【2022年6月最新版】環境白書の中身とは?脱炭素社会の実現に向けて進んでいる政策まとめ

ビジネス関連
2022年10月27日

2022年6月7日、令和4年版環境白書・循環型社会白書・生物多様性白書が閣議決定され、環境省によって公表されました。本コラムでは、環境白書に焦点を当て、その内容について概要や詳細をまとめます。

目次

【目次】

環境白書・循環型社会白書・生物多様性白書とは

令和4年版環境白書の概要

■第1章:1.5℃に向けて

■第2章:脱炭素、分散・自然共生という多角的な切り口によるアプローチ

環境白書の各分野における令和4年度の実施施策

まとめ

本コンテンツは、2022年6月に環境省が公表した「令和4年版環境白書・循環型社会白書・生物多様性白書」を基に作成しています。詳しくは以下をご覧ください。

令和4年版環境白書・循環型社会白書・生物多様性白書

環境白書・循環型社会白書・生物多様性白書とは


環境白書、循環型社会白書、生物多様性白書とは、3つの法律に則ってそれぞれ国家へ提出する年次報告書で、環境問題の全体像を分かりやすくするため、3つの白書を編集し、1つの白書としてまとめているものです。それぞれの白書は、年次報告書として前年度に政府が講じたことと、当年度講じることを報告しているほか、日本が取り組むべき環境問題について等、毎年設定したテーマについて記述しています。
今年6月に発表された「令和4年版 環境白書・循環型社会白書・生物多様性白書」のテーマは、「グリーン社会の実現に向けて変える私たちの地域とライフスタイル~私たちの変革から起こす脱炭素ドミノ~」とし、2030年までの10年を「勝負の10年」として、グリーン社会の実現に向けて進める様々な取組について分野別にまとめています。 

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令和4年版環境白書の概要


令和4年版環境白書は、大きく2部構成になっており、前半では令和3年度に環境の状況及び環境の保全に関して講じた施策等について、後半では令和4年度に環境の状況を考慮して講じようとする施策等についてまとめています。
ここでは、第1部の第1章「1.5℃に向けて」と第2章「脱炭素、経済循環、分散・自然共生という多角的な切り口によるアプローチ」の中で特に脱炭素・経済循環に係る内容について詳しく見ていきます。

第1部、第1章では、気候変動問題や生物多様性の損失など、地球環境を取り巻く危機的状況を乗り越えるための1.5℃目標に向けて、IPCC第6次評価報告書での気候変動に対する科学的知見や、COP26の動向、気象災害がもたらす経済的影響、生物多様性に対する科学的知見などについてまとめられています。

第2章では、脱炭素、循環経済、分散・自然共生の3つのアプローチから、グリーン社会の実現を目指すさまざまな政策についてまとめられています。

■第1章:1.5℃に向けて

近年の最重要課題の一つである地球温暖化に対して、各国様々な取組を行っていますが、2021年も国内外で深刻な気象災害等が発生し、今後豪雨や猛暑のリスクが更に高まることが予測されています。

実際にアメリカの2021年6月の月平均気温は1895年以降で最も高い数値を記録したほか、カリフォルニア州では大規模な山火事が発生し多くの人々の暮らしに深刻な影響を及ぼしました。ドイツでは、西部の町でたった1日間でその月の平年の月降水量の約1.5倍に相当する降水量を観測し、広範囲で洪水の被害がありました。
日本でも、2021年8月中旬から下旬にかけて、西日本から東日本の広範囲で大雨が降り、総降水量の多い地域では、1,400mmを超え、地域全体で大きな被害を受けました。

また、これらの気象災害は私たちの暮らしに直接ダメージを与えるだけでなく、経済・金融のリスクも孕んでいます。
スイス・リー・インスティテュート※の最新の公表値によると、世界では1970年から2021年にかけて気象に関連する大災害による保険損害額が増大しており、日本だけでみても、平成30年度に損害保険会社によって支払われた自然災害の保険金支払額が、平成30年7月豪雨等の自然災害によって過去最高額を記録しています。

気候変動は農林水産分野においても、作物の生育や栽培適地の変化、水産資源の生残などに影響を与えており、農林水産事業者の収入や生産方法、しいては商業、流通量、国際貿易など経済活動の基盤を揺るがしかねない状況にあります。
農林水産省の令和2年度食料・農業・農村白書によると、農林水産関係の被害額は、「令和2年7月豪雨」で2,208憶円、2020年発生の主な気象災害による被害額は2,473億円にものぼっています。

では、気候変動問題を引き起こす温室効果ガスそのものの排出量は現状どうなっているのでしょうか。

UNEPの「Emissions Gap Report 2021」※によると、世界の化石燃料由来のCO₂排出量は、新型コロナウイルス感染症の影響により、2020年には前年から5.4%減少しています。しかしながら、大気中の温室効果ガス濃度は上昇を続けており、気候変動問題解決のためには速やかかつ、持続的な排出削減が必要と述べています。

日本の2020年度の温室効果ガス排出量は、11億5,000万トンCO₂であり、前年と比較して5.1%(6,200万トンCO₂)減少しています。
また、2020年度の森林などの吸収源対策による吸収源は、4,450万トンCO₂であり、「総排出量」から「吸収量」を引いた量は、11億600万トンCO₂となっています。

