Scope1とは?定義や算定方法などをわかりやすく解説

ビジネス関連
2024年3月21日

Scope1は企業活動によるサプライチェーン排出量の区分の1つを指します。Scope1の定義や算定方法などについてわかりやすく解説します。

目次

【目次】

Scope1とサプライチェーン排出量の定義

Scope1の算定方法とは

Scope1・2・3の削減方法とは

Scope1とサプライチェーン排出量の定義

Scope1とは


Scope1は、企業が直接的に排出する温室効果ガスの量を指します。その中には企業が使用する燃料の燃焼や、工業プロセスなどによる温室効果ガスの排出が含まれます。

具体的には、自社のボイラーや炉などで使用される燃料を燃やすことによって発生する二酸化炭素や、製品の製造過程の化学反応によって排出される温室効果ガスなどがScope1に該当します。企業が自らの活動によって直接的にコントロールできる排出量であることから、環境への影響を減らす取り組みを検討するにあたっては重要な指標になります。

同時に、Scope1を算定することで、企業のサステナビリティ報告や、環境パフォーマンスなどが評価される際に基本となるデータが得られることになります。

サプライチェーン排出量はScope1、2、3の合計

 
Scope1以外にも、Scope2とScope3があります。Scope2は、企業が間接的に排出する温室効果ガスのことで、電気や熱、蒸気などのエネルギーを購入することによる排出量を指します。企業が直接排出するわけではないものの、エネルギーの生産過程で発生する排出量を反映するものです。

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(図)環境省「サプライチェーン排出量算定に関する説明会」資料より

Scope3は、Scope1とScope2以外で発生する、間接的な温室効果ガスの排出量です。具体的には原材料の調達、製品の輸送、製品の使用と廃棄など、企業の活動に関連した他社による間接的な排出になります。

Scope1、Scope2、Scope3を合計した温室効果ガスの排出量のことを、サプライチェーン排出量といいます。サプライチェーン排出量は、原材料の調達から製品の製造、物流、販売、廃棄に至るまで、企業の事業活動全体に関連した全ての活動から発生する温室効果ガスの排出量を示しています。

企業が温室効果ガスの排出削減に取り組む場合、サプライチェーン排出量を削減することが重要になっています。削減に取り組むためには、Scope1、Scope2、Scope3を算定することから始めることになります。

Scope1の算定方法とは


Scope1の算定の対象事業者とは


Scope1を算定する対象には、自社が直接的に管理する活動から温室効果ガスを排出している事業者が該当します。先に触れた燃料の燃焼や工業プロセスによる排出のほか、自社の車両や機械による運用によって排出された温室効果ガスもScope1に含まれます。

国内では、地球温暖化対策の推進に関する法律(温対法)に基づいて、温室効果ガスを相当程度多く排出する特定排出者に、自らの温室効果ガスの排出量を算定して、国に報告することが義務付けられています。

Scope1の算定方法は


Scope1の算定方法は、環境省の「サプライチェーンを通じた温室効果ガス排出量算定に関する基本ガイドライン」に、算定する際の指針が示されています。

Scope1の算定式は、次のように表すことができます。

Scope1排出量=活動量×排出原単位

活動量とは、燃料の消費量や生産量など、事業者の活動の規模に関する量です。社内の各種データや文献データ、業界平均データ、製品の設計地などから収集します。

また、排出原単位は、活動量あたりの温室効果ガスの排出量のことです。例としては、電気1kWh使用あたりのCO₂排出量などがあり、基本的には既存のデータベースから選択して使用するほか、排出量を実測する方法などもあります。Scope2、Scope3も同様に算定します。

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Scope1・2・3の削減方法とは

Scope1とサプライチェーン全体のGHG削減方法とは


Scope1、Scope2、Scope3は、温室効果ガスの排出量を算定し、報告する際の国際的な基準となっているGHGプロトコルによって区分されています。GHGはGreenhouse Gas=温室効果ガスの略です。環境省のガイドラインもGHGプロトコルに整合する形で作成されています。

Scope1をはじめサプライチェーン排出量を削減するには、まずは排出量を算定することによってホットスポットを特定する必要があります。サプライチェーン排出量の算定には、大きく4つのステップがあります。

ステップ1は、算定目標の設定です。自社のサプライチェーン排出量の規模を把握して、サプライチェーンにおいて削減すべき対象を特定し、算定する目的を設定します。

ステップ2は、算定対象範囲の確認です。サプライチェーン排出量を算定する際には、グループ単位を自社ととらえて算定する必要があります。

ステップ3が、Scope3活動の各カテゴリへの分類です。サプライチェーンによる活動を、Scope3の15カテゴリに分離します。

そして、ステップ4でカテゴリごとに算定します。算定方針を決定して、データを収集し、活動量と排出源単位から排出量を算定します。

算定が終わると、削減対策を検討します。基本的には、Scope1、Scope2、Scope3のうち、温室効果ガスの排出量が大きいカテゴリから優先的に取り組むことで、削減の効果を得ることができます。

Scope1・2・3の削減方法の具体例


サプライチェーン排出量を削減するには、次のような取り組みを挙げることができます。工業プロセスや物流の効率化によってエネルギー効率を向上することや、太陽光発電などの再生可能エネルギーによる電力に切り替えること、環境に配慮した材料や製品を選択してサプライヤーにも同様の基準を求めることなどです。

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環境省と経済産業省による「グリーン・バリューチェーンプラットフォーム」には、多くの企業によるサプライチェーン排出量算定の結果や、削減に向けた取り組みの事例が、業種別に紹介されています。

環境省・経済産業省|グリーン・バリューチェーンプラットフォームhttps://www.env.go.jp/earth/ondanka/supply_chain/gvc/estimate.html

建設業では大林組が次のような取り組みを行なっています。建設資材では、セメントを産業副産物に置き換えることによって、製造時のCO₂排出量を8割削減できる低炭素型のコンクリートを使用するプロジェクトを年々増やしています。

食料品の会社では、味の素はサプライチェーン排出量を算定したところ、排出量全体の半分以上が家庭内での調理時に発生する温室効果ガスであることがわかりました。そこで、家庭内の調理時間を削減できる、環境負荷を下げるような製品開発を推進する方針を示しています。

また、化学分野の製造業では、花王がそれぞれの段階で排出量削減の取り組みをしています。原材料の調達段階では、製品のコンパクト化や容器の軽量化、詰め替え化による材料の節減などに取り組み、製造段階では工場などの省エネ化などによって排出量の削減に取り組んでいます。さらに、使用段階の負荷を低減する製品を開発することや、廃棄段階では、サトウキビを原料とするバイオマスを使ったバイオポリエチレンの導入などを行っています。

このように、Scope1、Scope2、Scope3を算定することによって、それぞれの企業の事業内容に合った削減方法を検討することが可能になります。

サプライチェーン排出量については、企業に情報開示を求める方向で議論が進んでいます。国際サステナビリティ基準委員会(ISSB)は2023年6月、上場企業に対してサプライチェーン排出量の情報開示を求めることを「サステナビリティ開示基準」に盛り込みました。

日本でもISSBの「サステナビリティ開示基準」に沿って、民間のサステナビリティ基準委員会(SSBJ)が主体となって、日本版の基準策定を進めています。2023年12月には、2024年3月末までに草案を公表し、2025年3月末までに最終確定する方針を明らかにしています。予定通りに進めば、3月期企業なら26年3月期の有価証券報告書から、新たな基準に基づく開示ができるようになる見通しです。

サプライチェーン排出量の算定は、今後ますます企業に求められるようになります。算定を検討する際には、まずは環境省のホームページを参照してみてください。

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