※この記事は、2023年4月24日に公開した記事ですが、追記‧更新し、2023年9月26日と2024年1月20日に再度公開しました。
2050年カーボンニュートラルに伴うグリーン成長戦略を策定
「2050年カーボンニュートラル」とグリーン成長戦略
政府は2050年にカーボンニュートラルを実現することを、2020年10月に宣言しました。カーボンニュートラルとは「温室効果ガスの排出を全体としてゼロにする」ことです。具体的には、二酸化炭素をはじめとする温室効果ガスの「排出量」から、植林、森林管理などによる「吸収量」を差し引いて、合計を実質的にゼロにすることを意味します。
これまで国や企業では、地球温暖化を防ぐ取り組みは経済成長を制約し、コストがかかるものだと考えていた面がありました。しかし、現在では気候変動問題は国際的に解決すべき大きなテーマとなっています。すでに120以上の国や地域が2050年にカーボンニュートラルを実現することを目標に掲げました。
カーボンニュートラルを実現するためには、産業構造や社会、経済を変革していくことが求められます。その変革が、大きな成長につながっていくと考えられるようになりました。大胆な投資やイノベーションによって、これまでのビジネスモデルや戦略を根本的に変えていく必要があるのです。
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グリーン成長戦略とカーボンニュートラルの関係とは
そこで政府は、カーボンニュートラルに向けて挑戦する企業を支援して、「経済と環境の好循環」を作っていこうと、経済産業省と関係省庁の連携によって、産業政策であるグリーン成長戦略が2020年12月に策定されました。
言い換えれば、グリーン成長戦略は2050年のカーボンニュートラルを達成するために作成されたものです。様々な分野でイノベーションを実現し、革新的技術を社会実装することで、2050年のカーボンニュートラルと、国民生活にメリットをもたらすことを目的としています。
グリーン成長戦略は、具体化された内容が2021年6月に明らかになりました。イノベーションのスパイラルを起こすために、政策手段や各分野における目標の具体化と、脱炭素効果以外の国民生活のメリットの提示といった2つの観点に軸足を置いています。
経済産業省ホームページより
グリーン成長戦略の概要とロードマップとは
グリーン成長戦略の重点14分野を経済産業省が策定
グリーン成長戦略では、産業政策とエネルギー政策の両面から、成長が期待される分野について実行計画を策定しています。国として高い目標を掲げて、可能な限り具体的な見通しが示されています。
その上で、予算、税制、金融、規制改革・標準化、国際連携など政策を総動員して、エネルギー・産業部門の構造転換や、大胆な投資によるイノベーションの創出といった取り組みの加速を目指しています。
成長が期待される重点分野に、エネルギー関連産業で4分野、輸送・製造関連産業で7分野、家庭・オフィス関連産業で3分野のあわせて14分野を設定し、実行計画を策定しました。
経済産業省ホームページより
グリーン成長戦略の重点14分野と実行計画
14分野を詳しく見ていきましょう。エネルギー関連産業の4分野は、洋上風力・太陽光・地熱、水素・燃料アンモニア、次世代熱エネルギー、それに原子力です。
カーボンニュートラルを目指す上では、電力を脱炭素化することが大前提になっています。ただ、全ての電力需要を100%単一種類の電源で賄うことは困難です。そのため、あらゆる選択肢を追求するとともに、再生可能エネルギーや水素などによる発電を成長分野にしていくことが盛り込まれています。
輸送・製造関連産業の7分野は次の通りです。自動車・蓄電池、半導体・情報通信、船舶、物流・人流・土木インフラ、食料・農林水産業、航空機、カーボンリサイクル・マテリアルとなっています。
これらの分野で中心になるのは電化です。自動車では2035年までに新車販売で電動車100%を実現することや、2030年までのできるだけ早期に、国内の車載用蓄電池の製造能力を100GWhまで高めるなどの目標が設定されています。
また、熱の需要に対しては、化石燃料を使わずに水素化や二酸化炭素の回収で対応することで、温室効果ガスを排出量しない産業構造に転換することを目指しています。
家庭・オフィス関連産業の3分野は、住宅・建築物・次世代電力マネジメント、資源循環関連、ライフスタイル関連です。
住宅やビルについては省エネやゼロエネルギー化を実現して、光熱費を大幅に低減することを掲げています。資源循環はリユースやリサイクル市場の拡大、ライフスタイル関連はビッグデータやAIを活用して、地域の脱炭素化を目指します。
このように、グリーン成長戦略は産業とエネルギーにとどまらず、あらゆる分野をカバーしていることがわかります。戦略を進めることによって、企業がイノベーションを起こすとともに、国民の生活もカーボンニュートラルに向けて転換していくことが期待されています。
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グリーン成長戦略でカーボンプライシングの導入を決定
グリーン成長戦略で掲げていた政府の政策のうち、2022年中に動き始めたものがあります。ひとつは12月に方針が決まった、二酸化炭素の排出量に応じて企業などがコストを負担するカーボンプライシングの導入です。
具体的には、企業などが排出量を削減した分を市場で売買できるようにする排出量取引を2026年度から本格稼働させることや、2028年度から化石燃料を輸入する電力会社や石油元売り会社などに賦課金として一定の負担を求める方針です。
一方で、企業に課税する「炭素税」については、制度設計に時間がかかることなどから、導入が見送られました。賦課金については徐々に引き上げていく考えで、企業に早期の脱炭素化への投資を促す狙いです。
補助金でグリーン成長戦略を後押し
政策のもう一つは、グリーンイノベーション基金です。これは、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構に造成された2兆円の基金です。
グリーン成長戦略の重点分野のうち、特に政策効果が大きく、社会実装までを見据えて長期的な取り組みが必要な領域に対して、10年間にわたって研究開発から実証、社会実装までを継続して支援します。
対象となるのは200億円以上の研究開発プロジェクトで、順次公募が行われています。2022年3月の時点で、予算が配分される19のプロジェクトが決定しました。12月までに12のプロジェクトに取り組む事業者や研究機関などが採択されています。
グリーン成長戦略を活かすための課題は
以上がカーボンニュートラル達成に向けたグリーン成長戦略の内容と現状です。政府は2023年の通常国会で「GX(グリーン・トランスフォーメーション)推進法案」を提案します。法案には、カーボンプライシングの導入や、GXを支援する財源として「GX経済移行債」の発行などが盛り込まれています。
グリーン成長戦略は先に触れたように、国として高い目標を掲げたもので、まだ緒に就いたばかりとも言えます。この戦略が活かされて、2050年のカーボンニュートラルが実現できるかどうかは、政府と企業、研究機関などがどれだけイノベーションに取り組めるのかにかかっていると言えそうです。
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