【徹底解説】2050年カーボンニュートラルに向けて中小企業はどう対応すべきか

ビジネス関連
2022年5月30日

気候変動問題が顕在化するなか、各国でカーボンニュートラルを目指す動きが加速しています。日本も2050年までにカーボンニュートラルを実現することを宣言しており、大小を問わず企業に大きな影響を与えています。ここでは、2050年カーボンニュートラルに向けて、特に中小企業はどう対応すべきか、背景や取組のポイント、取組を後押しする様々な支援策を徹底解説します。

目次

【目次】

カーボンニュートラルとは


なぜ中小企業にもカーボンニュートラルへの対応が求められるのか

■地域経済への影響

■環境の変化

中小企業がカーボンニュートラルに取り組むポイント

中小企業のカーボンニュートラル取組事例

カーボンニュートラルに取り組む企業のための様々な支援策

■省エネ支援関連


■イノベーション、製品・開発支援関連

まとめ

カーボンニュートラルとは


カーボンニュートラルとは、温室効果ガス(GHG)排出量と森林などによる吸収量が均衡な状態を指します。2016年に採択されたパリ協定を契機に、世界各国でカーボンニュートラルを目指す動きが加速し、現在120以上の国と地域が2050年までにカーボンニュートラルの実現を目標に掲げています。日本政府も2020年10月「2050年カーボンニュートラル」を宣言しており、一般的に関心の高い二酸化炭素だけに限らず、メタン、亜酸化窒素、フロンガスを含む温室効果ガスの排出量を全体としてゼロにすることを目指しています。カーボンニュートラル達成のためには、温室効果ガスの排出削減はもちろん、吸収作用の保全、強化を行っていくことが重要です。

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なぜ中小企業にもカーボンニュートラルへの対応が求められるのか


カーボンニュートラルへの対応は、いまや大企業のみならず中小企業にも求められています。そこにはどんな背景があるのでしょうか。

■地域経済への影響

カーボンニュートラルの実現に向けては、国内外の政府・民間企業などの動向を受け、価値観や経済、社会環境が目まぐるしく変化し、地域経済に影響を与えています。例えば、事業者自らの排出だけでなく、サプライチェーン全体を通した脱炭素を目指す動きや、投資家・金融機関による環境・社会課題解決の促進を目的としたサステナブルファイナンスの拡大などが挙げられます。

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●世界のサステナブル投資額は、2016年から年々増加している
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■環境の変化


また、例えばカーボンプライシングの導入をはじめとする国際ルールの変化や、エネルギー需給構造の変化、環境配慮製品を嗜好する消費者が増えるなど、消費者意識や事業環境の変化にいかに対応できるかが、企業に幾ばくかの影響を与えます。

●2030年度における日本の電源構成の野心的な見通し
再生可能エネルギー(再エネ)は2019年度18%程度から2030年には36%~38%程度を目指しています。一方でLNG・石炭・石油等の化石燃料の割合は、2019年度76%から2030年度41%まで縮小させることを目標としています。

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●消費者意識・価値観の変化
環境省による3R(リデュース:Reduce、リユース:Reuse、リサイクル:Recycle)全般に関する消費者意識の変化の調査によると、2014年度から、3Rの認知度の上昇が見られ、廃棄物の減量化・循環利用に対する意識やグリーン購入※に対する意識は年々高まっています。

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※グリーン購入:購入の必要性を十分に考慮し、品質や価格だけでなく環境や社会への影響を考え、環境負荷ができるだけ小さく、かつ社会面に配慮した製品やサービスを、環境負荷の低減や社会的責任の遂行に努める事業者から優先して購入すること

●ESGやSDGsとの関係
近年、企業だけでなく個人間でも広く認知されているSDGs(持続可能な開発目標)は、地球環境や気候変動に関する目標を包含しています。SDGsに取り組むことは、投資家や金融機関が企業のESGを評価する一つの判断材料となり、年々拡大しているESG投資において、重要な視点になります。

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中小企業がカーボンニュートラルに取り組むポイント


こうしたカーボンニュートラルを取り巻く様々な事柄に対応することで、自社の企業価値・企業競争力の向上や、将来を見据えた事業展開に繋がります。中小企業のカーボンニュートラルへの取組には、大きく3つのポイントがあります。

① CO₂排出量・エネルギー使用量を見える化する
カーボンニュートラルに対応するためには、まずは自社のCO₂排出量を正確に把握することが重要です。そのためには、エネルギーの購入量や商品の製造工程毎のエネルギー使用量などを定期的に確認し、常にアップデートされている状態が好ましいです。また、省エネ法、温対法の報告対象となる場合は、規定に基づき算定しますが、対象外の事業者であっても、工程や事業活動毎の使用量から、各種制度にて用意された算定ツールを活用することで、比較的簡単に自社のおおよそのCO₂排出量を把握することができます。

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② 生産性向上・コスト削減に繋げる

徹底した省エネは、環境負荷の低減のみならず自社のコスト削減など経済的なメリットを生み出し、生産性向上にも繋がります。
例えば、生産やサービスの手法を見直し、高効率機器への更新や導入を行うことで、エネルギー使用量の削減と生産性の向上を両立できます。また、設備投資が要らない工程の改善やエネルギーマネジメントによる運用改善も同じような効果が得られます。

③ 外部環境の変化を的確に捉える
企業が自社の競争力を維持・強化するためには、自社の強みや弱みを分析した上で、外部環境の変化に柔軟に対応することが重要です。
そうすることで、将来のリスクを未然に回避したり、ビジネスチャンスの創出に繋がります。

