※この記事は、2024年2月18日に公開した記事に追記して、2024年8月11日に再度公開しました。
Scope3とは
サプライチェーン排出量とScope3
温室効果ガスの排出について、事業者自らの排出だけではなく、事業活動に関係するあらゆる排出を合計したものをサプライチェーン排出量と言います。原材料の調達から、製造、物流、販売、廃棄までの全体の流れで発生する温室効果ガス排出量です。
サプライチェーン排出量は、Scope1排出量、Scope2排出量、Scope3排出量を合計したものです。Scopeは温室効果ガスの排出量を測定する範囲を示しています。Scope1は事業者自らによる温室効果ガスの直接排出量、Scope2は他社から供給された電気、熱、蒸気の使用に伴う間接排出量のことです。
Scope3の定義は
Scope3は、Scope1とScope2以外の間接排出を指します。輸送や配送などをはじめとする、事業者の活動に関連した他社の温室効果ガス排出量です。他社の排出であっても、サプライチェーン排出量を算定する上では自社の排出とみなされます。
Scope3の具体例は
サプライチェーン排出量の削減に取り組む場合、事業内容によって排出量の大きいカテゴリは異なります。
電機メーカーなどの場合、Scope3の排出量が最も大きいケースがあります。具体的には、原材料の調達や輸送、燃料の燃焼や電気の使用、製品の加工や廃棄などです。
この場合、Scope3による排出を見直すことで、サプライチェーン排出量の削減に大きな効果をもたらすことができるのです。
Scope3のカテゴリーとは
Scope3の15のカテゴリーには投資も
Scope3排出量を算定する前に必要なのが、自社の活動に関連した他社の排出量をカテゴリー別に分類することです。Scope3には15のカテゴリーがあります。
(図)環境省「サプライチェーン排出量算定の考え方」より
カテゴリー1の「購入した製品・サービス」には、原材料の調達、パッケージングの外部委託、消耗品の調達が、カテゴリー2の「資本財」には生産設備の増設といった活動が該当します。その他にも「出張」「雇用者の通勤」から「投資」まで、さまざまな分野でカテゴリーが設定されています。
Scope3カテゴリーの上流と下流
また、Scope3のカテゴリーは、サプライチェーンの上流と下流に分類できます。簡単に言えば、原材料の調達や輸送、配送などが上流にあたり、製品の使用や廃棄が下流です。
(図)環境省「サプライチェーン排出量算定に関する説明会」資料より
具体的には、原材料などの調達、調達のための物流、自社が荷主の輸送、それに通勤や出張などが上流に分類されます。下流に分類されるのは、自社が荷主として輸送した後の輸送や配送、販売した製品の使用者による使用、販売した製品の使用者による廃棄などです。
Scope3のカテゴリー11とは
Scope3の15のカテゴリーのうち、カテゴリー11は「販売した製品の使用」に伴う活動を指します。これは、消費者によって製品が使用されているときに排出されている温室効果ガスが該当します。
電気製品を販売したメーカーの場合、実際に販売された電気製品が使われている際に排出された温室効果ガスが、どれくらいになるのかを算定することになります。自社の製品がカテゴリ11の対象になるのかどうかは見極めが必要です。
Scope3の算定方法は
Scope3算定方法の流れと目的の設定
サプライチェーン排出量を算定する際には基本式があります。基本式は「活動量×排出原単位」です。
活動量は事業者の活動の規模に関する量を指します。電気の使用量、貨物の輸送量、廃棄物の処理量などが該当します。排出原単位は、活動量あたりのCO₂排出量です。電気1kWh使用あたりのCO₂排出量、貨物の輸送量1トンキロあたりのCO₂排出量、廃棄物の焼却1tあたりのCO₂排出量などとなっています。
Scope3を算定する場合には、基本式を15のカテゴリごとに計算して、全カテゴリを合計することによって算定します。Scope3の算定の流れは、次のようになります。
最初のステップは算定目的の設定です。算定目的の例には、サプライチェーン排出量の全体像把握や、削減対象の詳細評価、ステークホルダーへの情報開示、削減貢献量のPRなどがあります。それぞれの算定目的ごとに、必要となる算定制度や算定範囲が異なります。算定精度を高めると算定の労力やコストが増大することから、算定目的に応じた算定精度を意識することが重要になります。
