企業の温室効果ガス削減の第一歩、CO₂排出量の計算方法は?

ビジネス関連
2023年4月24日

日本は温室効果ガスの排出量を、2030年までに2013年度比で46%削減する目標を掲げています。目標達成には企業が排出するCO₂の削減が欠かせません。その第一歩として、CO₂排出量を把握する計算方法についてお伝えします。

目次

【目次】

企業に求められるCO₂排出量の削減

CO₂排出係数を使ってCO₂排出量を計算する方法

サプライチェーンのCO₂排出量を削減する

CO₂排出量の計算は、削減に向けた第一歩

企業に求められるCO₂排出量の削減

温室効果ガス排出量の削減が求められる背景

脱炭素社会に向けた取り組みは世界中で進められています。大きなきっかけは2015年のパリ協定でした。パリ協定は、フランス・パリで開催された「国連気候変動枠組条約締約国会議(COP)」で合意された、温室効果ガス削減に関する国際的な取り決めです。

 協定では、世界共通の長期目標を掲げています。その目標とは、世界の平均気温上昇を産業革命以前に比べて2℃より十分低く保ち、1.5℃に抑える努力をすること。そのため、できるかぎり早く世界の温室効果ガス排出量をピークアウトし、21世紀後半には、温室効果ガス排出量と森林などによる吸収量のバランスを取ることです。

 日本も批准手続きを経て、協定の締結国になりました。政府は温室効果ガスの排出量を、2030年までに2013年度比で26%削減すると発表。その目標は2021年4月に46%に引き上げられました。温室効果ガス排出量削減は急務となっています。

 大部分は企業からのCO₂排出量が占める

 国立環境研究所によると、2020年度の温室効果ガス排出量はCO₂換算で11億5000万トンで、前年度比5.1%でした。この年の排出量減少は、新型コロナウイルスの影響による製造業の生産量減少、旅客や貨物の輸送量減少などに伴うエネルギー消費量の減少が大きな要因となっています。

 排出量が14億900万トンだった2013年度に比べると、21.5%の減少でした。それでも、まだ目標の半分にも届いていないのが現状です。温室効果ガス排出量の90%以上を占めているのがCO₂で、CO₂排出量は2013年度比で20.8%の減少に留まっています。

 CO₂の排出を部門別に見ると、企業からの排出量が大部分を占めていることがわかります。電気・熱配分後で見ると、産業部門が34.0%、運輸部門が17.7%、業務その他部門が17.4%となっているのに対し、過程部門は15.9%に過ぎません。企業からのCO₂排出量を大幅に削減しなければ、目標達成は困難なのです。

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環境省・国立環境研究所「2020年度温室効果ガス排出量(確報値)概要」より

排出量の情報開示CO₂排出量の計算が必要に

 国は企業の温室効果ガス排出量を抑制しようと、地球温暖化対策の推進に関する法律(温対法)に基づいて、2006年から温室効果ガスを相当程度多く排出する特定排出者に対し、排出量を算定し、報告することを義務付けました。

 さらに、2021年の法改正では、企業の温室効果ガス排出量の算定を原則として電子システムによって報告し、開示請求なしで情報を閲覧できるようにすることが定められました。

このように、企業はCO₂排出量を把握することが求められています。温室効果ガスの排出量は、次の計算式で算出します。

 温室効果ガス排出量=活動量×排出係数

 また、CO₂換算排出量を計算する場合は次の通りです。

 CO₂換算排出量活動量×排出係数×地球温暖化係数(GWP)

 活動量は使用量、焼却量など排出活動の規模を表す指標のことで、GWPはCO₂を基準にして、他の温室効果ガスがどれだけ温暖化する能力があるのかを表した数字です。計算する上では排出係数が重要になります。

 

CO₂排出係数を使ってCO₂排出量を計算する方法

CO₂排出係数とは

CO₂排出係数は活動量あたりの排出量のことで、具体的には電力会社が1kWhの電気を作り出す際に、どのくらいのCO₂を排出しているのかを示す指標です。

CO₂排出量が少ないほど、CO₂排出係数は低くなります。再生可能エネルギーによって発電をしている場合は、CO₂を排出しないので、排出係数はゼロです。排出係数は、企業がCO₂排出量を削減する際に、大きな影響がある数字と言えます。

