グリーントランスフォーメーション(GX)の取り組みと課題は

ビジネス関連
2022年3月31日

カーボンニュートラルの実現に向けて、脱炭素化による経済社会の変革を行うことをグリーントランスフォーメーション(GX)といいます。投資の対象となり得る事業は多岐にわたり、政府は2022年中に今後10年間で官民合わせて150兆円を超える投資を実現するためのロードマップを策定する方針です。今回はグリーントランスフォーメーション(GX)の取り組みと課題についてお伝えします。

目次

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※この記事は、2022年3月31日に公開した記事ですが、文言やデータ、その他の部分も追記‧更新して2022年10月31日に再度公開しました。

グリーントランスフォーメーション(GX)とは


環境問題を先進技術の力で解決するGX

 
GXは、環境破壊や異常気象などが引き起こす災害や、海洋プラスチックごみなどといったさまざまな環境問題を、先進技術の力で解決することです。脱炭素化を目指すことで、経済社会の変革を目指す取り組みともいえます。

GXによって期待されるのは、経済と環境の双方の好循環を生み出すことです。カーボンニュートラルの達成を目指す世界各国で、持続可能な社会の実現を目指すために、GXが進められています。

 2050年のカーボンニュートラル達成とGX

 

日本では2020年10月に、2050年のカーボンニュートラル達成を目指すことを宣言しました。また、2021年4月には2030年度までに2013年度からの温室効果ガスを46%削減することを目指すとともに、更に削減率50%の高みを目指すことを国の方針として位置づけています。

日本が国内でのカーボンニュートラル実現だけでなく、世界全体のカーボンニュートラルにも貢献しながら産業競争力を高めるためには、日本企業が自社以外のステークホルダーも含めた経済社会システム全体の変革をけん引していくことが重要です。

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GXへの関心が高まる理由



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エネルギーを起点とした産業のGX

日本で議論が進められているのは、GXによって産業構造を大幅に転換することです。20225月に経済産業省が発表した、「クリーンエネルギー戦略」の中間整理から、そのポイントを見ていきます。

まず、エネルギーを起点とした産業のGXです。クリーンエネルギーの分野は、国際的な大競争が起きています。この競争を勝ち抜くために、成長が期待される分野において、投資の予見可能性を確保して、大規模な投資を引き出すことを目指しています。

代表的な分野のひとつが、水素・アンモニアです。水素は使用しても二酸化炭素を排出しない次世代のエネルギーとして期待されています。また、水はもちろん、石炭やガスなど多様な資源から作ることができる点も利点です。

アンモニアは、水素を低コストで効率よく輸送・貯蔵することが可能です。また、火力発電の燃料として直接利用することも可能で、燃焼する際に二酸化炭素を排出しない燃料として、温室効果ガスの排出削減に大きな利点があると期待されています。

水素とアンモニアを合成する新たな技術や、水素による発電の実証を進めるほか、エネルギーとして活用する側である運輸部門のインフラ整備や、技術開発などが、重要な戦略として位置付けられています。

産業のエネルギー需要構造の転換

日本の産業界に欠かせないのは、エネルギー需給構造の転換です。徹底した省エネを追求するとともに、二酸化炭素を排出しないエネルギー消費に転換していかなければならないことは産業界全体に共通した課題でもあります。

もちろん、業界によって利用可能な技術は異なります。また、サプライチェーンの状況に応じて、カーボンニュートラルへの道筋も異なります。企業は自社の置かれた環境を踏まえて設備投資を進めていく必要があります。

一方、中小企業が二酸化炭素の排出量削減に取り組むことは容易ではありません。そのため、排出量の「見える化」を促進することや、カーボンニュートラルに向けた設備投資を促進するために地域の金融機関や中小企業団体などの支援人材の育成が急務となっています。

地域やくらしの脱炭素に向けた取り組む

脱炭素化は、地域ぐるみの取り組みも必要になります。再生可能エネルギーを含め、各地域に存在する特色ある地域資源を最大限活用し、地域経済を循環させることが求められています。

こうした取り組みは、防災面や、暮らしの質の向上など、地域が抱える課題の解決にも貢献できます。政府では、地方自治体をはじめとした関係者の主体的な取り組みを促進していく考えです。

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GXを実現するための社会システム・インフラの整備


2022年末に向けてGXの政策を具体化

炭素中立型社会に向けたGXは、産業革命以来の化石燃料を中心とした経済、社会、産業の構造を、クリーンエネルギー中心に移行させるものです。

経済産業省では、成長指向型カーボンプライシングの最大限の活用や、規制と支援が一体となった投資促進策の活用を基本コンセプトに掲げています。

政策の骨格を予算措置、規制・制度的措置、金融パッケージ、国内市場、海外市場の5本の柱を軸に構成し、2022年松に向けてロードマップも含めた政策の具体化を図っていく方針です。

脱炭素に必要な投資額は今後10年で約150兆円

経済産業省では、主要な分野における脱炭素に関する投資額を、一定の仮定のもとで積み上げて試算しました。その結果、2050年のカーボンニュートラル達成に向けた必要な投資額は、2030年単年で約17兆円、今後10年で約150兆円となっています。

2030年単年の17兆円の内訳を見ると、電源の脱炭素化や燃料転換に約5兆円、製造工程の脱炭素化に約2兆円、エンドユースに約4兆円、インフラ整備に約4兆円、研究開発に約2長円となっています。GXによる脱炭素と経済成長への期待の高さがうかがえます。

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GXへの課題は

もちろん、戦略の実現に向けては課題もあります。今後10年で必要とされる投資額150兆円のうち、政府は20兆円を負担する予定で、GX経済移行債(仮称)を発行して調達することを検討しています。ただ、普通の国債と同様に借金には変わりなく、返済の財源確保が必要になります。

財源の調達方法として可能性があるのは、本格的な炭素税の導入のほか、炭素を価格付するカーボンプライシングによる排出量取引の収入、それに電気料金に上乗せ徴収することなどです。いずれの方法も、国民や企業に新たな負担となることが考えられます。

また、GX経済移行債を発行することで、脱炭素の関連市場が本当に活性化するのかどうかも今後注視する必要があります。企業が自主的にGXに取り組む環境をどのようにつくっていくのかが、今後の課題となりそうです。


【出典】
ニュースリリース|経済産業省
https://www.meti.go.jp/press/2021/02/20220201001/20220201001.html
「クリーンエネルギー戦略」に関する有識者懇談会|内閣官房
https://www.cas.go.jp/jp/seisaku/clean_energy_kondan/index.html

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