CSV経営とは?社会課題の解決と企業活動を両立する戦略と事例を解説

ビジネス関連
2022年10月28日

企業が経営戦略を考える際に注目されているのがCSV経営です。その本質は社会課題の解決と企業の成長を両立する点にあります。今回はCSV経営を実現するための戦略や、 CSV経営をしている企業の導入事例などについてお伝えします。

目次

【目次】

CSV経営とは企業の本来あるべき姿

CSV経営のメリットと課題とは

CSV経営を簡単に実践する3つの戦略

CSV経営を実践する日本企業の事例

CSV経営に取り組むために

※この記事は、2022年10月28日に公開した記事ですが、追記‧更新し、2024年1月20日と、2024年10月31日に再度公開しました。

CSV経営とは企業の本来あるべき姿

CSV経営とは?簡単に説明

CSV経営は次世代の経営モデルとして、世界で注目されています。企業の事業を通じて社会的な課題を解決することによって、社会価値と経済価値を両立させることを目指す考え方です。

CSVが広がるきっかけになったのは、企業の競争戦略を専門とするハーバード・ビジネススクールのマイケル・ポーター教授が、2011年に『ハーバード・ビジネス・レビュー』誌に掲載した論文「Creating Shared Value」です。

この論文でポーター教授は、CSVのコンセプトを経済価値(Economic Value)と社会価値(Social Value)を同時に追求していくことだと説きました。そしてこのCSVこそが、次世代の資本主義の目指すべき姿だと論じています。

 CSV経営が求められる背景とは

CSVの考え方が生まれた背景の1つには、2008年のリーマンショックによって世界規模の不況が起きたことが挙げられます。

アメリカの有力投資銀行だったリーマンブラザーズが、低所得者向けローンであるサブプライムローンを証券化して販売したものの、住宅バブルの崩壊とともに破綻しました。

この破綻を契機に、世界的な株価の下落と金融危機が起きたことで、世界中で資本主義の有効性が問われる事態となりました。

その一方で、世界的な規模で環境問題や貧困、資源の持続可能性などが喫緊の課題として浮上しました。その多くは、人間による自然開発や経済活動から引き起こされています。

世界で持続可能な社会を構築しようと、国連が2030年までの達成を目指すSDGs(持続的な開発目標)の17のゴールを掲げたのは2015年です。SDGsでは企業活動においても、目標を達成するための努力が求められるようになりました。

かつて、経済活動において利益を上げることと、社会的課題を解決することは相反するものと考えられていました。しかし、CSVの概念では、両立は可能だと提唱されています。

そして実際に、ヨーロッパやアメリカを中心に、CSV経営を実践し、勝ち組と言われる企業が次々と現れているのです。

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CSV経営とCSRの違い

ポーター教授は論文で、従来からあったCSRの考え方から、CSVへの転換を主張しました。CSRは「corporate social responsibility」の略で、企業の社会的責任という意味です。

企業が社会や環境と共存し、持続可能な成長を図るために、その活動の影響について責任をとる企業の行動のことで、企業を取り巻くさまざまなステークホルダーからの信頼を得るための企業のあり方を指します。

CSRは日本の企業にも浸透しました。社会課題を解決する取り組みという意味ではCSRCSVも同じです。ただ、各企業のCSR活動は社会貢献の色合いが強く、本来の事業活動とは直接関係ないケースがほとんどです。同時に経済的価値をもたらすことを可能にするのが、CSVの大きく異なる点です。

CSV経営のメリットと課題とは


企業のイメージアップにつながるCSV
経営

CSV経営を実践することで得られるメリットは様々です。その1つは、企業価値の向上やイメージアップにつながることです。

企業がどのような社会課題の解決に取り組んでいるのかが見えるようになることで、消費者は企業に良いイメージを抱くようになります。また、社会的な評価も高まります。

企業のブランドイメージが向上することは、競合企業との差別化にもつながります。差別化によって、長期的な利益を得ることも可能になります。

CSV経営で社会の課題解決と企業の成長を両立

もう1つのメリットは、本業で社会課題の解決に取り組むことが、単純に経済的価値をもたらすだけではなく、結果的に企業の成長にもつながることです。

例えば、省エネにつながるような新製品を開発することや、温室効果ガスや有害物質の排出を抑える新しい技術を生み出すことは、既存の製品や技術に変わって、大きな市場を獲得する可能性があります。

また、自社の事業を見直すことで、事業の領域をこれまで以上に広げていくことも可能です。

CSV経営では他業種の企業との連携も必要

その際に、自社だけでなく、他の企業などと一緒に取り組むことで、社会課題の解決も、経済的価値の創出も、より大きな成果を出すことが可能になります。

CSV経営に取り組む様々なレベルにおいて、他の企業や原料を供給する生産者などと連携することで、関わる全ての人がメリットを得られ、全体としてもメリットが最大化されます。

