【目次】
カーボンニュートラルを実現するためのグリーン成長戦略
グリーン成長戦略とは
カーボンニュートラルへの高いハードル
グリーン成長戦略は14分野の幅広い産業が対象
民間企業の挑戦を政府が支援
エネルギー関連産業は脱炭素が前提
イノベーションが求められる輸送・製造業関連産業
家庭・オフィス関連産業は普及への理解必要
政府の予算・税制・金融面での支援
政府による規制改革の推進
2025年日本国際博覧会を実証の場に
カーボンニュートラルを実現するためのグリーン成長戦略
グリーン成長戦略とは
グリーン成長戦略とは、「経済と環境の好循環」を作っていく産業政策です。
地球温暖化への対応を、経済成長を妨げる制約やコストの増加と考える時代は終わり、国際的に成長の機会と捉える時代に突入しました。
日本の産業も従来の発想を転換して、積極的に地球温暖化対策を行う必要があります。産業政策として進めることによって、産業構造や社会経済の変革をもたらし、大きな成長につなげていくこと目指しています。
カーボンニュートラルへの高いハードル
グリーン成長戦略は、温室効果ガスの排出を全体としてゼロにするカーボンニュートラルを目指すことを、日本政府が2020年10月に宣言したことを受けて策定されました。
しかし、カーボンニュートラルはこれまで掲げてきた温室効果ガス削減目標を7割以上引き上げるもので、達成することは容易ではありません。しかも、2050年には産業や家庭でのあらゆる部分で電化が進むことで、電力需要は現在よりも一定程度増加することが見込まれています。
また、電力とは関係がない部門でも、革新的な製造プロセスや、炭素を除去する技術などでイノベーションを起こしていかなければ、温室効果ガスの排出を劇的に減らすのは難しい状況です。
グリーン成長戦略は14分野の幅広い産業が対象
日本の温室効果ガスは、約8割が企業から排出されています。企業が従来と同様に温室効果ガスの排出を続けている限り、カーボンニュートラルの目標に近づくことは困難です。
グリーン成長戦略では、イノベーションを起こすことで成長が期待される産業を14分野に分類しました。14分野それぞれに高い目標を設定し、あらゆる政策を総動員することを掲げています。
民間企業の挑戦を政府が支援
グリーン成長戦略で、政府が総動員する政策には、次のようなものがあります。イノベーションに挑戦する企業に対して技術開発から実証・社会実装まで支援する基金を創出するほか、カーボンニュートラルに向けた投資を行う企業に対する税制の優遇や、規制緩和なども行います。
つまり、グリーン成長戦略は、温室効果ガスの削減を目指して、大胆な投資などによってイノベーションを起こすことを目指す民間企業の取り組みを、政府が支援するものです。
グリーン成長戦略14分野の目標とポイント
エネルギー関連産業は脱炭素が前提
成長が期待される14分野は、エネルギー関連産業、輸送・製造関連産業、家庭・オフィス関連産業の3つに分類できます。どのように脱炭素化していくかがポイントになります。
エネルギー関連産業には、洋上風力・太陽光・地熱発電などの次世代再生可能エネルギー産業と、水素・燃料アンモニア産業、次世代熱エネルギー産業、それに原子力産業があります。
電力需要を100%単一の種類の電源で賄うことは困難なことから、あらゆる選択肢を追求することが基本的な方針です。
このうち、洋上風力と地熱発電は、運転開始までに時間がかかるといった開発をめぐるリスクや、開発コストなどが課題になっています。政府は助成金や出資、債務保証などでリスクマネーの供給を行うほか、開発に関する規制の緩和などを進めています。
また水素は、発電や産業、運輸などに幅広く活用されるカーボンニュートラル達成の鍵となるもので、日本が先行している技術でもあります。水素発電タービンや水素を燃料とするFCトラック、それに燃料電池などの商用化や普及を目指し、政府として海外展開を後押しする方針です。
次世代熱エネルギー産業では、熱エネルギーを供給するガスの脱炭素化を目指すとしています。また、原子力産業は、可能な限り依存度を低減しつつ、国内での再稼働の進展と、海外で進む次世代革新炉の開発に日本企業も参画することが戦略では示されています。一方で、政府は2022年8月、国内でも次世代炉を新設すると原子力政策の転換を表明しており、2022年末までに具体策をまとめる見通しです。
イノベーションが求められる輸送・製造業関連産業
