地熱発電とは
地熱発電は、約2,000mもの地下深くの「地熱貯留槽」からマグマの熱で温められた150度を超える高温・高圧の蒸気・熱水を取り出し、その力を利用してタービンを回して電気をつくる発電方法で、発電時にCO2を排出せず、持続的な発電が可能なことから再生可能エネルギー(再エネ)としての活用が期待されています。
発電方法には「シングルフラッシュ発電」と「バイナリー発電」の大きく2つがあり、前者は地熱貯留層で温められた蒸気・熱水を「気水分離器」で蒸気と熱水に分け、蒸気は発電に使われ、熱水は「還元井(かんげんせい)」と呼ばれる井戸を通じてふたたび地下へ戻します。
発電に使われた蒸気は、「復水器」と呼ばれる設備で水に戻され、ファンのついた「冷却塔」で冷やされた後、冷却水としてふたたび復水器に送られますが、この時余った冷却水は、還元井から地下へと戻されます。このサイクルを繰り返すことで、安定的に蒸気・熱水を取り出し、持続的な発電が可能となります。
▼地熱発電の仕組み(シングルフラッシュ発電)
一方で「バイナリー発電」とは、地熱貯留層から取り出せる蒸気が少なく、熱水が多い場合に用いられる発電方法です。
こちらでは、主に熱水を使用して、水よりも沸点の低い液体を沸騰させて蒸気に変え、この蒸気で発電用のタービンを回すことで発電します。この時使われた蒸気・熱水はシングルフラッシュ発電と同様に還元井を通じて地下に戻され、同じサイクルを繰り返します。
▼地熱発電の仕組み(バイナリー発電)
地熱発電開発の動向
2020年10月の菅内閣総理大臣による「2050年カーボンニュートラル宣言」を受けて、日本国内でも再エネ導入拡大の動きが加速しました。
実際、2011年11月のCOP26でのスピーチでは、2050年カーボンニュートラルに向けて、2030年度にCO2排出量を2013年度比46%削減、さらに50%の高みを目指すとし、日本はアジアを中心に再エネを最大限導入しながら、クリーンエネルギーへの移行を推進し、脱炭素社会を創り上げると言及しました。
実は日本は、世界有数の地熱資源国です。主要な地熱資源国の地熱資源量を見ると、世界最大規模の地熱地帯をもつアメリカ、多くの火山島からなるインドネシアに次いで、世界第3位(2,340万kW)に位置しており、今後の地熱発電の導入拡大が期待されています。
再エネである地熱発電について、経済産業省はエネルギーミックスに基づき、2030年度までに発電設備容量を2019年度の約3倍(約150万kW)まで増加させるべく、導入促進を実施しています。
具体的には、地熱発電や地中熱などの導入拡大に向けた技術開発事業に130億円以上もの予算を組み、事業者が実施する地表調査や掘削調査などの初期費用に対して支援を行う補助金に充てたり、行政機関自身も地熱発電のポテンシャルのある地点の調査を行なっています。また、FIT認定を受けた再エネ発電事業者の適切な事業実施を確保するため、認定制度を見直し、事業計画認定における認定基準を具体的に記した事業計画策定ガイドラインの策定なども行われています。
地熱発電のメリット
地熱発電のメリットには大きく以下の3つがあります。
1.持続可能な再生可能エネルギー |
地下の地熱エネルギーを使用するため、化石燃料のように枯渇の心配がなく、長期間の供給が期待できます。 |
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2.高温蒸気・熱水の再利用で地方創生の実現にも繋がる |
発電に使用した高温の蒸気・熱水は農業用ハウスや魚の養殖、地域の暖房などに再利用できます。 |
3. 昼夜を問わず安定した |
地熱発電は、地下深くに掘削した設備で全て完結します。天候によって発電量が変化するなどといった他の再エネがかかえる課題もなく、昼夜を問わず安定的な発電が可能であることから、 ※ベースロード電源:季節、天候、昼夜を問わず、一定量の電力を安定的に低コストで供給できる電源。 |
地熱発電導入の課題と解決案
世界第3位の地熱資源を有している日本ですが、地熱発電設備容量でみると、アメリカ、インドネシアが資源量ランキングと同様に1位、2位なのに対し、日本は10位と主要な地熱発電国の中では最下位となっています。また、トルコやケニアなど近年地熱発電設備容量数の伸びが著しい国に比べて、日本は停滞しています。
更に、2021年8月時点での国内での地熱発電の導入状況を見ると、件数では本格的な資源調査が不要でリードタイムの短い小・中規模案件が先行しており、大規模案件は調査・開発途上が大多数を占めています。残念ながら導入状況は2030年度エネルギーミックスには程遠い状況です。一体なぜなのでしょうか。