では、実際にどのような方法でCSV経営を実践するのか、ポーター教授が定義している3つの方法から見ていきます。

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CSV経営を簡単に実践する3つの戦略


CSV
経営で自社の製品やサービスを見直す

1つ目の方法は、自社の製品と市場を見直して、社会的な課題を解決する新しい製品やサービスを創造することです。

気候変動、水不足や食糧不足、経済格差の拡大、超高齢化などの社会課題を事業機会ととらえ、自社の強みを生かして課題を解決することで利益を生み出します。

また、純粋に新しい製品やサービスを生み出すだけでなく、新しい市場の開拓や、既存の市場を拡大することによって、企業が自らの企業価値を創造していくステップです。

CSV経営でバリューチェーンの生産性を再定義する

2つ目は、自社のバリューチェーンを見直すことです。価値連鎖と訳されるバリューチェーンは、企業の事業活動がどのように付加価値を生み出しているのかを量的や質的な関係から導き出すフレームワークで、1985年にポーター教授が提唱しました。

具体的に見直す項目は、エネルギーの利用とロジスティックス、資源の有効活用、調達、流通、従業員の生産性、ロケーションなどが挙げられています。

バリューチェーンの川上から川下までを改善し、生産性を上げられるように再定義することによって、新たな社会的な価値を創造できます。

CSV経営で地域の企業と産業クラスターを形成する

3つ目は、企業が拠点を置く地域を支援する、産業クラスターを作ることです。企業の生産性やイノベーションに良い影響を与えるクラスターを形成することは、社会的な課題の解決を図ることに貢献できます。

また、クラスターを形成することによって、地域における人材やサプライヤーの育成、インフラの整備、市場の透明性などの強化も可能になります。

サプライヤーに適正な価格が支払われないといったことが起きると、生産性も悪化します。公平かつオープンな市場をつくることが、結果的に企業価値を高めることにもつながります。

CSV経営をしている日本企業の事例

「世界をよい方向に変える」ユニクロのCSV経営

ポーター教授がCSV経営を提唱して以降、ヨーロッパやアメリカの企業だけでなく、日本の企業の中にも積極的に取り組む企業が増えています。

その1つが、ユニクロを展開するファーストリテイリングです。社内に社会貢献室を発足させたのは2001年。2005年にはグループCSR部を設置し、2010年からはソーシャルビジネスのグラミンユニクロをバングラデシュで始めました。

CSV経営が提唱された2011年以降は、よりに多岐にわたる取り組みを進めています。「よい服をつくり、よい服を売ることで、世界をよい方向に変えていくことができる」とメッセージを掲げて、自社のビジネスによって人、地球環境、地域社会における課題を解決しようと、CSVの取り組みを展開しています。

スターバックスが取り組むCSV経営

世界最大のコーヒーチェーンのひとつで、日本にも展開しているスターバックスは、ビジネスと社会貢献を両立する経営を進めています。

自社のミッションに基づいて、「人」、「地球」、「コミュニティ」の3つを大切にした活動を展開しているのが特徴です。

「人」では、インクルージョン&ダイバーシティと、誰でも活躍できるユースリーだーシップ。「地球」では、サステナビリティとエシカルな調達。「lコミュニティ」では、自主的な地域社会活動であるコミュニティコネクションを実践しているほか、日本国内では日本文化の伝承、それに災害支援なども積極的に行っています。

「世界のCSV経営先進企業」を目指すキリン


CSV
経営を全面的に打ち出しているのが、酒類・飲料から医薬まで多くのグループ企業を抱えるキリンホールディングスです。2027年に目指す姿を「食から医にわたる領域で価値を創造し、世界のCSV先進企業となる」と定義しています。

グループとして特に取り組むべき4つの重点課題ごとにCSVパーパスを策定。「酒類メーカーとしての責任」として、アルコール関連問題に取り組み、その上で「健康」「コミュニティ」「環境」の3つの社会課題の解決に事業を通じて取り組み、「こころ豊かな社会の実現」を目指しています。

CSV経営に環境負荷の軽減や電力プランの検討を


このように、
CSV経営はヨーロッパやアメリカで浸透し、日本の企業にも広がりつつあります。大企業だけでなく、中小企業にとっても必要な戦略で、実践することは可能です。

企業にとってCSV経営は、2030年のSDGs達成や、政府が掲げた2050年のカーボンニュートラルを実現するための、具体的な手段でもあります。企業の戦略に社会価値と経済価値を両立するCSVを取り入れることの重要性は、これからさらに増していくのではないでしょうか。

CSV経営で求められる要素の一つに、気候変動対策があります。企業が最も簡単に取り組める取り組みに、自社で使用する電力を、環境負荷を軽減できる電力プランに切り替える方法があります。

エバーグリーンでも、環境価値を持つ非化石証書を組み合わせることで、実質的に再生可能エネルギーを提供し、CO₂排出係数をゼロにするCO₂フリープランを法人向けに提供しています。詳しくはこちらをご覧ください。

参考文献

CSV経営戦略』名和高司(東洋経済新報社)

『中小企業白書 2014年版』中小企業庁

ファーストリテイリングと世界の20年史|ユニクロhttps://www.uniqlo.com/jp/ja/contents/sustainability/report/2021/history/

ネスレにおけるサステナビリティ|ネスレ日本
https://www.nestle.co.jp/csv

社会との価値創造|キリンホールディングス
https://www.kirinholdings.com/jp/impact/

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