コーポレートPPAとは?自然エネルギーの電力を購入する方法を解説

ビジネス関連
2023年4月24日

自然エネルギーで発電した電力や環境価値を、長期契約で購入できるコーポレートPPAが拡大しています。電力コストの抑制につながるほか、CO2排出量も削減できます。今回はコーポレートPPAの仕組みや導入方法について解説します。

目次

【目次】

世界各国で拡大するコーポレートPPAとは

日本のコーポレートPPAの現状は

コーポレートPPAの種類と特徴は

コーポレートPPAを導入するには

 

世界各国で拡大するコーポレートPPAとは


コーポレート
PPAとは

コーポレートPPAは、企業や自治体などが自然エネルギーの電力を、発電事業者から長期で購入する契約のことを指します。PPAは電力購入契約(Power Purchase Agreement)を略した用語で、通常は小売電気事業者が発電事業者から電力を調達することを意味します。

企業や自治体はコーポレートPPAによって、15年から20年程度の長期で電力を購入する契約を結びます。資金力のある大手の企業は、発電事業者とコーポレートPPAを結ぶことによって、自然エネルギーの電力の購入量を増やしています。

海外でコーポレートPPAが拡大している背景は

海外ではコーポレートPPAの新規契約量は急激に拡大しています。調査会社のBloombergNEFによりますと、全世界で企業などがコーポレートPPAによって新規に購入した自然エネルギーが、2021年は31.1GWと過去最大になったことがわかりました。

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(図)経済産業省作成

2010年の時点ではわずか0.1GWでした。10年あまりで急激に増加していることがわかります。コーポレートPPAの契約が最も多いのはアメリカです。大手のテクノロジー企業による購入が増えていることで、コーポレートPPAは拡大を続けています。

拡大している背景の1つは、気候変動の問題です。事業活動に使う大量の電力を火力発電に依存していると、気候変動によって自然災害がもたらされ、結果的に企業の事業活動に影響及ぶことが予想されます。

もう1つは経済性の問題です。火力発電主体の電力では、化石燃料の価格上昇の影響を受けます。その一方で、太陽光発電や風力発電のコストはこの10年あまりで大幅に低下しました。自然エネルギーによる電力が火力発電や原子力発電よりも安くなったことで、コーポレートPPAが活発になっているのです。

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日本のコーポレートPPAの現状は


日本のコーポレート
PPAの仕組みは



コーポレートPPAは、世界で拡大しているのに対して、日本ではまだまだこれからの状態です。コーポレートPPAは大きく分けて、発電設備が電力需要のある場所の近くにあるオンサイトPPAと、遠隔地にあるオフサイトPPAがあります。

現在日本で主流になっているのはオンサイトPPAです。この場合、企業は発電事業者と直接契約を結びます。一方、日本で企業がオフサイトPPAによって電力を購入する場合には、小売電気事業者を介在させる必要があります。

日本でコーポレートPPAを導入するメリットは

もちろん、日本でもコーポレートPPAによって、自然エネルギーによる電力を購入するメリットがあります。二酸化炭素を排出しない電力を使用できるほか、長期で購入できることで、化石燃料を使った発電による電力のように、価格変動の影響を受けないことです。

特に、2021年頃からの化石燃料の高騰に加え、2022年2月に始まったロシアによるウクライナ侵攻によって、電力価格は大幅に上昇しています。コーポレートPPAの導入は電力コストの抑制にもつながるのです。

コーポレートPPAを後押しする制度も整備されつつあります。自然エネルギーなどによる電力の固定価格買取制度(FIT)に代わる新たな制度として、フィードインプレミアム(FIP)が2022年度から始まりました。FIPの適用を受けると、発電事業者は電力と環境価値をコーポレートPPAによって長期に売却できます。企業と発電事業者の双方がメリットを得られることになります。

コーポレートPPAの種類と特徴は

日本国内で導入できるコーポレートPPAの種類について、あらためて見ていきましょう。

オンサイトPPAとは


オンサイトPPAでは、企業が建物の屋根や敷地を用意して、その場所に発電事業者が発電設備を無償で設置します。発電設備の建設、運転、保守は発電事業者が担います。企業は前述の通り発電事業者と直接契約を結び、電力と環境価値を長期契約で購入します。この際の取引価格は固定になります。

企業にとってのメリットは、発電設備の建設や運転を事業者に委託できるほか、送配電網を使用するための託送料や再エネ賦課金などを払う必要がなく、通常の電力契約に比べて支払う金額が少なくなることです。また、契約期間満了後は、契約条件にもよりますが、企業が発電設備を無償で引き取ることができる場合もあります。


フィジカル
PPAとは


発電設備が遠隔地にあるオフサイトPPAには、フィジカルPPAとバーチャルPPAがあります。フィジカルPPAでは、企業は遠隔地に建設した発電設備の電力と環境価値をセットで購入します。企業は発電設備を特定して契約することが可能で、環境への負荷などを考慮して電力を調達できます。また、オンサイトPPAと同様に取引価格は固定です。電気料金の単価が変動しないこともメリットです。

バーチャルPPAとは


バーチャルPPAは、企業が環境価値を購入する仕組みです。発電事業者が電力を卸電力市場で売却し、環境価値だけを企業などに長期契約で提供する仕組みになっています。環境価値を購入する企業は、従来の電力契約を変更する必要はありません。使用した電力量に対して、環境価値を配分することが可能です。

バーチャルPPAでは、非FIT非化石証書に限り、企業と発電事業者の直接取引が認められています。非FIT非化石証書とは、FIT制度で買い取られていない自然エネルギーなどで発電された電力の価値を証書にしたものです。具体的には、FITの買取期限が終了した電力などになります。

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(図)経済産業省作成

コーポレートPPAを導入するには

 
コーポレートPPAを組み合わせる

ここまで見てきたように、日本で契約できるコーポレートPPAは、大きくわけてオンサイトPPAとオフサイトPPAがあり、オフサイトPPAの形態として、フィジカルPPAとバーチャルPPAがあります。

実際に導入する際には、複数の種類を組み合わせることが可能です。オンサイトPPAで余剰電力が生じた場合は、フィジカルPPAによって余剰電力需要がある他の場所に供給できます。環境価値だけを提供するバーチャルPPAと組み合わせることも可能です。

また、フィジカルPPAで消費しきれない余剰電力が生まれたときは、電力は小売電気事業者が通常の電力として他の企業などに販売するものの、環境価値だけをバーチャルPPAで取得して、環境価値を需要がある他の場所に配分することが可能です。コーポレートPPAによって、発電した電力と環境価値を最大限に活用することができるのです。

自然エネルギー財団の「コーポレートPPA実践ガイドブック」

コーポレートPPAを導入するにあたっては、自然エネルギー財団による「コーポレートPPA実践ガイドブック」に、仕組みや契約形態などが詳しく説明されています。

日本国内でさらにコーポレートPPAを加速するためには、発電設備の建設用地の確保、送配電網への接続などの課題もあります。自然エネルギーの導入促進に向けて、政府の政策による後押しも欠かせないと言えるでしょう。

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