地熱発電の導入拡大に向けては、地熱特有の課題があるとされています。ここでは主な3つの課題とそれに対する現状の解決案をご紹介します。
1.系統についての課題(1) | 地熱発電は、調査・開発後期にならないと設備容量を確定できない為、送電線に接続するための手続き(系統連系)が必然的に遅くなる。しかし、現行制度では系統連系の申請は先着主義で他電源と系統枠を争う為、申請が通りづらく、事業化できない。 |
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現状の解決案/要望 |
・火山や地熱地域の分布から特に地熱発電所が集中している、北海道・東北・九州を中心に、地熱ポテンシャルを踏まえた系統枠を整備 ・基準を満たす案件は、設備容量が確定していない初期段階でも系統申請の仮押さえを認める |
1.系統についての課題(2) |
系統確保の見通しが立たない状況が続くと、地熱開発に対する民間企業の投資マインドの後退に繋がる。 |
現状の解決案/要望 |
・例えば、事業化判断がなされた時点で国が一般送配電事業者に系統増強費を立て替え払いし、運転開始後、地熱発電事業者が国に分割返済するなどといった公的負担や公的ファイナンスを導入する |
2.資源探査についての課題 |
資源探査を進めても資源がない、資源に当たらないなど常に掘削失敗リスクが伴う。 |
現状の解決案/要望 |
・公的機関が先導的に資源探査を行い、開発有望性と開発対象地域の創出を行う |
3.規制についての課題 |
地熱開発は、森林法や温泉法、自然公園法など各種保護規制のハードルがあり、導入までのリードタイムが長い |
現状の解決案/要望 |
・直近では、同種の書類は公的組織間で融通する等といった行政手続きに工夫を行い、将来的には、地域需要の推進、法律の規制緩和を目指す。 |
まとめ
いかがでしたでしょうか。
火山帯に位置する日本では、戦後早い段階から地熱利用について注目されはじめ、資源も豊富にあるにも関わらず、その性格上発電設備容量数は他国と比べて少ない状況です。
導入の拡大にはいくつもの課題を解決する必要がありますが、将来有望な再エネとしてのポテンシャルに期待します。
(出典元)
地熱資源開発の現状について|経済産業省
https://www.meti.go.jp/shingikai/enecho/shigen_nenryo/pdf/022_04_00.pdf
地熱エネルギーの宝庫・東北エリアで見る、地熱発電の現場(前編)|経済産業省
https://www.enecho.meti.go.jp/about/special/johoteikyo/chinetsuhatsuden_yuzawa01.html
なっとく!再生可能エネルギー|経済産業省
https://www.enecho.meti.go.jp/category/saving_and_new/saiene/renewable/geothermal/index.html
COP26世界リーダーズ・サミット 岸田総理スピーチ|首相官邸
https://www.kantei.go.jp/jp/100_kishida/statement/2021/1102cop26.html
世界の地熱開発動向(WGC2020+1より)|JOGMEC
https://geothermal.jogmec.go.jp/event/file/2020/210720_7_yasukawa.pdf
地熱発電の導入拡大に向けた経済産業省の取組|経済産業省
https://www.enaa.or.jp/?fname=gec_2019_5_1.pdf
知っておきたいエネルギーの基礎用語 ~地方創生にも役立つ再エネ「地熱発電」|経済産業省
https://www.enecho.meti.go.jp/about/special/johoteikyo/chinetsuhatsuden.html
主力電源としての地熱発電導入の展望_第71回 調達価格等算定委員会 ご説明資料|経済産業省
https://www.meti.go.jp/shingikai/santeii/pdf/071_03_00.pdf
主力電源としての地熱発電導入の展望_第62回 調達価格等算定委員会 ご説明資料
|経済産業省
https://www.meti.go.jp/shingikai/santeii/pdf/062_03_00.pdf
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