2050年カーボンニュートラルに向けて知っておきたい、カーボンフリーな次世代エネルギー3選

ビジネス関連
2022年3月2日

2050年カーボンニュートラルが宣言されたことで、ますます重要視される再生可能エネルギー。今回は、カーボンニュートラルに向けて知っておきたい3つの新しいエネルギーについてご紹介します。

目次

【目次】

カーボンフリーなエネルギーの注目が高まる理由


注目されている次世代の新エネルギー

■水素

■アンモニア

■合成燃料

それぞれの活用事例

まとめ

カーボンフリーなエネルギーの注目が高まる理由


CO₂を排出しない、カーボンフリーなエネルギーへの注目が高まっています。
代表的なものでいうと、太陽光発電や風力発電などのいわゆる「再生可能エネルギー(再エネ)」と呼ばれるエネルギーです。

そもそもこうしたカーボンフリーなエネルギーへの注目が高まる背景にあるのが、パリ協定や2050年カーボンニュートラル実現に向けた日本のグリーン成長戦略の存在です。
パリ協定は、歴史上初めて「全ての国が参加する公平な合意」のもと2016年11月に発効された気候変動問題に関する国際的な枠組みで、日本を含む世界190カ国以上の国が参加を表明しています。
この中で、いわゆる2℃目標※が目的に掲げられたことで、一気にCO₂の削減や環境問題への取組が重要視されはじめました。
パリ協定では今世紀後半のできるだけ早期に「脱炭素社会」を実現することを目指しており、ことエネルギーにおいては、再エネ主力電源化やカーボンリサイクルの推進、省エネ、水素社会の実現などが方向性として掲げられています。

このパリ協定によって、脱炭素が世界的な潮流になりましたが、日本においてはもう一つ、カーボンニュートラルを進める上で大きな契機となったものがあります。
それが、「2050年カーボンニュートラル」です。

2050年カーボンニュートラルとは、2020年10月に開催された第42回地球温暖化対策推進本部において、当時の菅総理によって宣言されたもので、「2050年までに大気中に排出される二酸化炭素をはじめとする温室効果ガスから、森林などによる吸収量を差し引き、温室効果ガスの排出を実質ゼロにする」という目標です。

2050年までのカーボンニュートラルの実現は、2021年1月の時点で、日本を含む世界124以上の国と地域が表明しており、気候変動への対応を環境保護という側面だけでなく、成長の機会と捉える動きに変わりつつあります。

企業にとっては、従来の事業運営やビジネスモデルを根本的に変えていく事が求められますが、これを逆に新しい時代を牽引するチャンスと捉え、大胆な投資やイノベーションに取り組むきっかけになります。

こうした背景のもと、日本は2050年の温室効果ガス排出の実質ゼロに向け、2021年10月に閣議決定された第6次エネルギー基本計画において、再エネの主力電源化と水素をはじめとする次世代のエネルギーを活用した新たなイノベーションの追求が重要であると明示しました。

※2℃目標:世界共通の長期目標として、産業革命前からの平均気温の上昇を2℃より十分下方に保持すること。

もっと詳しく
日本が30年後に目指す「カーボンニュートラル」とは?
パリ協定とは?今さら聞けない基本的な考え方や国内の取り組み、ビジネスとの関係をご紹介します。

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注目されている次世代の新エネルギー源


こうしたカーボンニュートラルの実現に寄与し得る、新たなエネルギーとして注目されているのが、「水素」「アンモニア」「合成燃料」の3つのエネルギーです。

■水素

水素は、他の2つのエネルギーと比べて導入が比較的進んでおり、「究極のエネルギー源」となる可能性があるとして特に注目が高まっています。
水素が究極のエネルギー源と言われる理由の一つとして、化石燃料に代替可能なエネルギーとなり得ることが挙げられます。現状、化石燃料の多くを他国からの輸入に依存している日本において、水素をエネルギー源として広く活用できるようになれば、日本のエネルギー自給率の向上に繋がります。また、国際市場の開拓や日本の産業競争力の強化に繋がることも理由として挙げられます。

水素はその製造工程によって「グレー水素」「ブルー水素」「グリーン水素」に分けられます。石炭や天然ガスを用いて生成した水素は「グレー水素」と呼ばれ、製造過程でCO₂が発生します。ここで発生するCO₂を回収/貯留/利用する技術と組み合わせて製造された水素は「ブルー水素」と呼ばれます。そして再エネで作られた電気で電気分解した水素を「グリーン水素」と呼びます。グリーン水素は、CO₂を全く排出しない「カーボンフリー」エネルギーとして活用できる為、水素は環境対策としても高いポテンシャルを持っています 。
以上のことから、水素は日本のエネルギー政策の基本的視点である「安全性を前提とした自給率・経済効率性・環境適合の同時達成(3E+S)」の視点を満たすことが出来るエネルギー源として期待されているのです。

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水素エネルギーについて詳しくはこちら
/column/corporation/20201127_25.html

■アンモニア

アンモニアといって想像されるのが、「刺激臭のある有害な物質」や「畑の肥料」としての用途などでしょうか。実際に、世界全体のアンモニアの用途はその8割が肥料として消費されていますが、残りの2割はメラミン樹脂や合成繊維のナイロンの原料など、工業用として利用されています。