各電力会社のCO₂排出係数は環境省が公表

 排出係数は、次のような公式で求められます。

 排出係数(kg-co2/kwh)=CO₂排出量÷販売電力量

 発電の方法、火力発電の場合は燃料の違い、また地域ごとの電力需要によって、CO₂排出系数は変わってきます。

 電力会社別のCO₂排出係数は、毎年各社から環境省に提出され、環境省がホームページで公開します。2022年度は、大手電力会社をはじめとする小売電気事業者700社以上と、一般送配電事業者10社の排出係数が記載されています。 

環境省「温室効果ガス排出量 算定・報告・公表制度」
https://ghg-santeikohyo.env.go.jp/calc

 CO₂排出量はエクセル不要で簡単に計算できる

以上のように、CO₂排出量はエクセルなどを使って難しい数式を使う必要はなく、活動量と排出係数が分かれば計算できます。

 また、家庭のCO₂排出量の計算が前提ですが、簡単に計算できるサイトもあります。カシオ計算機が運営する高精度計算サイトでは、エネルギーなどの使用量などを入力することでCO₂排出量が計算できます。どれくらいの排出量なのか、どの部門を減らせば数値が変わってくるのか、目安が分かります。

 二酸化炭素の排出量計算ー高精度計算サイト
https://keisan.casio.jp/exec/system/1192427170

 企業にとってポイントとなるのは、電気事業者ごとの排出係数を知ることです。排出係数を意識することで、CO₂排出量を計算し、削減のためにどの事業者を選ぶのかといった判断も可能になります。

 

サプライチェーンのCO₂排出量を削減する

サプライチェーンの排出量算定とは

企業が自らのCO₂排出だけでなく、事業活動に関係するあらゆる排出を合計した排出量が、サプライチェーン排出量です。サプライチェーン排出量の計算は、次のようになります。

 サプライチェーン排出量=Scope1排出量+Scope2排出量+Scope3排出量

 Scope1は、企業自らが温室効果ガスを直接排出した量で、燃料の燃焼などを指します。Scope2は、他社から供給された電気や熱、蒸気の使用に伴う間接排出。Scope3は、Scope1とScope2以外の間接排出で、企業の事業活動に関連する他社の排出です。

IMG_0439.jpg環境省・経済産業省「グリーン・バリューチェーンプラットフォーム」より

Scope3の排出量は、環境省が分類している15のカテゴリーごとに計算して、合計します。次のような公式で求めます。

 Scope3排出量=活動量×排出原単位

排出原単位は、活動量あたりのCO₂排出量です。電気1kWh使用あたりのCO₂排出量、貨物の輸送量1トンキロあたりのCO₂排出量、廃棄物の焼却1トンあたりのCO₂排出量などの単位があります。これらの数字によって、サプライチェーン排出量が求められます。

IMG_0434.jpg環境省「サプライチェーン排出量算定の考え方」より

CO₂排出量削減はサプライチェーン全体で取り組む

 サプライチェーン排出量を把握して、排出量削減に取り組むようになった背景には、近年、企業のCO₂排出責任が、サプライチェーン全体に拡大していることにあります。

環境省はこの流れを推進しようと、「サプライチェーンを通じた温室効果ガス排出量算定に関する基本ガイドライン」を作成し、算定方法のほか、算定結果の活用方法なども記載しています。 

サプライチェーン排出量を算定することを通じて、自社の事業活動のどこにCO₂排出量が多いホットスポットがあるのかを特定できます。自社の直接排出も含めて、サプライチェーン全体でより効率的な削減方法を考えることが可能になります。 

中小企業でもCO₂排出量を計算するメリット

CO₂排出量の情報開示が求められるようになったものの、中小企業の多くは自社のCO₂排出量を把握できていないのではないでしょうか。CO₂排出量を計算するメリットは、中小企業にもあります。

CO₂排出量を算定することで、削減目標を立てることができます。大きな削減効果を目指すのであれば、再生可能エネルギーの利用や、太陽光発電などの自家発電、電気自動車の導入などを検討することになります。

中小企業でも気候変動対策に取り組むことで、取引先となる大企業への訴求力や、競争力が高まるでしょう。環境への取り組み状況に応じて、金利優遇など条件の良い資金調達ができる制度を設けている金融機関も増えていて、資金調達もしやすくなることも大きなメリットと言えます。

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CO₂排出量の計算は、削減に向けた第一歩

 国全体として求められている企業のCO₂排出量の削減は、企業自身にも大きなメリットをもたらします。その第一歩となるのが、CO₂排出量を計算し、把握することです。

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まずは自社のCO₂排出量を計算して、次のアクションとして環境価値と経済性を両立する方法を検討してみてはいかがでしょうか。

 

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