能エネルギーで発電した電力を他のことに有効活用することができます。

このように、デマンドレスポンスを積極的に活用することで、より多くの再生可能エネルギーの普及に繋がります。

また再生可能エネルギーの普及が広がれば広がるほど、需給バランスを保てるように出力抑制を実施せざるを得なくなる恐れもあり、系統の安定を図る面でもデマンドレスポンスの活躍が期待できます。

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一方で、デメリットを挙げるとすれば、人の意志が関わるために、制御パフォーマンスに関して不確実性を伴う点です。ピークカットに比べて必要な時間や規模の予測が難しい中で、確実に制御パフォーマンスを得られることが求められます。 

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デマンドレスポンスのサービスを利用する

いかがでしたでしょうか。デマンドレスポンスは海外では既にシステム化が進むなど世界でも注目されている取組ですが、国内ではまだこれからといったところです。 
 
とはいえ、エネルギーシステムの変革期を迎えるいま、より多くの企業や事業者に認知され、官民一体となった取組が求められます。気になった方は是非ご自身でも調べてみてください。 
 
エバーグリーンでは、法人のお客さま(特別高圧・高圧)と個人のお客さま(低圧)を対象としたデマンドレスポンスサービスの提供を2023年4月1日から開始しました。当社グループが指定する時間帯に電力のご使用を抑制いただくと、その結果に応じてインセンティブとしてお客さまへ還元いたします。詳しくは、こちらをご覧ください。 
 
エバーグリーンのデマンドレスポンスサービスについて(特別高圧・高圧) 

(出典)
VPP・DRとは|資源エネルギー庁
電気の安定供給のキーワード「電力需給バランス」とは?ゲームで体験してみよう|資源エネルギー庁
ディマンドリスポンスについて~新たな省エネのかたち~|資源エネルギー庁
VPP・DRの意義|資源エネルギー庁
系統強化方策及びデマンドレスポンス等の需要能動化方策の提案とその効果把握 |環境省

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