輸送・製造関連産業のカテゴリーには、多くの産業があります。自動車・蓄電池産業、半導体・情報通信産業、船舶産業、物流・人流・土木インフラ産業、食料・農林水産業、航空機産業、それにカーボンリサイクル・マテリアル産業です。
輸送・製造関連産業に求められているのは、それぞれの分野におけるイノベーションを進めるとともに、国際競争力を強化することです。その際には、脱炭素化やデジタル化によるアプローチが重要になってきます。
家庭・オフィス関連産業は普及への理解必要
家庭・オフィス関連産業に分類されているのは、住宅・建築物産業・次世代電力マネジメント産業、資源循環関連産業、ライフスタイル関連産業です。
住宅・建築物・次世代電力マネジメント産業では、エネルギー消費量の削減が大きなテーマになります。省エネ住宅や木造建築物の普及拡大、再生可能エネルギーの導入などについて、今まで以上に理解が得られるよう、後押しする政策が必要になります。
資源循環関連産業については、リデュース、リユース、リサイクルの高度化が進んでいることから、さらなる技術開発を支援します。ライフスタイル関連産業では、家庭において再生可能エネルギーで作り出すエネルギーが、消費するエネルギーよりも多い状態になることを目指しています。
グリーン成長戦略の現状をわかりやすく知るには
政府の予算・税制・金融面での支援
政府が進めるグリーン成長戦略の現状を、わかりやすく見ていきましょう。グリーン成長戦略では、企業が保有すると見られる約240兆円の現預金を投資に向けるために、14の分野で意欲的な目標を設定しています。実現に向けて予算や税制、規制改革などさまざまな政策を掲げています。
予算では、革新的な技術の開発から実証、社会実装までを継続的に支援するグリーンイノベーション基金があります。国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)に10年間で2兆円の基金を用意しました。
税制では、大きな脱炭素効果を持つ生産設備や、生産工程などの脱炭素化と付加価値向上を両立する設備を導入する企業に対して、最大10%の税額控除かまたは50%の特別償却を措置します。他にも多くの支援メニューによって、10年間で約1.7兆円の民間投資創出効果を見込んでいます。
政府による規制改革の推進
規制改革は、イノベーションを進めるうえでは欠かせないものです。実証フェーズを経たところで、新技術の需要を創出するような規制の強化、新技術を想定していない不合理な規制を緩和するなど、国内の規制や制度を整備します。
あわせて、新技術を世界で活用しやすくするような国際標準化にも積極的に取り組むとしています。国内外で制度環境を整備することによって、需要とグリーン投資を拡大し、量産化や価格の低減を図りたい考えです。
2025年日本国際博覧会を実証の場に
政府が2050年のカーボンニュートラルを目指す中で、未来社会の実験場として、新たな技術やシステムを実証する場と位置づけているのが、2025年に開催される大阪・関西万博です。
グリーンイノベーション基金で採択されたプロジェクトとも連携しながら、次世代型の太陽電池をはじめとした再生可能エネルギーや、水素・アンモニアの利用、二酸化炭素吸収型のコンクリートなどの技術を活用していく予定です。
大阪・関西万博は国内外から2820万人の来場者を見込んでいます。カーボンニュートラルの取り組みについて、社会実装に役立つ形で発信することで、国内外の多様なプレイヤーのイノベーションを誘発していくことを目指しています。
グリーン成長戦略は実施しながら改訂していく
グリーン成長戦略は、経済産業省が関係省庁と連携して策定しました。今後戦略を実施するとともに、関係省庁と連携して目標や対策の更なる深掘りを検討しながら、更なる改訂をしていく方針です。
重要なのは電力の脱炭素化と、エネルギーの電化へのシフト、それに二酸化炭素の回収や水素の利用などによる熱の脱炭素化、それに炭素除去技術などでイノベーションを起こすことです。
また、政策は幅広い分野をターゲットにしています。グリーン成長戦略の動向を注視しながら、自社の事業での活用も検討してみてはいかがでしょうか。
参考文献
ニュースリリース|経済産業省
https://www.meti.go.jp/press/2021/06/20210618005/20210618005.html
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