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中小企業のカーボンニュートラル取組事例


カーボンニュートラルに既に取り組んでいる中小企業は、実際どのようなことを行っているのでしょうか。

ケース1:金属加工業A社(従業員数30名程度)
金属加工業を営むA社は、東日本大震災をきっかけに省エネ・再エネを意識した理念経営にシフトし、2030年までに完全脱炭素化を目指しています。
具体的には、省エネの取組として工場のLED化、各種設備の更新をはじめ、太陽光発電の設置によりCO₂排出量を2014年から2020年で50%以上削減するなど、再エネの取組を実施しています。
また、電力使用量も50%以上削減したことで電気料金も約6割以上削減しました。同社は脱炭素化の目標達成に向けて、さらなる再エネ導入や非化石証書によるオフセット化など複合的な取組を行っています。

ケース2:建設業B社(従業員数332名)
業務用空調のメンテナンスからPV工事などを全国で施工するB社では、2042年までにGHG直接排出量とエネルギー利用に伴う間接排出量をゼロにする事を目指しています。具体的には、2030年までに全拠点の使用電力を再生可能エネルギーに切り替える、2042年までに、使用する全車両をガソリン車以外にすること等です。
また、2042年までに顧客の72%に対して、自家消費用再エネ発電設備や、RE100に準拠した再エネ電力の導入を目指すとしています。

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カーボンニュートラルに取り組む企業のための様々な支援策


政府や協力機関では、カーボンニュートラルに取り組む企業のために様々な支援を行っています。いくつかご紹介します。

■省エネ支援関連

①省エネお助け隊
省エネお助け隊とは、経済産業省によって採択された地域密着型の省エネ支援団体です。
中小企業等の省エネに関する取組に対して、省エネと経営の専門家が現状把握から改善まできめ細かいサポートを行っています。
省エネの取組をこれから始めようとしている企業や既に取り組んでいるが効果が出ているのか分からない、もっと効率的に省エネを進めたい企業など様々なニーズに対応しています。

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②一般財団法人省エネルギーセンターによる支援
一般財団法人省エネルギーセンターでは、エネルギーに関する高度な専門力に加えて、各種現場での経験を活かした、カーボンニュートラル支援サービスを展開しています。
具体的には、エネルギー使用量の見える化や省エネ最適化診断、自治体・公的機関が主催する省エネ説明会への無料講師派遣などがあります。

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■イノベーション、製品・開発支援関連

①オープンイノベーション・マッチングスクエア(OIMS)
経済産業省では共同開発・協業ニーズを発信する共創サイト「オープンイノベーション・マッチングスクエア(OIMS)」を運営しています。
ここでは、カーボンニュートラル関連企業の発掘やカーボンニュートラル分野の新規事業創出を目指す企業と、カーボンニュートラル関連技術やソリューションを持つ企業のマッチング支援、産業総合技術総合研究所や公設試など関係機関と連携した企業への技術支援などを行い、企業の課題解決や新ビジネスの創出などを支援しています。

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②国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構
国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構では、「グリーンイノベーション基金事業」と題し、官民で野心的かつ具体的な目標を共有した上で、カーボンニュートラルに取り組む企業等に対して、10年間、研究開発・実証から社会実装までを継続支援しています。また、各プロジェクトの取組状況や関連技術、市場の動向などをダッシュボードで見える化するなど、カーボンニュートラルに向けた企業の取組を後押ししています。

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他にも、経済産業省の支援ポータルサイト、ミラサポplusでは、中小企業・小規模事業者向けの補助金・給付金等の申請や、事業支援制度をまとめて発信したり、グリーン分野での事業再構築を通じて高い成長を目指す事業者など、中小企業等が行う新分野展開や業態転換等に対して最大1.5億円の支援を行う事業再構築補助金などがあります。

まとめ


いかがでしたでしょうか。
国の方針や世間の潮流によってめまぐるしく変化する環境に柔軟に対応するのは容易なことではありません。中には従来のビジネスモデルや戦略を抜本的に見直す必要がある企業もあるかもしれません。しかし、逆を言えばこうした変化に率先して取り組むことで、新しい時代をリードしていくチャンスに繋がる可能性もあります。
カーボンニュートラルの取組をまだ始めていない企業にとって、検討するきっかけになると幸いです。

(出典)
カーボンニュートラルとは – 脱炭素ポータル|環境省 (env.go.jp)
https://ondankataisaku.env.go.jp/carbon_neutral/about/#to-why
カーボンニュートラルと地域企業の対応<事業環境の変化と取組の方向性>|経済産業省
https://www.kanto.meti.go.jp/seisaku/ene_koho/ondanka/data/kantocn_guidance.pdf
Sustainable Japan
https://sustainablejapan.jp/2021/07/15/gsir-gsia-2020/64065
省エネお助け隊
https://www.shoene-portal.jp/
一般財団法人省エネルギーセンター
https://www.eccj.or.jp/
オープンイノベーション・マッチングスクエア(OIMS)|経済産業省
https://www.kanto.meti.go.jp/seisaku/open_innovation/oims.html
ものづくり・商業・サービス生産性向上促進事業令和3年度補正予算の概要|経済産業省
https://www.chusho.meti.go.jp/koukai/yosan/2021/hosei/mono.pdf
NEDO
https://green-innovation.nedo.go.jp/
中⼩企業向けSBT・再エネ100%⽬標設定成果報告 2019年度
http://www.env.go.jp/earth/ondanka/supply_chain/gvc/files/jp_chusho/D2019_002_ecology-plan.pdf

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