そんなアンモニアの新たな用途として注目されているのが、エネルギー分野でのCO₂削減に役立つ「燃料」としての役割です。

アンモニアは、燃焼してもCO₂を排出しない「カーボンフリー」な物質です。
将来的には、アンモニアだけをエネルギー源とした発電などの技術開発が進められています。直近では石炭火力発電所で使う燃料の内、石炭の比率を下げて、代わりにアンモニアを利用することで、CO₂の排出量の抑制に役立てられることが分かっています。

アンモニアは既に様々な用途で利用されている為、生産や輸送、貯蔵技術が確立しています。つまり、研究開発等に係る初期投資が抑えられるだけでなく、安全性への対策やガイドラインも整備されている事がメリットとして挙げられます。

その一方で、アンモニアの量をどれだけ安定して確保できるかが今後の課題として挙げられています。例えば、国内の主要な石炭火力発電所で、石炭の代わりに20%をアンモニアを燃料として発電する場合、約2,000万tのアンモニアが必要になりますが、これは現在の世界のアンモニア輸出入量とほぼ同じ量です。発電分野のアンモニア利用が一気に増えることによって、供給が不足し価格高騰や肥料の市場にも影響が出るため、アンモニア利用にはまだまだ慎重な姿勢が必要です。
またアンモニアは、燃焼によって大気汚染の原因となる窒素酸化物(NOx)排出するという課題もあります。化石燃料の燃焼でも同様に発生するものではありますが、NOxの排出抑制も重要な課題です。

■合成燃料

合成燃料とは、二酸化炭素と水素を合成して製造される燃料です。
合成燃料がCO₂排出の抑制に期待されている大きな特徴の一つが、発電所や工場などから排出されたCO₂を原料として利用することです。
これらから排出されるCO₂は濃度が高く、回収に適しているとされていますが、将来的には、CO₂濃度が比較的低い大気中のCO₂を、直接分離・回収する技術による合成燃料の製造も検討されており、次世代の脱炭素燃料として注目されています。

また、合成燃料には既存設備を活用できるという大きなメリットもあります。
液体の合成燃料はガソリンや軽油などと同じく「エネルギー密度が高い」という特徴を持っている為、少ない量でも多くのエネルギーに変換することが可能です。

これにより、例えば、エネルギー密度が低い水素では代替できなかったジェット機などの燃料として合成燃料を活用する事などが期待されています。
こうした、水素化や電動化が難しい製品に対して合成燃料が代替として活用できれば、更なるCO₂排出の抑制に繋がります。

合成燃料について詳しくはこちら
/column/corporation/20211015_42.html

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それぞれの活用事例


では、水素、アンモニア、合成燃料はそれぞれ具体的にどのような形で活用されているのでしょうか。いくつかご紹介します。

・水素
水素の活用先で代表的なのが、FCV(燃料電池自動車)やFCバス(燃料電池バス)です。基本的な仕組みは搭載されている燃料電気で水素を使って電気をつくり、自動車の動力にするというもので、フォークリフトなどの産業用車両では実際に水素利用が始まっています。

水素に関わる政策として2017年12月に策定された「水素基本戦略」では、2020年時点で3,800台あるFCVを、2030年で80万台、99台あるFCバスを2030年で1,200台、将来的には更なる技術進歩と低コスト化により、ガソリン車の代替とすることを目指しています。更には、ガソリン車だけでなく大型車両のFC化や、ガソリンスタンドを水素ステーションに代替するなどの将来像も見据えています。

・アンモニア
アンモニアの主な利用先は、発電・産業分野では先に挙げた火力発電での燃料としての活用、輸送分野では船用エンジンや燃料電池などが挙げられます。

火力発電における燃料用途での利用の実現化に向けては、2021年度から国内最大の火力発電会社であるJERAが自社で保有する火力発電所で実証実験を開始しています。

アンモニアは石炭火力発電の代替燃料以外でも活用が期待されており、気体であるアンモニアを直接燃焼させて発生するガスを利用したガスタービン発電や再エネ由来電力で作った水素からアンモニアを合成する実証実験も行われており、成功すればカーボンフリーのアンモニアを使った電力の普及も期待できます。

・合成燃料
合成燃料はその使い勝手の良さから、水素などのエネルギー密度の低いエネルギー源では対応できない製品の代替品として活躍の幅が広がりそうです。
先程ご紹介した航空機などでの活用のほか、船舶や大型乗用車などの燃料としての利用も期待されています。
また、身近なところでいうと、灯油やLPガス、都市ガスを利用した暖房器具の燃料として活用できたり、ボイラー燃料としてもガソリンの代替品として活用することができます。


まとめ


いかがでしたでしょうか。2050年カーボンニュートラルに向けて三者三様の特長を持っているこれらのエネルギーですが、それぞれのメリットを最大限に活かすことで、カーボンニュートラルの達成のみならず、日本のエネルギー自給率の問題解決や産業競争力の強化にも繋がります。これらの次世代エネルギーの活用に今後ますます注目が集まります。

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