次のステップは算定対象範囲の確認です。算定対象範囲は、温室効果ガス、組織的範囲、地理的範囲、活動の種類、時間的範囲に区分されます。自社として算定しなければならない組織的範囲は、自社とグループ会社のすべての部門が対象になります。
また、時間的範囲は、1年間の事業活動におけるサプライチェーン排出が対象になりますが、Scope3排出量の排出時期は報告年度と異なる場合もあります。原材料の製造であれば報告年度前、廃棄に関する排出の場合は将来の排出量を推計することになります。
3番目のステップは、Scope3活動の各カテゴリへの分類です。算定対象範囲を確認したあとは、Scope3の活動を15のカテゴリ別に分類していきます。そして最後のステップが、各カテゴリの算定です。算定目的が達成できるレベルを考慮しながら、各カテゴリについて算定方針を決定し、データの収集や排出量の算定を実施します。
環境省によるScope3算定方法のガイドライン
Scope3の各カテゴリを算定する際に必要になるのが、環境省などによる「サプライチェーンを通じた温室効果ガス排出量算定に関する基本ガイドライン」です。基本ガイドラインにはカテゴリ別に算定する式が掲載されていますので、自社のケースにあった式を選択します。
また、排出原単位は、環境省の「サプライチェーンを通じた組織の温室効果ガス排出等の算定のための排出原単位データベース」に掲載されています。基本ガイドラインと排出原単位データベースを参考にしながら、カテゴリごとに「活動量×排出原単位」で算定します。
基本ガイドラインと排出原単位データベースは随時改訂されていますので、最新のバージョンを参照してください。
Scope3の算定ツールは
環境省ではサプライチェーン排出量の算定に役立つツールの整備に取り組んでいてます。Scope3も含めた算定支援ツールも提供されていて、環境省のウェブサイト「グリーン・バリューチェーンプラットフォーム」から利用できます。
環境省|「グリーン・バリューチェーンプラットフォーム」
https://www.env.go.jp/earth/ondanka/supply_chain/gvc/index.html
Scope3をめぐる今後の動きは
Scope3の開示義務化の流れとその背景は
国際サステナビリティ基準委員会(ISSB)は2023年6月、上場企業に対してScope3を含めたサプライチェーン排出量の情報開示を求めることを「サステナビリティ開示基準」に盛り込みました。これはScope3の情報開示義務が、事実上グローバルスタンダードになったことを意味していて、2024年から適用が可能になります。
環境、社会、ガバナンスにおける課題の解決に資するESG投資が拡大する一方で、気候変動に関する企業の情報開示の枠組みは乱立していました。Scope3の情報開示がグローバルスタンダードになったことで、投資家は企業の取り組みを比較しやすくなります。
Scope3の日本での開示義務化はいつから
日本もISSBの「サステナビリティ開示基準」に沿って、民間のサステナビリティ基準委員会(SSBJ)が主体となって、日本版の基準策定を進めています。2023年12月現在では、2024年3月末までに草案を公表し、2025年3月末までに最終確定する方針を明らかにしています。予定通りに進めば、3月期企業なら26年3月期の有価証券報告書から、新たな基準に基づく開示ができるようになる見通しです。
Scope3の開示企業は
国内の企業には、新たな基準策定に先行して、Scope3を含むサプライチェーン排出量を算出しているところもあります。東京証券取引所プライム上場企業の中にはすでに開示している企業も多く、金融庁はプライム上場企業については開示の義務化も検討しています。
企業にとっては取引先の温室効果ガス排出量を把握するといった対応を迫られるものの、新たな産業や社会構造への転換を促し、持続可能な社会を実現するための金融であるサステナブルファイナンスの流入が期待できます。今後はさらにScope3も含めたサプライチェーン排出量を開示する動きが広がりそうです。
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