カーボンニュートラルの鍵を握るゼロエミッション
ゼロエミッションとは
循環型社会を目指す取り組みとして、世界的に浸透している考え方がゼロエミッションです。経済活動で発生するCO₂などの温室効果ガスや、大気汚染物質、水質汚濁物質、廃棄物の量を実質的にゼロにすることを目指すものです。最終的に排出された廃熱(エミッション)や不要物を、他の生産活動の原材料やエネルギーとして利用することで、循環型の産業システムを構築します。
ゼロエミッションを提唱したのは、東京に本部がある国際連合大学です。1994年からゼロエミッション研究構想を進め、国際会議などを通じて各国に理念を浸透させていきました。この考え方は、2015年に国連サミットで加盟国の全会一致で採択された、2030年までに持続可能でよりよい世界を目指す国際目標「SDGs」にもつながっています。
CO₂排出量ゼロと廃棄物削減はなぜ必要か
日本でもゼロエミッションの取り組みが進められてきました。さらに、政府が2020年10月に2050年のカーボンニュートラルを宣言し、翌2021年4月には2030年の温室効果ガス46%削減を掲げたことで、ゼロエミッション社会を目指す機運が高まっています。
日本の産業界の中には、どちらかというと地球環境の問題や、カーボンニュートラル、ゼロエミッションに対して消極的な立場をとる業界もありました。しかし、政府が目標値を設定したことで、環境問題に貢献することに加えて、ビジネスチャンスだと捉えられるようになりました。CO₂排出量ゼロや廃棄物を減らすことを目指して技術開発することで、イノベーションが起きることが期待されています。
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企業によるゼロエミッションの取り組み
イノベーションを支援する国のゼロエミ・チャレンジ事業
経済産業省は、日本経済団体連合会(経団連)や新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)と連携して、脱炭素化社会の実現に向けイノベーションに挑戦する企業をリスト化し、投資家などに情報提供するプロジェクト「ゼロエミ・チャレンジ」に取り組んでいます。
2021年10月時点で、上場企業と非上場企業をあわせて約600社の「ゼロエミ・チャレンジ企業」が公表されました。投資家や金融機関、有識者などによる「環境イノベーション・ファイナンス研究会」が、客観性や網羅性を確保した基準を策定した上で企業をリストアップしています。選ばれた企業は「ゼロエミ・チャレンジ企業」のロゴマークを使うことができます。
「ゼロエミ・チャレンジ企業」ロゴマーク(経済産業省ホームページより)
ゼロエミ・チャレンジ企業の取り組み
「ゼロエミ・チャレンジ企業」に選ばれているのは、「革新的環境イノベーション戦略」で定められた39の技術テーマでイノベーションに取り組む企業や、経団連の「チャレンジ・ゼロ」宣言に賛同して脱炭素社会に向けたイノベーションに取り組む企業です。
企業リストには、技術開発に取り組んでいる内容や、開発フェーズなどが記載されています。製造業の場合は、省エネに向けた技術開発、新エネルギーなどのシーズ発掘や事業化に向けた技術研究、それに再生可能エネルギーの大量導入に向けた次世代電力ネットワーク安定化技術開発などに取り組んでいます。
CO₂排出量ゼロを目指す自治体のゼロエミッション戦略
東京都が進めるゼロエミッション東京戦略
国内では地方自治体もゼロエミッションを達成するための取り組みを進めています。東京都は、「ゼロエミッション東京戦略」を策定し、2030年までに温室効果ガス排出量を2000年に比べて50%削減するカーボンハーフと、2050年のゼロエミッション実現を目指しています。
具体的には、これまでの省エネや再生可能エネルギーを拡大する施策に加え、食品ロスやプラスチック対策など、都市活動に起因するあらゆる分野での取り組みを進めています。また、東京都自らも施設の省エネや、電気自動車などゼロエミッションビークルの導入拡大に取り組んでいます。
CO₂排出量ゼロを目指す「ゼロカーボンシティ」
東京都以外でも全国の多くの自治体が、地球温暖化対策の推進に関する法律に基づいて、2050年のCO₂実質排出量ゼロに取り組むことを表明しています。実質排出量ゼロとは、人為的な発生源によるCO₂などの温室効果ガス排出量と、森林などの吸収源による除去量との間の均衡を達成することです。環境省はこれらの自治体を「ゼロカーボンシティ」に認定し、公表しています。
表明する自治体は3年間で急増し、2022年10月31日現在では、全国797の自治体がゼロカーボンシティに認定されています。内訳は、43都道府県、465市、20特別区、230町、39村です。各自治体が事業者への支援のほか、省エネ住宅や次世代自動車、生ごみ処理機などの導入補助金といった一般家庭への支援を通じて、ゼロエミッションの実現を目指しています。
ゼロエミッション実現に向けた技術開発
研究開発が進むCO₂ゼロ船
ゼロエミッションの実現のためには、前述の通り産業界のイノベーションが欠かせません。近い将来の実用化が期待されているのが、アンモニアや水素を燃料とする技術の実用化です。
国土交通省は海運や造船各社と連携して、アンモニアや水素を燃料とする新型船の開発に乗り出しています。この新型船はCO₂排出量を実質ゼロにする「CO₂ゼロ船=ゼロエミッション船」です。技術開発と実証を進めながら国際ルールの整備にも取り組み、2028年の商業運航を目指しています。
CO₂排出量ゼロの水素による発電
また、水素はエネルギー分野の脱炭素化を進める上でも活用が期待されています。再生可能エネルギーや石炭、天然ガスなどあらゆる資源から製造できて、燃える際に排出されるのは水だけです。そのため、産業、運輸、業務、家庭部門で水素を利用する水素社会に向けた取り組みが進められています。
現在実証実験などが進められているのが、水素による発電です。水素を燃焼させて空気中の酸素と化学反応を起こし、そのエネルギーでタービンを回して発電します。国内では企業による試験プラントも稼働していて、国も「低炭素化を図るための有効な手段」と位置付け、2030年頃の商用化を目指しています。水素社会の構築は、ゼロエミッションの実現に大きく寄与します。
CO₂ゼロの電力導入でCO₂排出係数もゼロに
ゼロエミッションの実現のためには、国、自治体、産業界、家庭それぞれがCO₂ゼロや廃棄物の縮減に取り組むことが求められています。企業で比較的取り組みやすいのは、CO₂ゼロの電力を導入することです。
電力会社では、FIT電源などを活用して、CO₂排出係数をゼロにするプランも用意しています。自社の活動でも、ゼロエミッションを目指した取り組みを検討してみてはいかがでしょうか。
参考資料:
環境白書
ゼロエミ・チャレンジ|経済産業省https://www.meti.go.jp/policy/energy_environment/global_warming/zero-emission_challenge/index_zeroemi.html
チャレンジ・ゼロ
https://www.challenge-zero.jp/jp/
国際海運のゼロエミッションに向けたロードマップ |国土交通省https://www.mlit.go.jp/maritime/GHG_roadmap.html
水素社会実現に向けた経済産業省の取り組み|経済産業省https://www.env.go.jp/seisaku/list/ondanka_saisei/lowcarbon-h2-sc/events/PDF/shiryou06.pdf
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