画像1.jpgこうした状況下で、日本は気候変動に関する国際的な議論にも積極的に参加しており、岸田首相は、2021年11月に開催されたCOP26世界リーダーズ・サミットにて、2030年までの期間を「勝負の10年」と位置付け、全てのパリ協定締約国に野心的な気候変動対策を呼び掛けました。また、パリ協定第6条に基づく市場メカニズムの実施指針の合意など、パリルールブックの完成に貢献し、更には2022年2月、3月に主催した「パリ協定6条国際会議」において、JCM(二国間クレジット制度)などの経験の共有や、各国政府などの先進的な取組について議論し、政府職員や事業者の能力構築支援など様々な政策を展開するとしました。

関連コラム
二国間クレジット制度とは?温暖化対策で注目されている理由
/column/corporation/20211125_45.html

※スイス・スイス・リー・インスティテュート
Swiss Re Institute | Swiss Re
※UNEP:「Emissions Gap Report 2021」
Emissions Gap Report 2021 (unep.org)

■第2章:脱炭素、分散・自然共生という多角的な切り口によるアプローチ

日本が宣言した2050年カーボンニュートラルや2030年度温室効果ガス削減目標達成のためには、様々な施策が必要不可欠です。
2021年度には、地球温暖化対策推進法の改正や地域脱炭素ロードマップの策定、2022年度には3R+Renewableを促進する「プラスチックに係る資源循環の促進等に関する法律」が施行されるなど、関連施策の加速化が始まっており、昨今の世界情勢によってエネルギー安全保障の観点からも、再生可能エネルギー(再エネ)の重要性が益々高まっています。
具体的には以下のような脱炭素の取組を進めています。

・再エネの普及拡大のため、再エネ主力電源化とEV等の電動車による移動の脱炭素化の同時達成及び風力発電に係る適正な環境影響評価制度の在り方についての検討、地域共生型の地熱開発に向けた取組を推進。

・環境スタートアップの研究開発や事業化の支援を通じたイノベーション創出の推進。

・新たに計画される石炭火力発電の輸出支援の厳格化、CCUSなど革新的技術の開発・実証

・JCMを通じた環境インフラの海外展開を加速させるため、COP26後の6条実施方針に基づき、JCMパートナー国の拡大等に取り組むほか、特にアジアの脱炭素化に貢献するインフラ設備などをアジア各国とともに主導する「アジア・ゼロエミッション共同体」構想への貢献。

経済・金融の面からみると、パリ協定を契機に、ESG金融の拡大とともにTCFD、SBT、RE100など企業の環境イニシアチブへの取組が加速しています。
特に日本は、それぞれ全てにおいて世界トップレベルの企業数を誇っており、今後益々増えていくことが予測されます。

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(出典)
TCFDコンソーシアム
https://tcfd-consortium.jp/about
環境省
https://www.env.go.jp/earth/ondanka/supply_chain/gvc/files/SBT_joukyou.pdf
https://www.env.go.jp/earth/ondanka/supply_chain/gvc/files/RE100_joukyou.pdf

このように、国内でも脱炭素に係る様々な取組を行っていますが、これらの対策を延長線上で続けても2050年までの廃棄物・資源循環分野の脱炭素化を達成するためには不十分と言われています。

そこで、2021年8月、中央環境審議会循環型社会部会にて、「廃棄物・資源循環分野における2050年温室効果ガス排出実質ゼロにむけた中長期シナリオ」が公表されました。
ここでは、対象とする温室効果ガス排出の範囲や削減対策の実施について基本的な考え方が整理され、2050年までの温室効果ガス排出量について試算されています。
また、2050年までの廃棄物・資源循環分野の脱炭素化に向けて、技術、制度面での対策のみならず、官民が一体となり野心を持って取り組んでいく必要があることが示されました。

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環境白書の各分野における令和4年度の実施施策


ここでは、令和4年度に各分野で講じようとしている施策についてご紹介します。
詳細については、各リンク先よりご確認ください。

■地球環境の保全
ここでは、地球温暖化対策、気候変動の影響への適応の推進、オゾン層保護対策等についてまとめられています。
具体的には、脱炭素社会の実現に向けた政府全体での取組や、エネルギー起源CO₂の排出削減対策、気候変動の影響等に関する科学的知見の集積等です。

詳しくはこちら

■循環型社会の形成
ここでは、持続可能な社会づくりへの取組、循環分野における基盤整備などへの取組がまとめられています。
例えば、資金循環や人口交流等による経済的なつながりを深める「地域循環共生圏」とは何か、プラスチック、バイオマス、レアメタル等の金属において、ライフサイクル全体で徹底的な資源循環を促進する方法、適正な国際資源体制の構築等です。

詳しくはこちら

■水環境、 土壌環境、 地盤環境、 海洋環境、 大気環境の保全に関する取組
ここでは、健全な水循環の維持・回復、大気環境・海洋環境・土壌環境の保全等についてまとめられています。
具体的には、流域、森林、農村等における健全な水循環の維持・回復のための取組、水環境の環境基準の設定、アジアにおける水環境保全の推進、市街地や農用地などの土壌汚染対策等です。

詳しくはこちら

■各種施策の基盤となる施策及び 国際的取組に係る施策
ここでは、政府の総合的な取組、グリーンな経済システムの構築、国際的取組に係る施策についてまとめられています。
例えば、企業戦略における環境配慮の主流化を促進する施策、グリーンな経済システムの基盤となる税制について、環境分野におけるイノベーションの推進のための環境研究・技術開発の実施体制整備等です。

詳しくはこちら

まとめ


いかがでしたでしょうか。
脱炭素社会の実現に向けては、官民が一体となった取組が必要不可欠です。
企業へこうした環境対策を求める動きは今後益々加速することが予測されますので、興味のある方は是非確認してみてください。

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