排出量取引所とは?日本で開設される背景と概要を解説

ビジネス関連
2023年10月12日

温室効果ガスの排出量削減につなげていくため、排出量を売買する排出量取引所が日本でも本格的に開設されることになりました。背景や概要などについて解説します。

目次

【目次】

排出量取引所とは

東証が開設する排出量取引所

SBIホールディングスなどが開設予定の排出量取引所

排出量取引所開設のスケジュール


排出量取引所とは
 

排出量取引所が開設される背景は 

 
排出量取引は、温室効果ガスの排出削減を促進するための政策ツールの1つです。先進国の温室効果ガス削減目標を定めた1997年の京都議定書をきっかけに、ヨーロッパなどを中心に制度が整備されてきました。2021年4月時点で、世界29の国と地域で導入されています。 

日本では2020年10月に、2050年までに温室効果ガスの排出を全体としてゼロにするカーボンニュートラルを目指すことを政府が宣言しました。この目標実現のため、排出量取引制度を導入する方針が2023年2月に示されています。 

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2022年9月からは経済産業省と委託先の東京証券取引所による「カーボン・クレジット市場の技術的実証等事業」が実施され、排出量取引所の開設に向けて動き出しました。2023年度からの施行取引と、2026年からの本格稼働が予定されています。 

また、国内では自治体でも排出量取引制度が導入されていて、東京都と埼玉県で実施されています。東京都が導入しているのは、企業に排出枠を設けて、その排出枠を取引するキャップ・アンド・トレード制度です。  

排出量取引所開設のメリットとは 

 
排出量取引制度では排出枠を設けるため、目標とする排出量の削減が取引によって確実に見通せることが大きなメリットです。 

一方で、排出量を削減するためには、省エネ投資をする、またはクリーンなエネルギーを使う必要があります。当然ながら、削減のためには費用がかかります。 

排出量を削減したい企業は、排出量取引所が開設されることによって、削減にかかる費用よりも低い価格で排出枠を購入することが可能になります。削減費用が低い側が排出枠を売り、費用の高い側が排出枠を購入することで、費用負担の節約効果も期待されています。  

東証が開設する排出量取引所 

東証のカーボン・クレジット市場とは 

 
東京証券取引所は、2022年度の実証事業の結果を踏まえ、日本のカーボン・プライシングに貢献する観点から、2023年10月を目処に正式にカーボン・クレジット市場を開設することを発表しました。 

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東京証券取引所

東京証券取引所では、実証事業から得た知見と、これまでの市場運営の経験を生かして市場を開設するとしています。また、カーボン・クレジット市場は、東京証券取引所が開設する上場株式などの金融商品市場とは異なる市場になります。 

2023年7月には市場運営の規則となるカーボン・クレジット市場利用規約などが公表され、市場参加者の登録申込みの受付も始まりました。  

東証のカーボン・クレジット市場とJークレジット 


東京証券取引所のカーボン・クレジット市場で売買の対象になるのはJ-クレジットです。J-クレジットは、経済産業省、環境省、それに農林水産省が管轄する、国内における地球温暖化対策のための排出削減・吸収量認証制度に基づいて認証された、温室効果ガス排出削減・吸収量のことです。
 

J-クレジットには、省エネルギ-、再生可能エネルギーの電力、熱、電力及び熱混合、森林、その他の分類があります。また、国内クレジット制度からの移行型、J-VER制度からの移行型、地域版J-クレジット、J-VER(未移行)、地域版J-VER(未移行)、国内クレジット(未移行)もカーボン・クレジット市場で売買の対象になります。 

売買は、カーボン・クレジット専用の売買システムであるカーボン・クレジット市場システムを使用して実施され、インターネットからのアクセスが可能です。参加者の登録ができるのは、法人、政府、地方公共団体たは任意団体のいずれかであることや、業務を安定的に行う体制が整っていることなど、6項目の条件を満たす者となっています。  

SBIホールディングスなどが開設予定の排出量取引所 

SBIホールディングスなどが「Carbon EX」設立 


東京証券取引所とは別に、
SBIホールディングスも、二酸化炭素排出量の計測を手がけるアスエネと共同で排出量取引所を開設することを明らかにしました。開設時期は2023年秋を予定していて、2023年6月に両社が出資して新会社Carbon EXを設立。Carbon EXは取引所の名称になる予定です。

Carbon EXは、海外と日本の森林もしくは自然由来のクレジットや、二酸化炭素の回収・貯留技術、再生可能エネルギーや省エネルギーなどのクレジットなどを取り扱う創出事業者や販売主、トレーダー、企業などの購入者が参加するカーボンクレジット・排出権取引所と説明されています。 

日本の森林保全活動などで生まれた排出量のほか、海外でのプロジェクトに伴う削減量も取引に対象にする点が特徴と言えます。 
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SBIホールディングスが排出量取引所を開設する理由とは 


Carbon EXの設立に際して、
SBIホールディングスの北尾吉孝代表取締役会長兼社長は、「新たなカーボンクレジット・排出権取引所の設立に取り組むことで、事業を通じた気候変動対策とサステナブルな社会の実現に貢献するとともに、国家目標である2050年カーボン・ニュートラルの実現に寄与してまいります」とコメントしています。 

Carbon EXでは今後、日本及び海外の大企業・中小企業、政府省庁関係者、自治体など多くの関係者を巻き込みながら、カーボンクレジット・排出権の取引に付随した様々な取り組みを実行して、NetZeroに向けた新たな産業を創出していく方針です。  

排出量取引所開設のスケジュール 

東証のカーボン・クレジット市場のスケジュールは 


東京証券取引所のカーボン・クレジット市場は、前述の通り2023年10月を目処に市場を開設し、売買を開始する予定です。
  

SBIなどの「Carbon EX」による排出量取引所のスケジュール 

 
arbon EXの開設時期については、2023年6月時点では早ければ2023年10月頃、遅くとも2023年中とされています。国内初の民間主導による排出量取引所として、その動向が注目されています。 

2023年の秋以降は、カーボン・クレジット市場とCarbon EXが開設されることによって、国内でも脱炭素に向けた新たな環境整備が進むことになりそうです。 

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